国税庁の切り札!総則6項で過度な節税を防ぐ財産評価の実態
はじめに
こんにちは。SYNCA合同会計事務所 税理士の細見です。
相続税や贈与税において、財産評価の基準は非常に重要です。しかし、通常の評価基準では特定のケースに対応しきれないことがあります。そこで登場するのが総則6項です。この規定は、過度な節税を防ぐために国税庁が設けた「切り札」として、特殊な財産評価に対応します。
特に近年、タワーマンションの相続税対策で注目されています。この記事では、総則6項の役割や実務に与える影響を解説します。
◆この記事を読んでほしい人
◆この記事を読んでわかること
なぜ総則6項が存在するのか?
総則6項の存在理由は、相続税や贈与税の評価において、過度な節税を防ぐためです。特にタワーマンションなど、通常の評価方法では過小評価されてしまう可能性のある財産に対して、公正な課税を実現するための規定です。国税庁はこの総則6項を使い、特殊なケースでも適正な評価を行い、税負担の公平性を保つことを目的としています。
不動産における過度な節税策が広まる中、総則6項はその防波堤として機能します。市場価格や個別の事情に応じて、評価基準が大きく異なる場合、国税庁が個別に財産評価の判断を下し、節税策が過剰にならないように調整を行います。
実務への影響
1. 通常の評価基準が適用できない場合
不動産の市場価格が大きく変動する物件や、通常の評価基準では不公平な結果になる場合、総則6項が適用されます。この規定により、通常の評価では不十分なケースでも適正な評価を行い、納税者と国税庁の間での公平性が保たれます。
2. タワーマンションの事例
タワマン節税の仕組み
タワマン節税とは、タワーマンションを購入することで財産評価額を下げ、相続税を軽減する方法です。
相続税は財産評価額に基づいて計算されるため、現金を不動産に変えることで評価額が低くなることが一般的です。例えば、1,000万円の現金を使って不動産を購入すると、その相続税評価額は1,000万円よりも低くなります。
相続税評価額の仕組み
相続税評価額は、国税庁の基準に基づき、土地は路線価評価及び倍率評価、建物は固定資産税評価額を基準にして評価されます。
これにより、実際の市場価格よりも低く見積もられることがあります。特に、タワーマンションは専有面積に基づいて土地の相続税評価額が算出されるため、評価額が低く抑えられやすいのです。
タワマン裁判とは
タワマン裁判は、最高裁判所によって「総則6項」が適用された事例です。この裁判により、タワマン節税の合法性が議論され、過度な節税を防ぐために設けられた総則6項の適用基準が明確化されました。
判例では、91歳のAさんが13億8,700万円のマンションを購入し、相続税評価額を約3億3,000万円と申告しましたが、国税庁は評価額が低すぎると主張し、追徴課税約3億円を要求しました。最終的に、最高裁は国税庁の評価を支持し、Aさんらの敗訴が確定しました。
令和6年1月1日以降における相続や贈与で取得したタワーマンションの一室については、新たな相続税評価の取扱いが適用され、これにより高層階の正確な価格評価が求められるようになりました。詳細は国税庁の財産評価通達をご覧ください。
3. 納税者側の対応
総則6項の適用が検討される場合、事前に税理士と以下の国税庁公表の基準を検討することが重要です。
基準① 評価通達に定められた評価方法以外に、他の合理的な評価方法が存在するか。
基準② 評価通達に定められた評価方法による評価額と他の合理的な評価方法による評価額との間に著しいかい離が存在するか。
基準③ 課税価格に算入される財産の価額が、客観的交換価値としての時価を上回らないとしても、評価通達の定めによって評価した価額と異なる価額とすることについて合理的な理由があるか。
事前確認を行うことで、節税対策のリスクを抑え、適正な税務申告が可能となります。
終わりに
総則6項は、過度な節税を防ぎ、公平な課税を実現するために国税庁が設けた規定です。タワーマンションの事例においても、適正な評価を行うために重要な役割を果たしており、特に令和6年以降の新しい評価方法が適用されます。納税者や税理士はこの規定を十分に理解し、適切な対応を取ることが求められます。
SYNCA合同会計事務所では、上記のような税に関するお悩みや相談、個人の確定申告などの支援も行っておりますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。