川に入って人に振られて劣等感を刺激されて なぜ僕がドイツに渡るに至ったか。後編 自分語り自己紹介

前編もよければお読みくださると嬉しいです。


箱根での生活は三ヶ月程度だったけれど、それはとても濃密で僕はその暮らしをいまでも在り々々と思い起こせる。
その頃の季節は初夏だったから、爽やかな山の暑さと気まぐれな空模様と嫌になるほどの豪雨と強風を堪能できた。
同僚を自慢げにバイクに乗せて海に行ってみたり、イニシャルDで見た道だ!とはしゃぎながら箱根の七曲りに挑戦したり、東京へ遊びに行ったり伊豆へツーリングに行ってみたり。僕の存在しない青春を埋め合わせるかのような日々だった。


華やかな自然も好きだけど、こういう何気ない素朴な美しさが当たり前にあるのが一番好きだった。

この頃の精神状態は芳しくなかったけれど、それもこの遠い地で生まれる非日常の興奮が癒やしてくれるのではと期待していた。けれども、不幸なことに職場にはとてもタイプの女の子がいた。すらっとしていて身長が高く程よく我儘でカスの借金持ち。どストライクだった。
恋は楽しくもあるけれどこれほど心をすり減らすものもないもので、彼女と別れてからの半年で出来上がった熟れたカサブタは簡単にそれに削り落とされた。
その子とは一回、酔った勢いでセックスをした。同僚とその子と僕で川で飲んでいたときに観光で来ていた僕より少し年下の、おそらく大学二回生くらいの男衆に絡まれた。そのときにしつこいナンパを振り払うために話の流れで川に飛び込んだのだけれど、それが効いたのだと思う。

服は泥だらけで数回洗濯してもなんだか砂が残っているような感じがした。

それ以降は音沙汰なしで結局その子はマッチングアプリで見つけた下北沢系韓流顔高身長男(らしい)に掠め取られていった。だから僕はそういう類のサブカル男を見ると舌打ちしてしまうし、これを読んだ該当の方は三千円くらい出すから一発殴らせてほしい。

慕情も過ぎ去り箱根で暮らしていると、本当に考えることがなかった。これから先のことなんて考えていなかったけれど、住み込みでずっと暮らしていくのはあまりよくないことだと思っていた。本来、関東に来たのもその後に上京でもしようと思っていたからだけれども、なんとなくいまではないような気がした。そこで海外に行ってみようということを思いついた。

けれども、それは数週間の旅行のつもりでワーキングホリデーで腰を据えて旅するという考えではなかった。
そうしてどうしようかなと悩んでいながら東京に飲みに行った時のこと、隣に座った客が子供を持つ女の人だった。中々金持ちの層のようで、どうやらその子は留学にいっているらしい。まだ13歳くらいらしいけれども尻を叩かせながらやらせているらしい。
それを聞いて僕はとても悔しくなった。中学生のガキが海外で生活しているのに何故僕は数週間の旅行なんかで満足しようとしているんだ?結局、ワーキングホリデーに行くことを躊躇わせているのは、ただ臆病さから来る感情でしかなかった。論理的に考えれば、この先することもないわけだし、金だってない。働きながら海外を見て回れるワーキングホリデーのほうが良いのは自明だった。
そうして、僕はドイツに行くことを決意した。

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