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#9新世界と虚実

「多面体、って感じがしない?」
「この街がですか?」
「雨後の街が」
「どうでしょう。分かるような気はしますが」
「そう」

なにも解ってないのね。
彼女はそう言って黙った。
僕も言葉を返さなかった。

その声だけを覚えている。

顔は忘れてしまった。
無かったのかもしれない。


大理石の壁には虚像が映る。
たくさんある、この街の顔のひとつ。

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