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「読書量」と「読解力」は比例するのか

 次のグラフを見てください。

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 出典は,「学力向上のための基本調査2006」(ベネッセ教育総合研究所)です。このグラフを見ると,読書量と読解力は比例するわけではないということがわかります。

そもそも読解力とは…?

 しばしば,「読解力がないんですけど,どうすればいいですか?」と学生は尋ねてきます。ここで疑問が一つの疑問がわきます。

「読解力がない」人はいるのでしょうか?

 「国語が苦手」=「読解力がない」と考えがちなのでしょうが,本当にそうでしょうか?

読解力の定義

 読解の仕方には次の3つがあります。

 ① 「感情的」読解
 ② 「発見的」読解
 ③ 「論理的」読解

 1つ目の「感情的読解」とはどういうことでしょうか。生きていれば次々といろいろなことを感じます。「お腹が空いた」「眠いな」「退屈だな」など。もちろん,本を読めば「うれしい」「悲しい」「びっくり」など様々なことを感じます。何かしらの感情を抱きます。感情のままに読む,それが「感情的読解」です。

 2つ目の「発見的読解」とはどういうことでしょうか。生きていれば様々な発見があります。もちろん,本を読めば,何かを発見します。「これは知らなかった」「知っていたけれど,この視点は今までもっていなかった」など。それが「発見的読解」です。

 3つめの「論理的読解」とはどういうことでしょうか。「論理」の基本は,「同値」「対立」「因果」です。この関係性に沿って,文章を読み,意味を理解していくのが「論理的読解」です。

 それでは,試験で問われる読解力はどれでしょうか。③の「論理的読解力」です。それは当然といえば当然です。もし試験で①や②の力が問われたら,感じたことを否定されたり,発見したことがあってもそれは発見とはいわないと否定されたりすることになります。それはかなり辛いです。

 人は文章を読みながら,無意識に何かを感じ,発見します。その意味で,誰しもが読解力を持っているのです。しかし,論理的読解は意識的に行うことです。だから訓練が必要です。逆をいえば,正しく訓練すれば身につくものともいえます。

「読解力がない」人はいるのか

 答えは "No" です。誰しも読解力をもっています。しかし,

「論理的読解力」が欠如していることがある

人はいます。「読書」は①や②の読み方をすることが多いと思います。だから,

「読書量」と「読解力」は比例しない

ということが起こるのでしょう。

 じつはこのデータは以下の記事から見つけたものです。

 この記事によれば子供の「思考力」や「伝える力」を読書によって鍛えるためには,ダイアロジック・リーディング(Dialogic Reading)を用いることが効果的だとのことです。簡単にいえば,読み聞かせの後に,

「あなたはどう思う?」
「なぜそう思う?」

というように「考えを引き出し,考えを論理的に整理し,より深堀するための問いを投げかけることが重要だ」とのことです。

 これはまさしく「論理的読解」への第一歩でしょう。このような読み聞かせが「思考力」や「伝える力」を鍛える手段になるのは納得がいきます。

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