小説にはテーマがある

小説内のテーマとビジネス書のテーマの違い

小説には、書かなければならない理由がある。
「このテーマについて書きたい」
そう思うから、小説というのは書かれている。
どうしても、伝えたい『テーマ』が、そこにはあるのだ。

ビジネス書などは、大きなテーマがそこにある。
タイトルなどで表現されているが、大きなテーマがあって、それから細分化されていることが多い。
その多くは、悩みを解決するものである。
とても困った状況の悩みを解決することが、本を読む大きな理由だったりする。
・営業成績が上がらない
・出世したい
・フリーランスになりたい
・目標を達成したい
・夢をかなえたい
このような悩みというのは、一人では解決不可能であることが多い。
かと言って、成功者には簡単に話を聞くことができない。
それならばと、成功者の声を固めたもの。それがビジネス書となる。

だからこそ、その悩みが解決したとき、読んでいた本は無用となる。
ただ、「この本に救われた」といって、人に紹介したらカッコいいからと、持っている程度である。

ビジネス書が「問題解決のための本」なら、小説は「問題提起の本」と表現できる。
問題を持ち込んでくれる本なのだ。
日々の、小さな(とはいえ、問題にぶち当たっている人には小さくは感じない問題ではある)問題に対して、『一つの問題に対しての答え』を提案してくれるに過ぎない。
つまり、ビジネス書は『学校のテストと同じ』なのである。
一つの問題に対して、一つの答えを提示しているものだ。それも、“模範解答”ではなく、著者という一個人が導き出した回答に過ぎない。
それを、あたかも正解のように実践しようとする。

隣の人が「あっちに行った方が良いよ」という言葉を鵜呑みにして、“あっち”に行くのである。貴重な自分の人生の時間を使って。
ビジネス書が悪いというわけでは無い。
しかし、その読み方は辞めるべきだ。
そんな方法で成功する道を模索したところで、求めている答えには、一生たどり着かない。

小説にはテーマがある。
ただ、単純に物語を読んで「あー、面白かった」という読み方は、ビジネス書の“それ”と同じである。
そんな読み方ではなく、「この小説のテーマは何だろうか」と考えることが重要なのだ。
「この主人公には共感できなかった。だから面白くなかった」でなない。
「なぜ、共感できなかったのか」
「この主人公人共感できる人はどのような人か」
「共感するためには自分には何が必要なのか」
このような視点をもって、物語を読むことが重要なのだ。
そこで初めて、『問題提起』が生まれてくる。
物語全体を覆っている『問題』と、自分が個人的に感じることで明るみになった『問題』の両方が見える。
そこから、自分が何を考えて、何をすることで、「この小説を読んだことで自分にもたらしてくれるものは何か」と考えるのだ。
こうした一連の流れが、読書をして思考することになるのだ。

この紹介した小説の読み方のようにビジネス書を読むことができると、ビジネス書でも同様の効果を期待できる。
しかし、ビジネス書は「書かなければならない理由」が明確である。
それは『問題解決』だからである。
問題や悩みを解決することが、ビジネス書が書かれている理由だ。
それに、基本的にビジネス書には「書かなければならない理由」などない。
そのほとんどは、お金儲けであり、地位や名誉のためである。
著者の権威性を示すものであり、「書かなけれは死ぬ」などということは無い。

作家の加藤シゲアキさんは、「書かなければ死ぬ」と思って書いているそうだ。
作家というのは、そのほとんどが「書かなくてはいけない理由」を抱えて書いている。
そこには、地位や名誉、お金などの打算は無い。
純粋に書かなくてはいけないから、書いているのだ。
そんな作品に、心打たれないわけがない。
だから、感動するビジネス書というのは、圧倒的に数が少ない。小説によって、感動して涙することは、それに比べると日常茶飯事と言ってもいい。

私たちは日々、小説を読んでいる。
そこには、「読んだから効果を感じる」などという打算など無い。
「読みたい。読めるなら死んでもいい」
抑えられない感情を、爆発させるように読む。
それは、小説を書いている作家自身の気持ちが、小説に乗って私たちの元に運ばれてきているからなのだ。

とっても嬉しいです!! いただいたサポートはクリエイターとしての活動に使わせていただきます! ありがとうございます!