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売れているアーティストに共通していることは?【アーティストプロデュースにまつわる100のギモンぶつけてみた】|04

こんにちは、ライターのやまはたです。前回の「アーティストが売れ続けるために」SNS活用術、モチベーションのケアはどうしてる?」に続き、今回もS×Sの"中の人"に聞きたいこと、気になることをぶつけていきます。

04のギモン|売れているアーティストに共通していることは?

アーティストやクリエイターを目指している人は「売れたい」という気持ちを強く持っていると思います。でも、売れたい気持ちが強い=売れるとは限りません。それに、そもそも何をもって「売れている」とするのか。売れているアーティストに共通していることは、一体何なのか。

今回は、15年以上アーティストマネジメントに携わっている京條哲士氏に「売れているアーティストにはどんなことが共通しているのか」、また「売れるためにおこなっていること」をお聞きしました。

表向きはアーティストプロデュースにまつわるお話ですが、蓋を開けてみると、人材育成や商品プロデュースのヒントにもなる気がしています。ぜひ最後までお読みいただけると嬉しいです。

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京條哲士氏
株式会社GRIP代表。アーティストマネジメントやライブ制作などを手掛け、人気ロックバンド「coldrain」、「SiM」を発掘・育成。S×Sプロジェクトの発案者で、参加メンバーの気持ちを最優先に考えながら寄り添う。マネジメント歴15年。
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S×S(Story by Story SHIBUYA)とは


需要と供給が一致している

ーー京條さんはマネジメントという立場で、15年間いろいろなアーティストやバンドを見ていますよね。そんな京條さんから見て、売れているアーティストに共通していることはありますか?

京條:〈自分の進むべき道〉、〈自分がどうあるべきか〉を分かっている人が売れている気がしています。ファンが求めていること(=需要)と、自分がすべきこと(=供給)が一致している。

ーーそう言えば02のギモンで〈成長する子〉と〈伸び悩む子〉の違いを聞いたときにも、京條さんは本人の意識の重要さについて触れていましたよね。

“京條P:成長が早い子は、自分の明確なビジョンが見えていて、やるべきことが分かっているだと思います。「自分がどうしたいのか」、「どうなりたいのか」という気持ちがはっきりしていると、あとはそこに向かって何をするか逆算するだけ。だから成長スピードが早いのだと思います。”

ーー〈需要と供給の一致〉って、みんな最初からできているものですか?

京條:それはマチマチだと思いますね。自然とできている人もいれば、狙ってやっている人もいるだろうし。でも少なからず意識しないと、需要と供給が一致するのは難しいかなと思います。

ーー制作側は、アーティストのどんなところを見て“売れている”って判断するんでしょう?

京條:たとえば、J−POPシーンの売れている基準と、ライブハウスシーンで活動している人たちの売れている基準は違うと思いますが、僕が日頃携わっているロックシーンの場合、分かりやすいところでいうとZEPPを埋めるというのが最低限のラインという気がします。

ーーZEPPは東京で2700人前後のキャパですよね。

京條:はい。それぐらいのファンを動員することが一つの目標、目指す地点ではあると思ってます。

ーー新人アーティストを発掘するとき、初めて会ったときから才能や人間性などわかることはある?

京條:ありますよ。キャラがはっきりしている人はわかりやすい。SiMのボーカルを初めてみたときは彼のキャラクターがはっきりわかりました。ポロシャツにネクタイで、メイクしてて。ビジュアルを見ただけでもロックしてるなって思いましたね。

ーー〈最初の印象〉と〈実際の実力〉は一致しているもの?

京條:彼は一致していましたね。それがより洗練されていった感じです。

ーー京條さんの場合、どんな場所で新人アーティストを見つけているのでしょうか?

京條:昔はライブハウスでしたけど、今はYouTubeとかで見つけることもあります。大手の方々はTikTokらしいです。

ーーライブハウスだと、対面で会える分人柄が分かりやすい気がしますが、映像を通してでもその人の才能ってわかるもの?

京條:曲のよさは聞けばわかるので、まず曲がよければその後ライブを必ず観に行く。ライブ見に行かないことには契約を決めることはないですね。

ーーキャラが立ってなくても、曲がよければ見込みあり?

京條:ありです。ただ、難しい部分があります。やっぱり本人の意識が低いと、難しい。

ーーどうしてですか?

京條:一番分かりやすいキャラクターって、ルックスとか“目に見えるもの”じゃないですか。「ピンクの頭になれ」って言っても、気持ちと見た目が一致しないといつかボロが出る。やらされていることは長続きしない。だから自分でキャラ作りができていない場合、自ら進んで取り組んでいかないと意味がないんです。


長期のプランを練ってゴールから逆算する

ーー売れているアーティストは長期のプランを持っているものですか?

京條:もちろん最初は持っていない人が多いと思いますよ。なのでそこは僕たちがマネジメントに入って「いつまでにどこまで目指そうか」、「じゃあこれをしていかなきゃいけないね」という話をしていきます。

ーーS×Sプロジェクトでいうと、昨年12月にメジャーデビューしたRunaarちゃんはS×Sに加わったことで磨きがかかっていった?

京條:彼女はちょうど今、長期のプランを作っている段階ですね。本人の意識とすべきことが一致してきたので、「じゃあ次はどこまで目指すか?」という先を見据える段階にきていると僕は思っています。

ーー売れるためには、目先のことだけじゃなく長期のプランを持つ(考える)ことが大切だと。

京條:そうです。でもこれは音楽だけに言えることだけでなく、仕事含め、すべての物事が長期プランからの逆算だと思ってます。たとえば夏休みの宿題だってある意味そうじゃないですか。

ーー確かに小学生にとっては1ヶ月先って“長期のプラン”かも。

京條:8月31日までに終わらせるためにはどうしていったらいいか。まぁ僕は別に大丈夫だろっつって最後の1週間で詰め込んで、結局終わらないみたいな感じだったんですけども(笑)。何事も計画性をもつことは大事だと思います。

ーー新人アーティスト発掘の場合、何年先くらいまで見据えているんでしょう?

京條:短くて2〜3年じゃないですかね。もちろんプランは毎年更新していきます。

ーーどんなふうに考えていくんですか?

京條:叩き台を僕らの方で作って本人に共有しつつ、「どうなりたい?」というヒアリングからはじめます。これまでの経験上、細かいところのズレはあっても大枠を外すことはなかったですね。アーティストはクリエイティブな人たちなので、僕らにはできない0から1を生み出す存在。なので、本人のやりたいことを拾い上げていって、1から10を僕たちがサポートしていきます。

ーーでも、先ほど「需要と供給の一致が売れる秘訣」という話があったように、仮に自分がやりたいことが明確でもあっても、それがファンが求めているものと一致しなければ、いわゆる“売れる”ところまではたどり着けないということですよね?

京條:うーん、そうですね…。やりたいことやって売れればそれは最高なんですけど、そうではないことも多々あると思うんです。時代の流れとかもあるので一概には言えないけれど。〈需要に供給するか〉、もしくは〈需要を作るのか〉。ウチの会社で言えばSiMやcoldrainは自分のやりたいことをメインにやってそこに需要を作っていったので、逆のことをしています。

ーーバンド自体がやりたいことをどんどんやって、そこにファンをつける、と。

京條:はい。でも、やり方は違えど〈需要に供給する〉のも〈需要を作る〉のも、どちらも戦略。いい悪いはないです。

ーーS×Sのメンバーも、長く売れ続けたいという想いがあるのであれば、〈自分の意思〉と〈需要〉を一致させていく作業が大事だと。

京條:そうです。僕たちが取り扱っているのは“人”なので、相手の気持ちを蔑ろにして作り上げたとしても結局はうまくいかないと思う。だから〈自分の意思〉と〈需要〉を一致させていくことが売れるための一つの方法。しかも、それを“前向き”にやる。


〈需要〉はどうやって見つけるのか?

ーーそもそも〈需要〉ってどうやって見つけるんですか?

京條:あくまで僕の場合ですけど。音楽にはいろいろなジャンルがありますよね。そこにポッカリ空いている部分があったりするんです。こういうことを人は求めているんじゃないかという部分がある。SiMやcoldrainがやっているラウドロックって、もともとやっている人がいなかった。海外にはちょこちょこ出てきていたけど、国内にはいなかったんです。

ーーどのタイミングでそれに気が付いたんですか?

京條:このときは先にcoldrainを見つけていたので、「ラウドロックをやる」という彼らの想いに僕が乗っかった。やっているバンドがいなかったのでここを攻めよう、と。それで、「じゃあどういうところにラウドロックを伝えていけばいいのか?」を考える作業をしていきました。

ーー具体的にどんなことをして伝えていったんでしょうか?

京條:パンクバンドと一緒にライブをたくさんやったんです。そのあとはヴィジュアル系バンドと。ヴィジュアル系もハードな音楽が多いので、ラウドロックと親和性がある。そういうのをやっていくと自然発生で若手バンドがコピーしはじめて、ラウドロックバンドが増えてシーンができる、みたいな。

ーーへー!なるほど。

京條:ライブハウスに来るお客さんたちに、まずはラウドロックを知ってもらうことが大事だと考えました。

ーーでも、それで成功するのは稀な気がしますけど…。

京條:確かに稀だと思います。なかなか難しいけど、ここがうまくいくと長くやれる気がしています。

ーーずばり、京條さんが思う売れるアーティスト・売れないアーティストの違いは?

京條:一概には言えないんですけど、根本にあるのは本人の意識の強さの違いじゃないですかね。「この仕事楽しいわ〜もっとやりたい!」って思えば伸びるだろうし、やらされて「こんなの嫌だな」と思っていたら成長しないだろうし。同じことやっていても、意識の差で結果は全然変わってくると思います。いかに楽しく思えるか。この差ではないでしょうか。


今回のまとめ

最後に、改めて今回のテーマ「売れているアーティストに共通していること」をまとめておくと、

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・〈自分の進むべき道〉、〈自分がどうあるべきか〉を理解している
・ファンが求めていること〈需要〉と、自分がすべきこと〈供給〉が一致している
・キャラクターがはっきりしている
・やらされているのではなく、自分がやりたいと思って取り組む
・意識を高く持つ

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*キャラ作りのコツについては、現役音楽プロデューサー直伝のやり方をこちらで詳しく紹介しています。

さて、次回は「育成していくうえでやってはいけないこと」について深掘りしていきます!

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