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柔らかな夜の香り

季節はその香りさえ変える

見えないそれは ふっとぼくらを捕まえる

濃紺の夜が垂れている空に ふと

柔らかく溶けるような

さざなみを感じさせる

静かで だけど 確かな その香り

更に欲しくなって

逃げていく前に たくさんそれを吸い込んだ


触れられないのに 感じずにはいられない

檸檬の酸っぱくてほろ苦い あの味のような

太陽の眩しくて暖かい 陽だまりような

いつも感じているのに 捕まえられない


帽子のツバをぐっと下げて

黒色になりきれない やさしさの夜空を

ノクターナルなぼくが泳いでいる

静まりかえることもない 不躾な街で

ライラックがぼくを誘う

泣きたくなるような気持ちを押さえて

一生懸命にその香りを探すけど

やっぱりどこにも見つからない

最初から無かったのかも

知らない誰かが持っていってしまったのかも

要らないと言われる前に逃げたのかも

考えられる限り それはどれも答えじゃない

教えて欲しい 星に香りはあるのだろか


やさしくて涙が出そうな香りだといいな















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