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フィードバックの流儀|キツいフィードバックで悩んだ時に読む処方箋

振り返るのは、とある3連休直前の金曜日ーーー。

その日、最後のMTGは当社の取締役メンバー間での役員MTGだった。
詳細はさておき、アジェンダは決して軽いものではなく、議論の末に一定の解決が見えたので、私は安堵のため息を心の中でついた。
《ふぅ…これで安心してこの連休を迎えられる》
と。

MTGの最後、1人の取締役から私宛に「フィードバック」があった。
端的に言うと、私の管掌範囲におけるキャッチアップ不足を指摘するフィードバックだった。大変的を得たフィードバックだったので、私はその場で素直に感謝し、以後気をつける旨を話したと思う。

MTGを終え、その日の仕事もいつも通り切り上げ、家族との時間を迎えた。
するとどうだろう。子供を風呂に入れ、食卓を囲んでいても、気がついたらその日最後のMTGで受けた「フィードバック」のこと考えている。

実際、取締役間に限らず、当社のメンバー含めて「フィードバック」を送り合う機会は少なく無い。しかし、気がついたら「私が私個人に向けたフィードバックを受け取る機会」というのは、思えば久しぶりだったのかもしれない。それも、いわゆる「ダメ出し」の部類に入るフィードバックである。社内では年長かつ、役職者ともなれば自然に身を任せていると「裸の王様」になりかねない。そんなうっすらとした危機感や実態を、あらためて実感した「久しぶりのダメ出し」だった。

敢えて「ダメ出し」というややネガティブな言葉を使おう。それはサッカーで言えばイエローカードだろうか。当然、プレーする本人には多少の「言い訳心」や「虚栄心」がある。出されたイエローカードを素直に受け止め、受け入れ、改善へのサイクルへと頭と身体を切り替える「瞬発力」が、久々に出されたイエローカードを前に"鈍っている"ことを、実はこの時に思い知らされたのだ。

ここまで回りくどい言い方をしてきたけれど、要は久々にくらった同僚からの「ダメ出し」を、しっかりと受け止めるまでに自分が思った以上に時間がかかったのである。そんな、一見虚弱な自分に苛立つ連休の入口に立ち、一方で明ける頃にはすっかり「感謝」の気持ちと「前向きな心」でいっぱいになっていた。人間という生き物は、本当に不思議で良くできている。

「そうだ、この学びと感謝を、書き残して自らの心にしっかりと留め、そしてチームにもあらためて再インストールせねばならない。」

そんな衝動に駆られて、このnoteを書いている。

本件を明解な学びと変える前に、この手の「ダメ出し」に関連して、いつも私が参考にしている引用をまずこちらで紹介したい。

おめでたい無知のままでいるデメリット

全編を通じて素晴らしい本なのだが、特に

第6章 本音のコミュニケーション

は何度も何度も読み返している。
なぜならば、今回の「ダメ出し」の件でもある通り、「本音のコミュニケーション」というのは、自分を守るためだったり、他人を傷つけないためだったり、要は人間という生き物の自然の摂理に逆らうものだからだ。

この人間のどうしようもない摂理に、折を見てあらがうために、この「第6章」は大変重宝している。そして当然、今回も大変お世話になった。
以下、重要なエッセンスを僭越ながら転載させて頂く。

私の見方(私の真実)があれば、相手の見方(相手の真実)がある。これを理解することこそが円滑なコミュニケーションの第一歩だ。唯一絶対の真実などまず存在しないのだから、自分だけが真実を話していると思い込んでいる人は、他人に黙れと言っているのと同じことになる。自分は自分の視点からだけものを見ていることに気づけば、自分の見方を相手に無理強いすることはなくなる。そして「私はこう思う」という形で、より建設的な意見表明ができる。

企業では、会議の場でも本音で話すのはむずかしいが、正直なフィードバックを伝えるのはもっとむずかしい。相手が部下でも、上司でも、同僚でも。ここで覚えておくとよいのは、フィードバックは真実と同じで、唯一絶対ではないことである。フィードバックとは、あくまで自分の観察や経験に基づく意見、あるいは自分が他人に対して抱く印象にほかならない。

問題の存在に気づくことが、解決の第一歩である。自分の行動が他人にどう受け取られているかを知ることはまず不可能だ。他人がどう思っているかを推測することは可能かもしれないが、直接聞く方がずっと手っ取り早い。本音が聞ければ、大事にいたらないうちに自分の行動を修正できるだろう。それがわかっていても、人間はなかなかインプットを求めようとしないものである。

適切に言葉を選んで真実を伝える時、コミュニケーションは最も実り多いものとなる。不躾なほど剥き出しではなく、こまやかに気を配りながらも正直であるような、そういうスイートスポットを見つけることが大切だ

リーダーとして、常に学ぶ姿勢を貫くことが大事だ。「どうすればもっとうまくいくか」「私が見落としていたことはないか」こうした質問から得られるメリットは大きい。ただし、覚悟して欲しい。真実は時に耳が痛い。自分からフィードバックを求めた時でさえ、相手の言葉を厳しすぎると感じることは多々ある。だがこの痛みは、おめでたい無知のままでいるデメリットを補ってあまりあることを肝に銘じよう。

自分の弱点をオープンに話すのもひとつの方法である。欠点をおおっぴらに認め、頭を冷やす必要がある時は遠慮なく言って欲しいと伝えている。欠点を自ら認めることで、私の短期に付き合って欲しいと許しを乞うと当時に、自分をジョークのネタにもしている。

率直にほんとうのことを言ってもらったら、みんなの前で感謝することが大事だ。そうすれば、これからも言って欲しい、他の人たちも真似して欲しい、という強力なシグナルを送ることができる。

いつも心にかけている人と一緒に仕事をするときには、モチベーションが一段と高まる。とはいえ他人のことを本当に気にかけ思いやるためには、まずはその人を理解しなければならない。どんなことが好きでどんなことが嫌いなのか。どんなふうに考え、感じるのか。感情は男女問わず行動の原動力であり、どんな決定を下す時も感情の影響を受けずにはおれない。感情が果たす役割を認め、それを率直に話すことができれば、私たちはよりよいパートナー、よりより同僚になれるだろう。

「冷徹なプロフェッショナル」の仮面をつけるより、自分の真実を語り、個人的な事情を正直に話し、感情は切り離せないものだと認めるほうが、総合に見てメリットは大きいのではなないだろうか。

これを機に「ダメ出し」というボキャブラリーは、以後「フィードバック」に置換する。そして、以上を熟読頂いたなら、シェリル・サンドバーグの代わりに私から補足する言葉は何もないし、屁も出ない。

だから、再度繰り返す。

私の真実があれば、相手の真実がある。

フィードバックは真実と同じで、唯一絶対ではない。
あくまで他人があなたに対して抱く印象である。

自らの問題に気づく最も良い方法は、直接聞くことである。

フィードバックには、スイートスポットがある。

フィードバックは時に痛い、ただこの痛みはおめでたい無知のままでいるデメリットを補うにあまりある。

欠点は自ら認め、時にジョークにし、もらったフィードバックはみんなの前で感謝する。

感情は行動の原動力であり、切り離せないものだと認める。

分かっている。
そんなに何度も繰り返さなくったって、頭では分かっている。
これを自らの行動に落とし込み、日々徹底することがいかに難しいことか…。

だからこそ個人的に言いたい。
引き続き、いや、今まで以上に上記「本音のコミュニケーション」を自ら実践していくと。
積極的にフィードバックを求め、時に欠点や謝りを認め、それらを可能な限りオープンにし、自らやチームの学びに変え、完璧なリーダーを目指す小さな個人ではなく、自分よりもっと大きな「チームの成長と成功」に貢献する共同体に成ることを。

「安全なフィードバック」の拠り所。

さて、そんな「悶々としたフライデー」から「感謝の週明け」を気持ちよく迎えた背景には、実は2つの「コンセンサス」がある。

当社の経営陣の間で、主に「経営チームの強化」というコンテキストで以下2つをコンセンサスとして共有している。

簡単にそれぞれを紹介したい。

1. 子は親の鏡理論

「子は親の鏡」であるという明快な理論、前提条件だ。本ベストセラー(子供が育つ魔法の言葉|Children Learn What They Live)の教えにおけるすべての土台となっているのが、「子は親の鏡」であるという真理である。

当然、我々はこの「家族」を「会社」組織に置き換え、「親」を「経営陣」に、「子」を「メンバー」に置き換えている。

  • 組織がピラミッド構造になるほど、全体は上位レイヤーの考え・行動の生き写しとなる

  • 故に、最も大事なのは経営陣のクオリティとカルチャー。これがそのまま組織クオリティとカルチャーに反映される

  • まず経営陣が体現する。背中を預け合わせる、チームワークする。経営陣ができないチームワークは、以下の組織は絶対実現できないと認識する。

仮にこれがティールや他のフラットな組織構造だとしても、人間という生物が組織となる時、程度の差こそあれ普遍的に存在する組織のダイナミズムだと理解している。

2. フィードバックの4Aガイドライン

私の知る限り、明示的な企業文化と制度によって、他のどんな企業よりも積極的にフィードバックを送り合うカルチャーや仕組みの構築を志向している(と既存文献で学ぶことができる)のがネットフリックスだ。

そんな日常茶飯事的に相互フィードバックをある種「ヘルシー」に送り合う文化の根底には、彼らが4つ導き出したガイドラインがある。それがこのフィードバックの「4A」に見事に集約されている。

from NO RULESで紹介されているNetflixのフィードバックのガイドライン「4A」

これが本当によくできている。どれひとつとして欠けては、組織としての健全なフィードバックシステムが機能しないと、ユーザー体験を通じてあらためて実感する。言わば、時に強い痛みを伴う「フィードバック」という体験に対する、緩衝材でありセーフティーネットだ。

故に、今回のフィードバックも「適切に受け止める」ことができたし、それを「個人の学習・成長サイクル」に止めず、組織へ還元できる学びや行動へと拡張させるテンションが効いている。

だからこそ、フィードバックを受けての「感謝」と、そこからの学びは、可能な限りオープンに、皆の前でシェアしたいと思っている。

以上を集約した上で、最後に私の言葉で今回の学びを自らの、そしてチームの血肉へ刻み込んでいきたい。

明日、フィードバックをもらったら。

まず感謝する。
言いにくいことを直接届けてくれた勇気に、ありがとうと伝えよう。

感情と向き合う。
理性よりも先に、感情的反応が湧き上がる。それをじっくり観察しよう。フィードバックを受け止めることを、決して焦ってはいけない。

素早く行動へ移す。
じっくり寝かせた上で、あらためるべき思考や行動があれば素早く行動へ移そう。受け止めるのはじっくり、その上での行動は素早く。

皆の前で感謝し、行動で示す。
不完全な自分を認め、他人に晒すことは心地よいものではない。ただ、敢えてそうすることで、自らもチームも力強く成長できる。そう信じる。

日々フィードバックを求める。
あらゆる機会を見つけ、自らの行動・態度に対して「フィードバック」を求め、「学び」を「成長」姿勢を貫こう。

以上。

明日、春がきたら
君に、逢いに行こう。

明日、フィードバックをもらったら
この5つを、実践しよう。

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