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建物はコミュニケーションでできている

α版からプロダクトを育ててくれたユーザーと考える建設業の将来

株式会社クアンドは時間、空間、言語を超えて、現場の知を価値に変えることを目指して、製造、建設、設備管理などの現場向け情報コミュニケーションプラットフォーム「SynQ(シンク)」を提供しています。

この「SynQ」構想の第一弾となるプロダクトが現場のコミュニケーションに特化した、ビデオ通話アプリ「SynQ Remote(シンクリモート)」です。

2020年11月に正式版をリリースしましたが、構想自体は2018年から始まり、最初はCEOと学生インターンだけの社内ミニプロジェクトでした。
三谷産業株式会社は、2019年9月α版の段階からアクセラレーションプログラムでの支援や、2020年4月のβ版開発後PoCにて開発に直結するフィードバックをいただき、現在は65アカウントご利用いただいているお客様でもあり、販売パートナーでもあります。
一緒にSynQを育ててくださっている三谷産業のお二人にお話を聞きました。

三谷産業


α版から使えるプロダクトになるまで

下岡
我々が最初に出会ったのは2019年のアクセラレーションプログラムのときでしたね。第3期MURCアクセラレータLEAP OVERというプログラムの「建設業における生産性の向上」というテーマに応募したら、空調設備工事なども手がける三谷産業さんがパートナー企業として参画されていて、実証フィールドを提供していただくことに。

湯尻さん
そうでしたね。実を言うと最初は特にピンときたサービスというわけではなかったんです。三谷産業も社内ではTeamsを導入し始めたころだったのですが、初めは「SynQ Remote」とTeams何が違うのか理解できず、本当に必要なの?という印象がありました。

青山さん
そのころまだ現場にはビデオ会議システムやチャットツールなどは普及していませんでしたしね。

下岡
ピッチの場面で、かなり三谷産業さんから突っ込んだ質問をしていただいた記憶がありますね。実際他のビデオ通話と何が違うのかと。今では、同じ対象物を見ながらのポインタや描画、音声テキスト変換など現場に特化した機能がそろっていますが、α版を初めて現場にお持ちしたときは、全く使える状態ではなくて。まだその頃は僕と学生インターンだけのミニプロジェクトでしかなかったので、これはまずいなと思ったのを記憶しています。笑

湯尻さん
三谷産業も、できあがったツールを使うことはあっても、これから一緒に作っていくという状況は初めてだったので、ギャップがあったんですよね。でも、下岡さんの実家が設備工事業をされていて、実際の現場の課題から生まれた構想だということが分かってからは、うちの現場でどんどんブラッシュアップし、なんとか製品化につなげてもらいたいという機運が高まりました。移動時間を減らしたい、若手とベテランのやり取りをもっとスムーズにしたいという課題はまさに弊社にも当てはまるものだったので、ワクワクしましたね。

旧UI

下岡
そこからSynQ Remoteもしかしたら使えるかもなと思っていただいたタイミングはいつでしたか?

青山さん
2020年の春ごろですかね、β版ができたときには直観的な操作ができるUIに変わっていて。これは現場のITリテラシーが高くない人でも使いやすいと思いました。

湯尻さん
弊社の要望やフィードバックにも迅速に応えていただき、現場のかゆい所に手が届くプロダクトになったので、正式版の発売と同時に全現場での導入を決めました。また、三谷産業には情報システム事業部もあり、同じような課題を抱える多くのお客様にも使っていただきたいと思い販売パートナーとしても協業させていただくことになりました。


実際にどんな現場・どんな用途で使われているのかはこちらの記事をご覧ください

現場にITを導入する上でのハードル

下岡
現在、65アカウントご契約いただいていますが、SynQ Remoteの課題や改善点などはありますか?

湯尻さん
そうですね、通話が始まってしまえばそのあとの操作はとても簡単なのですが、通話に至るまでの導線がさらに簡単になるといいですね。アプリダウンロードして、グループに招待してといったような部分です。

青山さん
そこは現場の職人さんたちにとっては課題ですね。全員が会社から貸与されたスマートフォンを持っているというわけでもないので、通信料の問題もあります。将来的には現場にも常にWi-Fiが飛んでいる状態になるんでしょうけどね。

最近ではゼネコンさんをはじめとして、現場全体にチャットツールが浸透してきています。ただ、現場にはどうしても大きな壁があって、ずっと電話ひとつでやってきた業界なので、どんなにチャットを使ってても、話すときは電話という人が多いんです。ビデオ通話をしようという発想になかなかならないのが現状ですね。

下岡
なるほど。これまではまずSynQRemoteの価値を理解していただくために、「通話中」の機能に集中してきました。ここからは導線部分、使い始めてもらうための機能を強化していく予定です。
端末や通信も、環境が整うまでまだまだ時間もかかるでしょうから、それまでは端末やWifi含めて提供していきたいと思っています。
チャットは今現場に浸透し始めているのですね。チャット機能は年内には実装予定です!

現場へのIT導入のポイントは、若手から

下岡
現場でのITツールの活用はかなり一気に進んできているイメージですか?

湯尻さん
社員の意識は変わってきたと思います。当初はいろんなツールを導入するたびに、こちらでセットアップもすべて終わらせてから、どうにか使ってみてくださいとお願いする感じでしたが、今では現場の方から「こんなアプリありますよ、使ってみませんか」とどんどん意見が上がってくるようになりました。社内にiPadを導入してから、だいぶ時間はかかりましたが、労働時間の削減という必要に迫られている部分もありますけどね。

下岡
そんな意見が上がってくるほど雰囲気が変わったのですね。ツールを社内に導入していく上で、何か秘訣はありますか?

湯尻さん
ポイントは若い人から攻めていくってことですね!やり方が固まってしまっているベテラン層を変えるのは難しいんですよ。でも若い人がツールを使ってちゃちゃっと仕事をこなしているのを目にすると、ベテランも「おっと?」と気にし始めてくれる。まさにそういう若い人の役回りを担っているのが青山ですね。

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SynQ Remote導入の旗振り役となってくれた青山さん

青山さん
ツールを使いこなせるようになると、業務効率化につながるんですが、使い方を覚えるという別の手間がかかってしまうので、ベテランからすれば今までのやり方の方が早いと感じてしまうんだと思います。例えば現場にIT担当者を配置して、困ったらいつでも操作方法を教えてもらえる環境をつくり、しっかり導入できたら他の現場に行ってまた導入・サポート、みたいなことができたらいいのかもしれないですね。

湯尻さん
現場はとにかくシンプルを求めるんです。この作業の時は「①を押して②を開いて③を見てください」ではなくて「①を押すだけで完了です!」というものを求めている。現場では常に余裕がない状態ですからね。そのシンプルさをお膳立てしないと完全な導入は難しいですね。

下岡
我々も、現場の方の使いやすさを一番に意識して開発してきましたが、これから機能が増えて行ってもそこは忘れないようにしたいですね。

建物はコミュニケーションでできている

下岡
現場とITのコラボレーションが始まって、今大きな変化の入口に立っているかなと思うのですが、今後建設の「現場」はどんなふうになっていくと思いますか?10年後20年後どんな仕事の仕方をしているのが理想でしょうか?

湯尻さん
良く言えば個人の技量に依存しない現場になっているんじゃないかと思いますね。今までは個人個人が現場でコミュニケーションをとって状況を把握して、段取り、対処ができていたけれども、困ったときに自分で考える前に、答えをツールなど外部に求めるようになるのではないかな。
建設現場では元請業者、下請業者、資材業者、それぞれの工事関係者の間で情報共有をしながら仕事を進めます。コミュニケーションで建物って造られていくんです。ひとつでもコミュニケーションが欠けると、手直しにつながってしまうこともあります。とても大事なことなのですが、それができない人が増えていくのかなと。

下岡
建物がコミュニケーションによって造られるというのは、人と人が常に調整をしたりすり合わせをしながら工程が進んでいくっていうことですか?想定外のことが常に起こるということですよね。

湯尻さん
そうです、現場は常にすり合わせの連続です。BIMのようなツールも、計画を逆算していくということですが、結局は計画通りに行かないことが出てくるので、そこを人がすり合わせています。変えていかなければならないんですが、かなり時間がかかってっしまっているのが現状でしょうね。

青山さん
例えば大手のゼネコンが1社でひとつの建物を全部自社で造る、職人も自社の社員となれば、コミュニケーションの数珠つなぎを回避できるし、利権の絡み方も簡素になるかもしれません。お客様からすればひとつの建物を造ってほしいという依頼には変わりないので。定期的に業者ごとで打ち合わせをするという時間を減らせるし、全体として最適なやり方が選べると思うんですよね。

下岡
その考え方に少し似ているんですが、私は1社で現場を動かすのではなく、プロジェクト単位で現場が動くようになるのではないかと思うんです。中央にプロジェクトマネジメントをする母体があって、そこに職人や、施工管理者、資材等が集まってくるイメージです。工事の現場も工期が定められていて、予算があり、竣工というゴールがあるひとつのプロジェクトです。ゼネコンやサブコン、その下の中小事業者など全て分散化して、企業単位ではなくプロジェクト単位で集まっては分かれるという建設像です。

湯尻さん
なるほど。利益が出れば、全体に分配するということですね。今の建設業はほとんどが元請け下請けの業界で、ゼネコンの統括管理の中でのそれぞれの条件下で我々は我々の利益を上げるための努力をしているところがあるので、全体最適でものがつくられていないのでは?と感じてしまうことがあります。そこで「SynQ」などで情報共有して、全社全員が同じ価値観をもっていければ、業界の持続性も高まってくるのでないかと思いますね。

下岡
まさに理想論ですけどね。ITの世界ではプロジェクト単位でアサインして、解散するというコラボレーションが可能なので。今後若手が今までの職人のように時間をかけて体で覚えて一人前になるまで耐え忍ぶっていうのは無理だなと思うんです。働きたい若手を増やして業界の持続可能性を担保するためにはやり方を変えないといけないでしょうね。

ユーザーから見たクアンド

下岡
三谷産業さんはいろんなスタートアップや他企業とのコラボレーションに力を入れられていますが、クアンドはどんな会社に映っていますか?

湯尻さん
空調首都圏事業部としては、クアンドさんほど深く関わって一緒にやってきた会社は他にないですね。

青山さん
スタートアップらしい勢いがあって、成長を目指している素敵なメンバーがそろっていると感じます。クアンドさんから学びを得ることも多いです。

下岡
三谷産業さんのように大手企業と比べると、こんなにも何も無いのかというくらい手探りですし、短いスパンで方針も変化していきますが、それを楽しめるメンバーがそろっていますね。今後ともSynQ Remoteだけに関わらず、「現場」の将来を見据えて深くコラボレーションし続けられることを願っています。引き続きよろしくお願いいたします!

クアンドは、現場にストレスなく浸透するプロダクトをつくるために、営業やカスタマーサクセスはもちろん、エンジニアもユーザーの実際の現場に深く入り込みながら、SynQの開発を進めています。現場に出ることで、私たちのいるIT業界とはまったく違う「常識」に気付き、現場とはどんな場所なのか五感全てで感じとっています。SynQの目指す世界観、クアンドの目指すプロダクト像に共感してくれるメンバーを募集しています。

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