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スポーツ指導者が優先するのは、学生アスリートの成長 OR 結果?

スポーツ指導において
勝利至上主義(つまり結果のみの追求)の
弊害は声高に叫ばれていると思います。

しかしスポーツ現場を観察してみると
未だに結果ばかりに傾倒した指導が
散見されるのも事実ではないでしょうか。

結果を求めること自体を
全否定するつもりはありません。
しかし、青少年の成長のプロセスが
優先されないののであれば
これは由々しき事態であると
言わざるを得ません。

さて、スポーツ指導者が「学生の成長 OR 結果」
のどちらを優先するかは
白黒問題ではございません。
その時々の状況によって、指導者は
成長に「チューニング」が合っている時もあれば
結果にコミットする状況もあると思います。

それでは、どのような状況で
スポーツ指導者は「成長」や「勝利に」
チューニングを合わせるのでしょうか?

この問いに心理学的なアプローチをしたのが
今回紹介する韓国外国語大学校が行った研究です。

ポジティブ感情の拡張と構築理論
ポジティブ感情が高まると
広く物事を見る傾向が強まり
ネガティブ感情が高まると
近視眼的で狭い考え方になると
指摘します。

つまりストレスレベルが高い指導者は
目の前の勝利にばかり気を取られてしまい
青少年の成長を長い目で
見届けられなくなる可能性を指摘しているわけです。

そこで研究者が注目したのは以下の要因です。

スポーツ指導者のマインドフルネス
仕事上のストレス
青少年の成長志向
青少年の結果志向

マインドフルネスレベルが高い指導者は
ストレスのレベルが低く
その結果、青少年の成長に
よりチューニングが合うのではないか?
そんな仮説からスタートしたわけですね。

この調査に参加したのは
米国の高校で勤務する478名の
スポーツマネジャーでした。

日本の部活動を想像すると
馴染み深くないかもしれませんが
スポーツマネジャーというのは
その高校のスポーツプログラムを
マネジメントする人材で
補助金を獲得したり
高校の経営に貢献したりと
スポーツ指導以上の役割も担う
ビジネスマンとも言えます。

ちなみにこの方々は平均10年弱の
勤務歴があり、半分近くの高校では
16以上の部活動があるスポーツが
活発な高校でした。

結果発表!

マインドフルネスは仕事上のストレスレベルを下げる

これは想定の範囲内。
しかしトリッキーな点は
マインドフルネスが心理状態(State)
として測定されているところですかね。
どのようにマインドフルネスを上げるか
に関しての言及はありません。

マインドフルネスが高い指導者は、青少年の成長にチューニングを合わせる

この研究では、青少年の成長を
学術的な成長、良い人間としての成長
そして、キャリア上での成長の
3つの側面から測定しました。
マインドフルな指導者は
青少年の成功を長い目で見る傾向が
高まるってことですね。

ストレスレベルが上がると勝利至上主義傾向も高まる

勝ちにばかりこだわっている指導者は
もしかしたらストレスレベルが高いことが
原因なのかもしれません。

先ほどの話に戻りますが
マインドフルネスが非常に重要とは言うものの
どのようにマインドフルネスを高めるか
については言及がないので
その方法が模索する必要がありますね。
人によっては瞑想するのもありかもしません。

自分も含めて
指導する立場にいる人間は
以下にマインドフルに生きるか
そして、以下に自分を労って
ストレスが低いご機嫌な生活を心掛けるか
というような解釈もできる面白いエビデンスですね!

Lee, Y. H. (2020). The role of mindfulness and occupational stress in the goal orientations of development and winning. Sport Management Review, 23(4), 626-639.

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