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海でもなく 空でもなく

寄せられた泡の粒に

足先をなでられて

ひとときの想いを手放してやった

砂に書いた ことばの欠片は

返していく 滑らかな水のビロードに

すぅっと吸い込まれていった


8月の終わりの日の前に

ぼくは流してしまいたかったものを

手のひらにのせておいて

そっと指と指の隙間からこぼして歩いた

どこからか頬を冷やすように吹いてくる風は

誰の印象にも残らない

“何でもない日”にされた今日に

特別をくれたみたいだ


雲が粒になって浮かんで

船になって

拾ってきた想いを ゆっくりと高く

もうすこし高く

委ねられて茜色に近づく

まだぼくの知らない 新しい香り


今日で良かった

今日が良かった


海でもなく 空でもなく

ぼくは ここ

ほどけるのは ただ

やさしさ







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