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英国・韓国の外国人介護労働者の現状 ~グローバル・ケア・チェーンの現実~


 グローバルノースの国々の介護をグローバルサウスの外国人労働者が担うため、グローバルサウスの高齢者介護が成り立たなくなる。
 いわゆるグローバル・ケア・チェーン(Global Care Chain)ですが、グローバルノースでの外国人の介護労働者の状況はかなり厳しいようです。

英国では

 英国では介護人材不足に対処するため、2022年初めに新しいビザ制度を創設し、インド、ジンバブエ、ナイジェリアなどから約14万人がこのビザを取得して介護労働者となったといいます。しかし、新しいビザが導入されてから搾取の報告が急増しているのだとか。

 仲介業者に高額な仲介料を支払って英国に来てみたけれど・・・わずかな賃金で長時間労働を強いられ、解雇されれば在留資格を失い、強制送還される恐れがあるため、不満を口にすることはできない、などなどの事例が多発しているようです。
 慈善団体アンシーンの推計によると、介護事業者における強制労働の被害者は少なくとも800人に上り、2021年の63人から大幅に増加したのだそうです。

韓国では

 日本の2022年の合計特殊出生率は1.26でしたが、隣国、韓国の2023年の出生数は前年から1万9,186人減少し、23万人で、合計特殊出生率は前年に比べ0.06低い0.72で、8年連続で過去最低を更新しており、出生率が世界一低い国となっています。

 韓国銀行の研究陣は、賃金の安い外国人介護労働者の獲得のために介護サービス業界の最低賃金を他業界より低くする制度を適用すること。また、各家庭が私的契約方式によって外国人を直接雇用できるようにするという2つの案を提示したのだといいます。私的な直接雇用では最低賃金は適用されません。
 いずれも介護サービス賃金そのものを低くする案です。
 これらの提案は、「外国人介護労働者を雇用する費用が十分に低くなれば子ども世帯が家族の介護の代わりに本来の仕事に戻ることができる」との判断があったらだとのこと。
 それにしも、身勝手と言いますか・・・
 

他のアジア諸国では

 他のアジアの国々でも外国人の介護労働者は低賃金状態に置かれているようです。例えば、香港とシンガポール、台湾などでは外国人介護サービス労働者を時給189円~308円の低い賃金で雇用しているといいます。これは、韓国の家政婦賃金1,258円より顕著に低くなっています。
 ※ 1ウォン0.11円で計算

蔓延する「われわれ/やつら」の線引

 グローバルノースの外国人介護労働者は単なる安い労働力でしかないようです。ようするに「やつら」は貧しい国から来るのだから、送り出し国の賃金水準と比べればこの程度の低賃金でも十分だろう、ということなのでしょう。

 朱喜哲ちゅひちょるさんは、非人間化は「われわれ/やつら」を線引きすること。そして、その線引きが、偶然的な性質ではなく本質的な差異にもとづくもので、改訂不可能なものだとすることにより、確立すると論じています。
(参照:朱喜哲2024「人類の会話のための哲学」よはく舎 nyx叢書 p222,223)
 
 グローバル・ケア・チェーンの外国人介護労働者たちは、どこの国に行っても「やつら」にされてしまうようです。
 私の見たところ、日本における外国人介護労働者は日本人の介護労働者より極端に低賃金をいうことは言えないと思います。しかし、それでも、彼ら・彼女らは「わたしたち」には入らない「やつら」として生きていくことが多いように思います。

 レイシズム(racism)の根っこにある「われわれ/やつら」の線引きに敏感になる必要がありますし、「われわれ」の範囲を拡大していくことがとても大切だと思うのです。

 グローバル・ケア・チェーンについては以下のnoteに書きました。ご笑覧頂ければと思います。


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