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合わせZoom

真夜中に合わせ鏡を覗き込むと、何かが起こるという都市伝説があります。

ある夜、大学生のAさんは、感染症拡大の中一人暮らしの部屋で暇を持て余していました。
サークル活動もなければ友達と飲みに行くこともできず、鬱々としていました。
そんな時、合わせ鏡の都市伝説を思い出し、ふと、Zoomでそれをやったら何が起きるかを試してみようと思いました。
その様子を録画してYoutubeにアップしたら、注目されるかもしれない。そう思いました。

Aさんの部屋は、ベッドの横にちゃぶ台のある、シンプルなワンルームです。
ちゃぶ台の上にパソコンを置き、ベッドの上に100均で買ったスマホ三脚を立てて、ちょうどパソコンの画面とスマホのカメラが向かい合うようにセットしました。

準備が整ったのは午前2時を過ぎた頃。Aさんはパソコンとスマホの間に座り、両方のZoomを起動させて、パソコンに向かいました。

パソコンの画面では、アプリのメイン画面に自分の後頭部が写り、右上の小さなサブ画面には正面の顔が写っています。
特に何も起きません。
合わせ鏡のように、画面の奥に画面があり、その先にまた画面がある、というような写り方をする訳でもなく、ただ、自分の後頭部と顔が、同じ画面に写っているだけです。

Aさんは、思ったよりも面白みに欠けるなと思いつつ、とりあえず録画することにしました。
録画ボタンを押して、実況中継のように、お喋りを始めようとしました。
その時、メイン画面に写ったAさんの後頭部がグルンと振り返りました。
メイン画面とサブ画面の両方に、Aさんの顔が写っていました。

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