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#12 石岡 佐保里さん 福祉領域キャリアコンサルタント,社会福祉士,産業カウンセラー

高校生の時のボランティアで福祉に興味を持ち、養護教諭や専業主婦として過ごした期間を経て、現在はキャリアコンサルタント/社会福祉士として活動する石岡さん。

パートナーの仕事への帯同、3人のお子さんの子育てをしながら過ごす日々の中、自分自身のキャリアについては蓋をしていた期間もあったそうです。そんな時に背中を押してくれたのは娘さんの言葉でした。その時々のエピソードや出会いに影響を受けながら石岡さん自身もしなやかに変化してきたお話を伺いました。

高校生の時のボランティアで得た「環境」への視点

福祉に興味をもったきっかけは、高校生の時の福祉ボランティアで重症心身障害児の施設に行ったことがきっかけです。

水頭症のお子さんがボランティアの私たちのかかわりをすごく喜んでくれたのをよく覚えています。笑顔で楽しくコミュニケーションをとることができ、あたたかな印象が残った一方、大きなクエスチョンにも気づく機会になりました。

その施設は、部屋の中でもトイレの匂いがすごかったんです。自分で這ってでも自力で排泄に行けるように、畳に穴が開いて蓋がしてあるような環境でした。そういった施設が昔はあったんですね。

それがとても衝撃的で、「トイレに行きたい時に自分で行ける」ということが前提にあったとしても、環境が整わないってどういうことなんだろう?と。

障害があってもなくても、心地よく過ごしたい環境って一緒じゃないのか。障害の有無、性別、年齢も問わずに、変わらぬ生活が送れるような社会になればいいのにと、その時すごく強く思ったんです。

その考え方は今も変わっていません。このあり方が、私のソーシャルワーカーとしての根底にあります。

福祉に特化してやっていきたい

今は鹿児島の離島に住んでいて、オンライン業務を中心に関西圏の求職者支援、プラットホームでの個別相談業務、職業訓練にかかわるキャリアコンサルティングなどを行っています。

新卒時には臨床検査センターへ入職して、終日検体(血液)と向き合う検査業務に就いたのですが、「黙々とする仕事よりも人と関わる仕事が向いている」という自身の適性に気づき、持っていた資格を活かして養護教諭へ転職しました。

同僚との結婚を機に専業主婦の道へ進んでからは、家庭第一主義で育児に専念していたのですが、イキイキと働く同世代の友人達をみて社会からの孤立感を覚えるようにもなっていったんです。

それは「今できることは何か、自分は何をしたいのか、どうありたいのか」という、人生の大きなテーマに向き合うきっかけになりました。

自分自身に向き合う中で、高校の時のボランティアが原点となり20代の前半から後半にかけて「福祉領域を体系的に学びたい」と10カ年計画を立て、3人の子どもの妊娠期間を活用して学び、資格も取得しました。

20代で興味を持っていた働く人のメンタルヘルスのために産業カウンセラー、パートで働いていた現場で必要だと感じた介護福祉士、社会福祉士などなどです。

子育てや引越しなどの制約はありつつも、自分の仕事について「福祉の軸はぶらさない」という意思はすごくありましたね。

「やってみたらいいんじゃない?」

一方で、その時の私には「妻であり、母親は、やれる範囲の中でしかお仕事しちゃいけない」というバイアスがありました。パートという働き方で仕事を選んできた期間が長かったです。

結婚して初めて正社員として働くことになったのは、ある医療法人でした。機能訓練特化型のデイサービス新規立ち上げの管理者という人事をぽんっと打診されたんです。

まだ入職して2年目で、自分には何もないと思っていた私にいきなり組織からの期待が降ってきて、1週間返事ができませんでした。本当に私自身が自分のキャリアに揺れて、何も決められない自分に戸惑いました。

そんな私の姿を見て、当時小学生だった娘が

「断ったら断ったで、いづらくなるんじゃない?」
「やってみたらいいじゃん」

と背中を押してくれたんです。

その時の私は、母親が仕事をする=子供たちに寂しい思いをさせるんじゃないかとか、自分のキャパシティを超えるお仕事をするべきではないとか、子どもたちが帰ってくる時間には家にいなければならないとか、いろんなバイアスがあったわけです。

娘さんとの時間


娘の言葉はすごくシンプルでした。私が働いていることを「嬉しくて、誇らしい」といつも言っていたんですよね。私が仕事をしてると、生き生きしている。それが伝わっていたんだなと思います。

「女性のキャリア」に関心が深まったエピソードがもう1つあります。

夫が管理職になった際に、管理職の妻と言われる人たちとの交流が増えました。その中にいらっしゃる、自分よりも年上の女性の在り方が「 妻としてのステータスを重きに置いている人」と、「自分のキャリアを大切にしながら生きている人」の双方が見えて、私は自分のキャリアをしっかり考えながら自立して生きてらっしゃる方たちをすごく魅力的に感じたんです。

女性が子育てなどで金銭面で自立することを一旦横に置く時期があったとしても、自信を持って生活して、自分の軸となるものをしっかり確立していく年の重ね方は大切だと、自分自身のキャリアを通しても実感しています。


キャリアと福祉のよろづや

入社2年目で管理者となり、立ち上げたデイサービスが1年で軌道にのった頃、今度は公共職業訓練で介護人材の育成にかかわることになりました。

自分自身のキャリアについて向き合ってきたことや、福祉業界で働く人の背景を一緒に見つめられる自分でありたいと思うようになり、キャリアコンサルタントを取得したのもこの頃です。

職業訓練の講師をしていたころ

職業訓練では、学歴も年齢も性別も、本当に人それぞれ背景が違う生徒さんとかかわったことで、福祉の現場で働く人の、多様な背景をみつめられる自分でありたいと強く思うようになりました。私の知らない業界がどれだけ多いんだろうということを、突きつけられた経験にもなったんです。

現在行っている求職者支援では転職を検討するための初回面談を担当していますが、求職支援を通して社会や他業界についても理解を深めたいと思っています。

そして今後は、福祉分野で働く人がいきいきと働けるような組織への介入や、福祉の現場で働く方達が自主的にキャリア(自身の仕事のことだけでなくライフの部分も絡めて在りたい姿や方向性)を考えていけるように、組織を中心に環境整備を行えるようにセルフキャリアドッグの導入に尽力していきたいです。

そこには、個人支援と組織開発支援の両面からアプローチ可能なキャリアコンサルタントの知識やスキルが活きると考えています。

私は、自分のことを「キャリアと福祉のよろずや」と自己紹介しています。「ソーシャルワーク」と「キャリアコンサルタント」どちらも自分自身のことを説明するときに必要で、一方だけを選ぶことは難しいんです。

福祉の領域で細く長く働く中で感じてきた福祉業界への課題感と私自身がキャリアを模索してきたことは、私自身のことだけではなく、福祉で働くさまざまな人が抱えている課題でありジレンマだと思っています。

これからの活動としては、福祉の組織という環境への介入、そこで働く支援者の方へのかかわり方を模索しています。

今年(2023年)の1月からは、福祉領域へのセルフキャリアドッグ導入に関心のある支援者で話す場づくりも始めました。想い描いているビジョンの実現に向けて実際にアクセスしていきたいというのが、数十年かけて積み重なった今の私のキャリアです。


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▽石岡さんが開催されている福祉領域へセルフキャリアドッグ導入のアクション  次回6/25㈰20時~


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