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シドニーいちの高層ホテルに泊まった

…のっけからウソを書いてしまった…。
正確に言うと、「以前そうだった」ホテルに泊まってきた。

Hotel Morrisが開業したのは100年近く前の1929年。その当時から34年間は、シドニーで一番の高層ホテルだったとのこと。

その後は、何回か名前を変え、その間着実にホテルは経年劣化してゆき、最後の頃はバックパッカーズホステルにまで身を落としていた。ま、バッパーが悪いってわけじゃないけどさ。

最後の頃はWest End Hotelという名前で、簡単に表現すると、「老朽化したホステル」であった。当時はその辺りって、特に何があるというわけでもなく、ごみごみしていて都会のホコリが充満しているようなエリアだった記憶がある。

このWest End Hotelには思い出がある。
2000年代には僕はシドニーのウェスティンホテルで働いていたのだが、時々ウエスト・エンドホテルに予約がある旅人が間違えて来たことが何回かあった。
まぁ、似たような名前だし、タクシーの運ちゃんが聞き間違えて連れて来てしまったようなこともあるけど、かたやバッパー、かたや5スターホテル、間違えて来てしまったゲストはどんな気持ちだったのかな?僕ならこっ恥ずかしい思いをしたと思う。

そんなオンボロビルをかなりガッツリと改装(といっても、こういうビルは歴史的建造物なので、簡単にノックダウンすることは出来ず、オリジナルの外観を維持しないといけない)して開業したのが、Hotel Morrisだ。
このホテルは現在、アコーグループの、Handwritten Collectionというブランド傘下になっている。

(余談だが、僕も現在アコー系列のホテルで働いているので、普通よりかなり安い従業員割引で泊まれたという訳だ)

下のリンクの記事には以前のホテルの写真が載っていて興味深い。

まずはロケーションだが、シドニー市街の南側、セントラル駅から程遠くない場所にある。

このエリアは今ではタイ・タウンと呼ばれていて、もうそこら中がタイレストランや食材店ばかり。その次のブロックはコリア・タウンだし、もう少し行くとチャイナタウン、とにかくアジア系のお店ばかりで、いわゆる西洋料理店はほぼない。

ハイエンドなショッピングエリア、ビジネスエリアからは離れているので、やや雑駁な印象を持つエリアだが、夜遅くまでにぎわっているので活気があるともいえる。

そんな中にそびえ立つビルが、Hotel Morris。間口は普通の店舗くらいしかないが、その割には背の高いビルなのでとても目立つ。

ホテルの全容

1929年に作られたビルなので、アールデコ調のスッキリとしたデザインだが、下層階の半円形の窓が可愛らしく、良い雰囲気を醸し出している。ダークグリーンのタイルもおしゃれである。行ったことはないが、ニューヨークにでもありそうなビルだなあ、と思った。このビルの建築家は、名前から察するにイタリア系の人らしく、そういう影響なのかな。
それから、この縦に細長い看板もレトロチックで時代がかっているなあ。

入口を入るとそこはバーになっていて、いわゆるフロントデスクのようなものはない。
なので、建物に入る時は、「え、ここがホテルのエントランスなの?」と戸惑ってしまうし、チェックインもバーカウンターの片隅で行う。
忙しい時間帯は混み合いそうだが、全84室とかなりコンパクトなのでなんとかなるのだろう。

チェックインを済ませ、ああそうだ、予約した際に「先週誕生日だったんですよ~!」みたいなコメントを付けたのが功を奏したのかはわからないが部屋をアップグレードしてもらった。奥のエレベーターで部屋へ向かう。

エレベーターから降りると…おお。

壁紙にはポップな絵が描かれていて(イタリア調ですね)、部屋番号のサイネージもレトロモダン。

さて、お部屋はいかに!

ここもとてもセンスがいい。まず目を引くのがベッドの上にあるシャンデリア風の照明。ベッドサイドランプも傘のような形で、これもレトロ調だ。

スッキリとしつつも、洒落たテイストでとても気に入った。

部屋が狭い、というのは知っていたが、狭い分ワードローブやワーキングデスクといったものを省いているので、それほど窮屈感は感じなかった。
(本来予約したのは一番小さい部屋だったので、それだとどういう感じだったんだろう?)
カップルで何泊かしたり、大きな荷物があったりだと手狭に感じるかもしれないが、今回の僕のようにソロで、一泊する分には全く問題がなかった。

バスルームもこういうタイプの部屋では定番のバスタブなしで、省スペースを図っている。
オーストラリアのホテルでは、ラグジャリーホテルでもない限りバスタブなしの部屋がメインになっていて、風呂好き日本人からすると違和感を感じるかもしれないが、色々な観点からしても、ない方がメリットが多いのだと思う。

鏡に手を振る筆者

バスルームは全体的にダークカラーで統一されていて、落ち着きがあった。ちょっと非対称な鏡、フェイスウォッシャータオルの巻き方などもこじゃれている。

夕方、外出する前にバーでハッピーアワーをやっていたので一杯…。バーは赤色が基調になっていて、シャンデリアが目を引いた。

夜ホテルに帰ってくると、うーん、夜の外観はもっと雰囲気が出るねえ…。なんだか、映画のいちシーンにでもなりそうじゃないですか?

え、ここがホテルなの?みたいなスリルがある入口…。

ベッドも快適で、硬すぎず柔らかすぎず、ゆっくり休めた。

年寄りの通例で、夜中にどうしてもトイレに行きたくなるのだが、ベッドのすぐ隣にバスルームがあるので、小さい部屋はこういう時に便利である。

そして、「お?これはクレバー」と思ったのは、バスルームに入るとセンサーがあるのか、フットライトがぼんやりと点くこと。寝ぼけ眼で通常の照明は目にキツいもんね。

翌朝は特に予定がなかったのでゆっくりと起き、下のバーで朝食をとった。

朝食の後はまた部屋に戻り、チェックアウト時間までのんびりとベッドに寝転んで、自分の好きなYoutubeを見たり、本を読んだりして過ごした。

できたてのホテルということもあり、電源はあちこちにあるし、小さなネスプレッソマシン、クロームキャストができるTVといった設備もちゃんとしている。

そして時間になったのでチェックアウト。いつも住んでいる街なのに、チェックアウトをしてホテルから明るい屋外に足を踏み出すと、自分の知らない街に旅行をしているような感覚になる。

どうせなら、無機質なハコではなく、キャラクターのあるホテルに泊まりたい。特に僕は歴史的建造物が好きなので、Hotel Morrisでの一泊はとても楽しめるものだった。