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アドベントエッセイ(164/365) 短編「アサガオ」

早いものでクリスマスまであと201日を切った。


どこよりも早いアドベント企画、164日目は、過去に書いた「アサガオ」というタイトルの短編の話。


この作品は、「今日は特別な日だ」から始まる作品、というお題のコンテスト用に書いたもの。


公開して特に何も起こらなかったが、個人的には好な作品なので、リライトしてnoteに載せることにした。



ーーーーーー

「アサガオ」 省アンリ


「今日は特別な日だ」


「えっ?何?」


「だから、今日は特別な日だねって」

「いきなり話しかけてきて、そんなこと言われても」

「君はそう思わないの?」

「思わないよ。今日は、昨日と変わらない平凡な一日だ」

「もう、分かってないなぁ。だから特別なんじゃない。あ、ほら車来てるよ」

「おっと、ありがとう。でもさ、平凡な一日は、平凡だから平凡なんだろ。特別な訳ないじゃん」

「そっか。考えもしなかったや。うん、やっぱ今日は特別だな」

「もう全然わかんないな。ところで君は、誰なの?」

「ゆかだよ」

「名前だけ言われてもわかんないよ。何年生?」

「3年」

「やっぱ隣の学校か。そのプランター、ウチのと違うなと思ったんだ」

「うん。これ重いのさ。でも、今日もアサガオ咲いてくれたんだ。特別だよね」

「アサガオなんて一度咲いたら毎日咲くじゃない。もう飽きちゃったよ」

「花の姿は毎日変わるよ。綺麗さも毎日違う。凄いことだと思わない?」

「ふーん。そういうもんかね。やっぱ分んないや、僕には。あ、僕こっちだから」

「そっか。じゃあここで」


「ばいばい」


「ねぇ」


「なに?」


「私たち、多分、長い付き合いになるよ」


「ますます分んないなぁ」


「そうかな」


「うん。まぁいいや。じゃあね」


「うん。また」


ーーーー


「はーい」

「私。入るよ? 」

「うん」

「じゃーん」


「おおっ」

「どうかな?」

「うん。綺麗だ」

「でしょ?」

「うんうん。綺麗だな。
あ、そうだ。見てこれ」

「えぇ。花嫁のドレスより気になるもの、ある?」

「そう言わずにさ。ほら」

「あら!」


「また咲いてる」


「ほんとだ。綺麗」


「下見に来た時も咲いてたけどさ、紫がずっと濃くなってるな。フリルも瑞々しくなってる」

「ふーん」

「何、その顔は」

「思い出すよね。あの日をさ」

「言うと思った」

「アサガオなんて毎日同じだって言ってたのにね」

「それも言うと思った」

「変わったよね、時間をかけて」


「まぁね。そっちは変わらないね」


「そうかな」


「うん」


「そろそろかな」


「そろそろだね」


「今日は特別な日だ」


「……うん。昨日と変わらない、特別な一日だね」

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