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掲載記事アーカイブ

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総合誌、同人誌等で過去に掲載されたものを放り込んでいきます。
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2017年8月の記事一覧

「声」の持ち主(「現代短歌」2016年7月号歌壇時評+あとがき)

 最近、短歌における「声」について、ぼんやりと考えている。

 「歌壇」[2016年]3月号の座談会「震災詠から見えてくるもの」において本田一弘は、自身の最近作「さんぐわつじふいちにあらなくみちのくはサングワヅジフイヂニヂの儘なり」(「サングワヅジフイヂニヂ」「短歌研究」[2016年]2月号)に触れつつ、「自分たちの世界は『サングワヅジフイヂニヂ』という濁音であり、ちょっとなまっている。あれから五

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レプリカの羽(「現代短歌」2017年8月号)

五月五日、板橋区立美術館「絵画は告発する」展。祖父の絵を十年ぶりに観る。

語らるることなきままに喪へるこゑ カンヴァスに青の佇む

五月十九日、夕方に東京着。速報はTwitterで確認。

最初から生きてゐなかつたことにして(何が?)レプリカなのだおまへも

五月二十九日、この原稿の依頼を拝受。メールにて企画の主旨を問ひ、日付をばらす了承を得る。

名をつらね歌をつらねてそののちのわれに聳ゆる豊

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いたみつづけること――清原日出夫小論(「塔」2015年1月号)

 1963年4月、清原日出夫は「短歌」(角川書店)誌上に「暁闇」30首を発表する。のちに歌集『流氷の季』に収められた際にも、歌集後半、第III部の中心として据えられた連作である。

高層に組まれゆく鉄骨荒々といまだ生身の脆さ親しき
すでに明日は今日の心と来て重しわが双の掌ゆ逝きし〈労働〉
〈自由〉この捕われの身のさながらに事務服の群来たり立ち読む
さしあたり何求めんといし書店楽を流しいてバルトーク

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