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【釈正輪メルマガ2月12日号】日々是好日


【不思議なこと】
梅の香りを嗅いだことはありますか。梅に鶯という言葉があるとおり、各地から梅の便りが届きはじめる頃となりました。早春の夜道で、何処からともなく漂ってくる濃厚な香りに、梅の気配を感じることがあります。昼間よりも夜から朝にかけて強い香りを発し、暗闇の中でこそ存在感を増やすのが梅の花。これが「夜の梅」といわれる所以です。

ところで、梅の花の蜜を求めてやってくるのは、鶯ではなく目白です。しかし、八世紀に成立した『懐風藻』で詠まれて以来、「梅に鶯」とは、取り合わせのよいことの喩えとされているようです。

合掌

二もとの 梅に遅速を 愛すかな

与謝蕪村

昨年、ノーベル賞医学生理学賞に輝いた本庶佑(ほんじょたすく)教授は、研究者を志す子供たちに向けて、こんな言葉を贈られています。「研究者になるために一番重要なのは、何か不思議だなと思う心を大切にすること」また、「科学の発見のプロセスは、不思議に思ったことを絶えず突き詰めていくことです」と言ったのは、20世紀を代表する科学者のアインシュタイン博士でした。彼が科学に関心を持つきっかけは、5歳の時に父親から貰った方位磁石だったといいます。磁石の針はどうして常に北を指すのだろう?その不思議だなと思う気持ちが、彼を科学者への道へと誘ったのです。

「不思議」といえば、一見して原因や理由などが分からないことに対して使われていますが、実はこの言葉の語源は仏教にあります。親鸞は「五つの不思議を説くなかに、仏法不思議にしくぞなき」と言っています。世の中に不思議なことはあるけれど、すべての人を絶対の幸福の身に救い摂る「阿弥陀仏の本願」以上の不思議はないと言うのです。

私たちの思議(考え計ること)を超えた、心も言葉も及ばない世界を指すのが、本来の不思議なのです。水に住む魚に、火の存在を知る知恵はありません。これからも科学が多くの事を解明していくことでしょうが、仏法の不思議だけは、ノーベル賞を取るような人の知恵をもってしても、決して解明できる世界ではないのです。

釈 正輪 拜

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