見出し画像

【感想21】ミスト

 完全にインターネットミームと化してるせいで見るに見づらい心境だったけど、シネマシティでやるっていうのを知って駆け込んできた。

「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」でスティーブン・キングの世界を見事に映画化したフランク・ダラボン監督が、映像化不可能と言われていたキングの傑作中篇「霧」に挑んだ意欲作。激しい嵐が過ぎ去った町に不気味な深い霧が立ち込め、住民たちは身動きが取れなくなってしまう。やがて霧の中に潜んだ正体不明の生物が彼らを襲いはじめ……。原作とは異なる衝撃のラストが全米公開時に大きな話題を呼んだ。

映画.com『ミスト』より

見る前に見てほしい話

 オチは多分TwitterどころかSNS何かやってたら知ってて当然のノリで行けるでしょってぐらい周知されてる映画。
胸糞映画とか鬱映画とか、とにかくラストシーンの言及が多いからそういう映画っていうのはほとんどの人が知ってると思う。正直自分もそうでした。

 実際に見て思ったのは言われているラストシーンや宗教おばさんは勿論、根本として人間の心理面に怖さの比重を重くしている話なのがホラー映画として抜き出た怖さになってる。
これもパブサしちゃえばすぐ出てきそうな話ではあるんだけれど、実際に見てみると話の全体として怪物達が出てきた後の一息つくシーンが重い溜息しか出てこなくてかなり体力が持っていかれた。
しかも怪物たちが人をバッサバッサと蹂躙していくシーンでのスプラッター描写も全然チープじゃないせいで気が抜けない。

 アマプラでの配信が今月いっぱいまでっぽいのと、せっかくなら劇場で見てほしいので立川とかいう7割ぐらいの関東在住者は僻地だと思ってる楽園にあるシネマシティの音と映像がデカい劇場で堪能できるのは今週中までなのでとにかく見に行ってほしい。


見た後に見てほしい話

 この映画で一番きつかったなと思ったのはスーパーにいる人物のほとんどが現実的な思考で動いてたところ。
こういう話だと楽観的に「助けが来てくれるまで待ちましょうよ!」と絶叫し始める正統派ヒーローみたいな人がいるはずだけれど、基本「いつ霧が晴れるかわからないし、一生籠城することもあり得なくはない」というスタンスが共通認識で進んでいく。流石に襲われているけれどまだ生きている人は見放しはしなかったり自殺を選ぶことはさせなかったりと、非情には100%振りきれていないところもフィクションの匂いを消していて妙な現実っぽさを感じてしまった。

 また怪物がいる”かも”という状況では外へ助けを求めに行くやや楽観的な派閥に、これまた有名な神罰だと声を大にして唱え続ける宗教おばさんの派閥と、主人公たちにとっても自分たちのスタンスを正当化するのに十分なぐらい周りがめちゃくちゃ。
限界を感じて自殺する人は何度も出てくるし、残りは漏れなくおばさんの信徒になってしまうのも恐怖心を煽ってくるんだけれど、そんな中から脱出せざるを得ない心情にまで追い込まれる主人公サイドのしんどさが一番きつかった。
3日間も経ってない密室で、惨い死に方をする確率が数倍に膨れ上がる外に逃げ出す以外の選択肢を絶たれる様子を見せられる過程は1時間半に及ぶので、車が出てからラストシーンまでの間のほうが肩の力が抜けるぐらい息苦しさを感じます。そのラストシーンまでは穏やかさを被った鬼畜シーンの連続ではあるけれど...。

 あと結構好きなのはエンドクレジットで劇伴が一切流れずに、軍の戦車やヘリが移動している様子が伝わる音声が流れ続ける所ですね。途中までの絶望感が嘘のように淡々と事態の収束に向かっていることを音だけで伝えてくるところは作中でも一二を争う残酷さがあります。


 と、『ミッドサマー』のように明らかに残酷な描写が出たら逆に安心してしまうような、怪物が出てくるホラーなのに怪物が出ていない時間のほうが怖いホラーという異様さは名作にふさわしいです。
ファスト映画のような感じで搔い摘んだ情報だけじゃもったいない、面白い要素は序盤中盤漏れなくあるので2時間手持無沙汰になった時には気楽に見てほしいです。

この記事が参加している募集

#映画感想文

68,192件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?