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中学の時、英語教材の潔白さがダメだった 【アドベントエッセイ(217/365)】



早いものでクリスマスまであと148日を切った。



どこよりも早いアドベント企画、217日目は「英語の教材の潔白さがダメだった」話。



京都、宇治、抹茶といった単語を見ると、中学の時、英語塾で使っていた「NHK基礎英語」のテキストを思い出す。





もうぼんやりとしか覚えていないが、


「オーストラリアから留学してきた双子の姉妹と日本人の男の子2人が、日本の文化や生活に触れながらキャッキャウフフな青春を過ごす」


というストーリーラインだったと思う。



そんな中で印象に残っているのが、夏の京都で宇治抹茶アイスを食べる、という1話だ。



男の子2人が、双子の姉妹といっしょに浴衣で祇園祭を観光し、その間に冷たい抹茶アイスを食べる。姉妹は


「ちょっと苦いけど美味しい!」


と喜びながら、初めての抹茶アイスに舌鼓を打つ。






非の打ち所がないほど清廉、潔白、模範的。
何から何までカチッと美しく、まとまったお話。






私は、この英語教材特有の「白々しいほど潔白で真面目な世界」が苦手だった。



物語の中に登場する同世代のキャラクター達は、一片の隙も見せず、模範的な毎日を送っている。読んでいるうちに息苦しくなってきて


「んなパーフェクツな人間おるかい!!!!!」



と叫びたくなってしまうのだ。若干不気味さすら覚える。



まぁ、語学のため、なるべくシンプルな会話を紡いだ結果、ストーリーもシンプルになってしまうのは宿命なのかもしれない。我ながら、ひねくれ者の言いがかりもいいところである。



しかし。私は数年後、語学教材に対する好感度の低さを、払拭する例外に出会う。イタリア語の教科書だ。





大学時代、私は第二外国語でイタリア語を取った。教科書は基礎も基礎で、難易度はNHK基礎英語とさして変わらない水準だったと思う。




ある日、教科書の端っこに、コラム的に設けられた短い会話の読解を命じられた。


読み始めると、夏のバカンスの予定について二人の男が話しているシチュエーションだとわかった。登場人物を仮に、ルイージとブチャラティとしよう。



ルイージ「夏のバカンスの予定は決まった?」


ブチャラティ「まだだよ。君は?」


ルイージ「僕は愛する彼女に旅行をプレゼントするんだ。もうチケットも買ってある。今からほんと楽しみだなぁ!」


ブチャラティ「えっ、でもさ」


ルイージ「何?」


ブチャラティ「彼女、次のバカンスは帰省して家族と過ごすって言ってたぜ」


ルイージ「えっ」






キタキタキタキタ!!!!これよ!!!!こういうの!!!!!!こういうのが欲しかったのよ!!!






さすがアモーレの国というか、イタリア語の教科書にのってる例文は、家族関係のこじれだったり、恋人どうしの痴話喧嘩とかがやたら多かった。とても人間らしくて、魅力的だった。





日本で作られた外国語の教科書が潔白になりがちなのは、お国柄のようだ。




刺激を求める人は、イタリア語を学ぶのをオススメする。





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