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ポローニアスの娘

まだ誰にも踏まれていない1日を
彼女は無機質に歩く

けれども白線の上をゆくとき
見えない顔の下側が
朝鳥の歌声のように
愛くるしく揺れているように思えた

ちらと揺れる長いまつ毛の先に
光のかけらが射し込んで
目の下の薄く白い肌を照らす


白線は一層白んで
いよいよ谷底に落とさんとするけれど
そんなのどうだっていい事のように
彼女の脚は嬉しげに
転がるのをやめない


彼女の愁いが何なのか
きっと問うても答えてはくれない
彼女の悦びにはなれないか
きっと問うまでもなく応えは出ている

彼女の足跡は
白線が無くなるそこでふつと切れていて
ぼくに見えるのは ただ
もう君じゃないきみ

その悲しみは
君の哀しみにも似ていないだろうか


風に千切れた想いが
ぼくにはこれだけ見えているのに








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