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言語学者だからって外国語が得意なわけじゃない。

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Thun 湖と牛が大好きな、スイスラボ所属の言語学者による、言語学小咄。 日々の雑感を、言語学に(むりやり)絡めながら綴る予定です。
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#リトアニア語

「好き」の表し方

こんにちは。 Yamayoyamです。 今日もスイスラボの言語学者のブログにお越しいただきありがとうございます。 今回は、リトアニア語とドイツ語を勉強しながら、「面白いな」と思った構文について書きたいと思います。 リトアニア語の授業で、「好き」というには二種類の言い方があると習いました。 どちらも「私は言語学が好きです」という意味ですが、構文が違います。 一つ目では、言語学が好きな「私」が文の主語になっていて、主格です。それに「一致」している動詞も一人称単数形で、好かれ

蜜のはなし

こんにちは。スイスラボの言語学者 Yamayoyam です。 私はひょんなことからリトアニア語の歴史に興味を持って、大学院の修士課程からリトアニア語の勉強を始めました。今回は、リトアニア語と日本語が古くから共有していた「みつ」という言葉について、思い出話とともに綴ろうと思います。 学部3回生のときに言語学研究室への配属を選び、印欧語比較歴史言語学というのに出会いました。地理的にある程度つながりのある地域で、体系的な類似性が相互に観察できる言語たちがあります。ヨーロッパで古

にんじん古今西北

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 あちこちの記事で「ストックホルム大学のバルト語学科で勉強した」と書き散らしてきたので、もうおなじみかも。Yamayoyam はかつてスウェーデンのストックホルムに住んでいました。 スウェーデンはバルト海をはさんでリトアニアのお隣さん。ですから、スウェーデン語は北ゲルマン語、リトアニア語はバルト語で語派は違いますけど、昔から交流が盛んでした。 そのせいなのか、ストックホルムのスーパーで買い物中に「おや?」と思うことがたまにあり

お茶のはなしの続き~リトアニア語ではお茶はなぜか arbata

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 前回のブログで、私のお茶の思い出をしました。私の思い出話にお付き合いくださった方々、ありがとうございました。未だという方、こちらにて↓お付き合いいただけると Yamayoyam 的に嬉しゅうございます。 その思い出話の最後のほうで、「リトアニア語では『お茶』は何故か arbataっていうんだよね」とちょっとボヤきました。 今回は、このボヤキを拾って膨らませていきたいと思います。 前回の記事でも見た通り、お茶はもともと中

リトアニアの歴史から~「本の密輸請負人」

みなさん、こんにちは。 Yamayoyamです。 先日リトアニアについての勇敢な記事を見つけました。 リトアニアが強権をかざす中国から離れ、台湾と連帯することを選んだという内容です(※1)。 巨大な中国マーケット・資本・軍事力を考えると、勇気ある決断です。 この勇気はどこから?という疑問の答えとして、記事の中で ことが挙げられています。 これを読みながら、ロシア帝国時代の「knygnešys(本の密輸請負人)」のことを私は思い出しました。リトアニアの向こう見ずに見え

リトアニア語の Kalėdos「クリスマス」について調べたら、世知辛い妄想が暴走したよ (´・ω・`)

もう~い~くつ寝ると~クリスマス~🎵 みなさんこんにちは。 スイスラボのYamayoyamです。 クリスマスが近づいて参りました。皆さん、着々と準備進んでいますか~? 季節柄、今回はリトアニア語のクリスマス「kalėdos」について考えたいと思います。 実は今まで kalėdos「クリスマス」について、あまり調べたことがありませんでした。良い機会が巡ってきたと思い、今回調べてみました。 まずは、文法事項から。リトアニア語 kalėdos「クリスマス」は、実は複数形。

スウェーデン語・ドイツ語の Gift の続きで、バルト語の「結婚」にまつわる小咄を。

こんにちは。スイスラボの言語学者 Yamayoyam です。 前回の言語学小咄は、「結婚」に縁のある言葉についてでした。お楽しみいただけたでしょうか?今回はそのつながりで、バルト語を題材にした小咄をついに披露したいと思います。 バルト語には gift 関連の、クスリと笑えそうな単語が残念ながらみあたりません。なのでシンプルに「結婚する」の表現について書くことにします。バルト語では、男性と女性で「結婚する」に違う単語を使います。今でこそニュートラルに「結婚する」をよく使いま