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『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』を読んだ

 まさかドナルド・トランプについて今年一番関心を寄せるとは思いもしなかった。それほどに、この『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』(著:横田増生)がとてつもなく面白い本だった。
 ドナルド・トランプについて考えた際どういうイメージが頭の中を駆け巡るか。「顔を真っ赤にして怒っている老人」「嘘の情報を撒き散らしアメリカを分断に導いたデマゴーグ」「強さを取り戻すと息巻いておきながら自身に危険が及ぶと真っ先に逃げ出す卑怯者」など、数々のマイナスなイメージが思い浮かぶ。其れもそのはずで、今挙げた全てのイメージをが事実として存在しているからだ。
 トランプについて最も意識した時期はいつであっただろうかを思い出す。強烈なイメージとして残っているのは連邦議会襲撃事件のことだろう。多くのトランプ支持者が囲んだ連邦議会の中を、バッファローの格好をしたQアノン信者が雄叫びを上げている様子を写した写真は未だに忘れることが出来ない。だが、それよりも強烈だったことは板門店・南北米三者会合だろう。未だ戦時中の北朝鮮と韓国の主導者が、アメリカ大統領という西側諸国のトップを介して会談に至ったというトピックは、今でも目が眩みそうな事実として思い出される。
 結局、トランプは右に述べたような多くのマイナスイメージを抱えることになる。其れもそのはずで、驚異的な実現よりもがトランプが行う悪行のほうが目立ってきたからだ。メキシコに壁を作ろうと画策したり、TPPやパリ協定からの離脱、果ては対立する人物をSNS等で攻撃したり、とても公人とは思えない行動がマイナスイメージを増長させてきた。
 しかしながら、マイナスイメージがなぜ湧き上がることになったのか、なにが起因となりイメージを抱えることになったのか、其のことについては知らなかった。もちろん、トランプの行為が原因ということはわかっている。此処でいいたいのは、なぜトランプが数々の悪行を行うに至ったのか、なぜトランプがメディアを通してのトランプと成ったのか、その原因・根源について知らなかったということだ。
 人は認識した瞬間からその人ではない。人はその人に至るまでに、なにか色々な段階を踏んでその人へと変貌していく。その人の瞬間だけを認識して「この人は〇〇だ」と決めつけるのはいささか早計だ。「〇〇だ」と決めつけるのであれば、その人がその人に至ったのは何が根源なのか、その人がその人になったのは何が原因なのか、其れを探った上で決めつけを行ったほうがいい。「この人が〇〇だと決めつけられるのは、何々を根源にし何々が原因なのだな」といった具合に。何が言いたいか。『「トランプ信者」潜入一年: 私の目の前で民主主義が死んだ』は、トランプが多くのマイナスイメージを持つ事になった根源と原因を読み取ることができるのだ。ドナルド・トランプという人間の大統領在籍期間というのは瞬間でしかない。その瞬間だけを認識して「〇〇である」と決めつけるのは早計ということだ。
 だからといってトランプの評価が変わることはない。トランプは知りうる中でも、なかなかに最低の合衆国大統領だ。今の大統領選でトランプが圧倒的な代議員指名を獲得したことに大変驚いている。あれだけのことをしておきながら未だにトランプ支持を辞めない共和党どうなっとんの、とすら思っている。もしトランプが大統領として再戦する事になったら、昨今の世界情勢と加えどういった影響をもたらすことになるのか。指の先が冷たくなる感覚を覚える。


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