プクファーム 安田新太郎

九十九里海岸から程近い畑でトマトとネギを作っています。

プクファーム 安田新太郎

九十九里海岸から程近い畑でトマトとネギを作っています。

最近の記事

Midnight library by Carey Mulligan

Carey Mulliganの声、読み語りが心地よい。 映画『未来を花束にして』で共演したMeryl Streepも対談インタビューのなかで "I’m also in awe of your voice, which is like warm caramel poured over the English language." と彼女の声を絶賛。 2021年アカデミー主演女優賞ノミネートされた『Promising young woman 』。そして今年11月にアメリカで公

    • 『家は生態系』

      ネギ畑の土壌に病気が出たので、収穫を終えた畑を消毒している。 夏ならば、太陽熱を利用した消毒方法があるが、今の時期は充分な太陽光線もないので、農薬を土に混ぜ、ビニールなりで被覆して、化学的な療法で殺菌する。 ところが悪い菌を全滅とはならない。薬に耐性を持つ遺伝子がある奴が生き残る。生き残りは、他の菌/虫がいなくなることで、いきなり生存競争から解放されてしまう。 これと同じことが家の中でも起きている。 殺菌や抗菌の洗剤や家具で満ち溢れているが、必ず生き残るものがいる。気密性

      • 『認知症世界の歩き方』

        認知症の概念がガラッと変わった。 違う文化圏で、物の見方や考え方を発見するのは旅行の楽しみのひとつだ。 認知症というものも、脳内で起きている現象が世界観を変えているので、旅をしているとも言える。 本書は、認知症とはどういうものかと、世界になぞらえてガイドブックとして教えてくれる。誤解を恐れず書けば、いずれ自分もそうなった時、読後のこの気持ちがあれば(覚えていれば)、楽しく認知症を迎えられそうだ。また今現在、認知症の旅をされている人にも、まさに旅人を迎えるように接せられると

        • 『ルックバック』

          絵を描くことが好きだった父は、芸大に進んだ。当時あった飛び級、それからの現役合格なので、学業はそつなくこなす人だったのだろう。 一方、コミュニケーション能力は著しく低く、大学を出てすぐ勤めた会社には、ほんの僅しか通わなかったそうだ。僕の記憶でも、何かちょっと働き、すぐに辞めて家に閉じ籠っていた。歳を経る毎にそれは酷くなり、人生の終盤は、ほぼ引きこもりだった。 家計は苦しく、大変だったが、貧しくても明るく楽しい家だった。これには母の存在が大きい。働きに出る母、家で籠る父。思

          『Project Hail Mary 』

          『火星の人』の著者Andy Weir の去年出した最新作。 ざっくり言うと、異星人と協力してそれぞれの星を救うお話。中身は結構なハードSFだが、ユーモアたっぷりで、そして泣けちゃう。 『三体』劉慈欣 著で、暗くて疑心暗鬼に満たされてしまった僕の宇宙観を、明るく希望に満ちたものに取り替えてくれた。ほっ。 そしてナレーション(Audible) Ray Porterという人、素晴らしい! いろんな国の登場人物をそれぞれのアクセントで語る。これが最高!語り口で情景が目に浮かぶとか

          草取りと唯識と押忍

          梅雨明けと同時に猛暑。 ネギ畑に這いつくばって草取りをしている。 この辺は海風が吹くとは言え、背中に刺さる太陽光線はジリジリとヤバい。 この畑は直線距離にして2000mのネギ畝。株元は機械では取れないのでコツコツ手で取る。あと何メートル、あと何畝などと考えていると心が折れる。先など考えず、パッパと目の前の草をただ取るのが精神衛生上、一番良い。 苦とか楽とか、自身が作り出したものである。 古代インド哲学、唯識と呼ばれる考えだそうだ。 映画「マトリックス」でもそんな一節を見ら

          大雨に思うのですが。

          不快指数MAXの生温かい気温と湿度から一転、冷たい風と共に、暖かい海からたっぷり吸い上げられた水が一気に畑に降り注ぐ。 ネキリムシにやられて既にダメージを受けているネギ畑は、一瞬で田んぼと化した。多湿を嫌うネギは、これから軟腐病にも気を付けなければ。   なんだかんだ日本では食べることが出来るので実感が沸きづらいが、WFPの発表では55の国・地域で食料が危機的な状況であると発表している。要因のひとつは異常気象だ。僕なんかヘタクソ零細農家なので意見を言うのもおこがましいが、ベテ

          大雨に思うのですが。

          エデュケーション

          子供にとって、親は強烈なリーダー 大人になっても、その関係からは、そう易々とは逃れられない。親は「愛」「絆」と呼び、時に「支配」「呪縛」になっているとは気付かない。 著者Tara Westoverは過激な思想を持つ父親の影響で、小中高と学校へは通わせてもらえなかった。加えて、兄からの暴力に精神を病みつつも、他の兄の助けもあり、高校卒業程度認定の試験に合格し、大学へ入学。初めて出会う学問を乾いたスポンジのように吸収する。そしてケンブリッジ、ハーバードで学業を修め、歴史学の博士