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green & garden「孵化」出展作品に寄せて-フレーバーテキスト-

このテキストは2019年5月3日(金)〜12日(日)京都green & gardenにて開催される「孵化」展に出品している作品に対するフレーバーテキスト、いわば香辛料です。

美術/芸術作品について作者が雄弁に語ることは作品を観る人に対して快適な鑑賞へ誘うと同時にイマジネーションや体験を重ねる事への遮断にもつながる為、解答と脱線のバランスを自己の判断でコントロールし、くれぐれもかけすぎにはご注意を。


今回出品するのは「ユウゲンの極光」シリーズより5点。
「ユウゲンの極光」シリーズ全体の解説は同じ会場で4月16日〜4月28日「京都極彩秘宝館」が開催されており、その時のフレーバーテキストに記述しましたので気になる方はご覧いただければと。また「極光」は2つの展示で共通した作品ですのでそちらも下記アドレスから。

「京都極彩秘宝館へ寄せて-フレーバーテキスト-」はこちら



ここから作品個別へのフレーバーテキストとなります。


「Galton's whistle-BOUHOUS”Double Dare”への空想-」


誰かを探して、誰かに届くように、誰かの感情を揺さぶる言葉を放つ。

そのソナー音が重なり合い産まれた不協和音がこの星を覆う。

もうどんな言葉も掻き消されて聞こえなくなったが、今もどこかで誰かに呼ばれているような気がして、そっとノイズを奏でる。


「ヤコブの梯子」

「あなたの最近の写真は宗教画みたいね」

先程撮った写真を見て彼女はそう表現した。神を信じる人生を歩んではこなかったが、芸術を愛した私にとっては、人間が創造し心を動かすものという点においては共通しているので嫌悪感はなかった。

「ならば創造主になるのも悪くはないか」

いつもの店でオムライスを食べながらそんなたわいもない話をしていた。

それから1ヶ月後、腫瘍摘出のために手術を受けた。
全身麻酔で薄れゆく意識の中、私をめがけて差し込む光だけがはっきり見えていた。


「NOCTURNES:深海と極光-神怪き魔歌」

「ここでの -夜想曲- というタイトルは一般化して解釈されねばならないものであり、さらに言うならば、装飾的な感覚のものなのである。通常語られる夜想曲の形式に囚われるものではなく、光という言葉が内包するすべての種類の印象や特殊な効果を意味していると考えて欲しい。(中略)「シレーヌ」で叙述しているのは、海とそこにある数えきれないリズム、月の光を受けて銀色に輝く波涛、そして海の精たちの神秘的な歌声が聞こえてきて、笑い声を響かせながら通り過ぎて行く。

クロード・ドビュッシー 夜想曲への解説より


「この作品で私は一切の外的な関心を排除し、芸術的関心のみを示した。それは線と形状、そして色彩の配置によるものであり、調和性に優れた結果をもたらすのであれば、それらから発生する如何なる偶然(的な効果や結果)でも、私は利用するのだ。」

-ジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー「Nocturne in Black and Gold : The Falling Rocket」へ寄せて-
サルヴァスタイル美術館より引用



「儚き鼓動/絶唱」

BUCK-TICK「鼓動」歌詞
J-Lyric.netより引用

産声よりも力強く想いを告げたのはいつだっただろうか。家族以外に涙を流して助けを求めたのは。未知の領域へ鼓動を高鳴らせたのは。

肉体の成長と引き換えに失ったものを取り返してゆく旅を人生とするならば、我々はなにを聴くべきか。助けるべきか。支えるべきか。


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