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出張カメラマンの集客の歴史(過去24年前から)

これからフリーランスでカメラマンをしたいと思っている人にとっては多少役に立つ内容ではないかと思って記事を投稿します。

カメラマンを始めるとなった時の集客について、2000年ごろからカメラマンを始めた人の話しになりますので、今ならどうかという視点と共にお話ししてみたいと思います。


ホテルマン時代に婚礼担当を数百組経験した経験があるということと、写真やビデオの撮影を趣味でしていた経験があり、結婚式の撮影ならできるだろうということで婚礼カメラマンとしてフリーランスで商売を始めました。

カメラマンを開業するとなると(自分Ver2000年)

2000年当時、おそらくほぼ誰も出張カメラマンというスタイルの人は居なかったように記憶しています。そもそもgoogleのサービス開始が2000年でネットがまだ黎明期だったのもありますがネット検索でも結婚式出張撮影で出てくるのは全国規模で見てもほんの数社、数人が出張撮影で検索結果に出てくるかなという時代でした。そういう状況でしたので、地域によっては全く出張カメラマンというものが認知どころか誰もサービス提供をしておらず、それならウェブサイトを作って撮影を商売にしてみようと思ったのがカメラマンを始めるスタートラインです。敵がほぼ全く居ないジャンルの商売をフリーランスで始めた形になります。当時25歳でした。

それまでに撮影した友達の結婚式の写真を撮影例として掲載をするウェブサイトを立ち上げてから数ヶ月で東京、大阪、京都からの撮影依頼が入ってきました。新しいもの好きな都会の人は敏感に反応してくれたのです。また、料金的にも当時結婚式の撮影は結婚式場からのワンプライスでその金額もホテル業時代に把握していたので当然それよりも安く提供して集客は順調でした。だって敵が居ないジャンルでしたから。それこそ自宅に一眼レフカメラや業務用のビデオカメラを持っている人など少数でしたので撮影は業者に頼むということが当たり前で、かつできれば安くしたいという新郎新婦さんのニーズに見事にマッチしたのがよかったのかなと思います。もちろん最初から順調なわけではなく、初年度は5件くらい、2年目で40件くらい、3年目で50件を越えたくらいまでは稼ぎも少なかったのでアルバイトもしながら週末に撮影をして平日の夜に仕上げの作業をしていました。

さらには当時から写真もビデオも同時にしていたのは今となっては大きかったと思います。写真だけで食える自信も動画だけで食える自信もなかったのと、両方とも好きでカメラを持っていたので、両方をサービスとして提供して現場で経験を積んでいくことができましたが、世の中は写真カメラマンとビデオグラファーの間には結構大きな垣根があったのも、逆に幸いでした。嘘みたいな本当の話ですが写真も動画もやっているカメラマンはほぼ皆無だったのです。極めつけは写真はフィルムからデジタルへ、ビデオはテープからメディアへ、そしてアナログからデジタルへと変遷を繰り返したタイミングで、知識も経験も未熟だった私は固定観念にとらわれること無く新しいものにすぐに飛びつけたのも時代の変化の波に上手く乗ることができたというのも良かったのかもしれません。

そして当時はYoutubeなどの動画配信サービスもありませんでした。ウェブサイトを公開するレンタルサーバーも多くても100MB等の容量の小さなサービスしか無く、当時の動画形式の主流であったwmv形式のファイルをサンプルで見てもらえる環境を作るために、自宅にサーバーを立ててDynamicドメインを使って自宅から直接動画を配信していたのも、リアルタイムに参考動画を見れるという事ができるお客様にとっては選んで頂きやすい環境が作れていたのだと思います。懐かしいDynamicDoサービス

カメラマンを開業するとなると(現代Ver)

ここまでで、今の時代だとどうでしょうか。
現在、出張カメラマンというのは2000年当時とは比べ物にならないほど多く存在します。平日は会社員をして、週末にマッチングサービスや友達からのツテなどを使って好きな写真の仕事をする方もかなり多いと感じています。マッチングサービス自体もかなりの数があり、そんな中でいち個人が自分の力だけでイチから集客をしようと思うと、相当のカメラの腕前か相当の発信力、知識が無いとなかなか普通の会社員程度まで稼げるようなジャンルの商売では無いように思います。マッチングサービス自体も中間マージンを取られてしまいますので、それに依存するカメラマンが多くなればなるほど、マッチングサービス自体が力を大きく伸ばす事になり、余計に個人レベルで開業をして食べれるようになる、というのは、少なくともライバルがほぼ居なかった私の時代よりはかなりハードルが高くなっていると感じます。

また、現在サーバーサービスは数十GB単位で提供され、それどころか自分のサイトが無くてもYoutubeに無制限に動画を上げることができ、Instagramで写真の紹介ができて、Xやこのnoteで日記を付けることもできる、それこそインターネット環境があれば老若男女かかわらず誰でも利用できるサービスが簡単に手に入るので、発信のしやすさは昔より格段に上がり、それと比例して圧倒的な数のライバルの量によって集客の難しさも格段に上がっているのが現状ではないかと思います。

ウェブサイト経由の安定した集客からSNS全盛期の訪れ(自分Ver)

インターネット検索をして、気になるウェブサイトを見つけて、情報をくまなく精査して、自分に見合ったサービスかどうかを検討して依頼をしてくれる人がほとんどだった2010年頃までの集客の流れでしたが、FacebookやInstagramが流行りだした頃からは1枚の写真と、その写真に込めた想いを綴ることで集客ができるようになっていきました。

元々自身のウェブサイトで撮影当日の流れ、撮影する枚数、元ホテルマンという経験からの式場との折衝における強みなどを細かく記載して、撮影に挑む真剣さ、という挑む姿勢などはほとんど売り文句にはできなくっていき、一枚の写真と、発言力、発信力が集客の要に変わっていきます。

こうした状況になってくると、現場の経験値が無くても、現場対応力がなくても、1枚の感動的な写真にユーザーは心打たれて依頼をしてくれるようになります。結果的に現場馴れをしていないカメラマンが持ち込みカメラマンで結婚式場へ入ってくるようになり、会場側は挙式の段取り流れもわからないカメラマンが来ることで面倒が増えることになります。その結果、持ち込みカメラマン禁止という制度が始まることになっていきました。持ち込みできないなんて会場の一方的な都合でけしからんという考えもありますが、元々は時間を無視して撮影を続ける、大事な場面で進行を止める、新郎新婦の希望だからと横柄な態度を取る、神前式では祝詞奏上を無視する、などの会場進行の妨げになる行為が身に余る事態が増えた結果の持ち込み制限というのが実態です。世の中的には結婚式場の利益の確保ですとか専属業者の売上担保だとか色々な事が書かれていたりしますが、会場専属も持ち込み業者としても両方経験があるので、間違いなく面倒が増えたから、に他なりません。結果的に会場様が損をしないシステムになった、というのは事実ではありますが。

ホテルマンからカメラマンになった私としては、会場での立ち振舞、進行を妨げない範囲で新郎新婦様に喜んでいただく写真を撮影し、会場様にも良いカメラマンだったと思って頂けるように勤めて活動していましたが、そもそも会場側はいちいち個別にカメラマンを把握することは不可能で、持ち込み業者という一括りで見ざるを得ませんので風当たりは強くなる一方でしたので、撮影に入る際はまず会場との緊張感の緩和からスタートしないといけなくなり、結婚式の出張カメラマンと言う業種に違和感を感じ始めたのはSNSの発展と同じタイミングで、2010年頃から結婚式、婚礼以外の撮影形態を模索する事になります。

SNS全盛がスタートの場合の集客の方法(現代Ver)

そもそも現状個人がウェブサイトを立ち上げても、検索結果ではSNSやマッチングサービスに勝つには相当な対策の費用を注ぎ込まないと叶いませんので、結果的に集客の方法としては既存のサービス(Instagramやマッチングサービス)の活用が開業する場合の現実的な手段となりますが、そもそも論で相当数のカメラマンはすでに存在するので、ゼロスタートで始めてもなかなか未知のユーザーからの集客は難しいかもしれません。可能性としは自分の周りの友人知人などから撮影をさせてもらうところからスタートして、撮影の技術を高めて行き成果物を増やしていく。同時進行でマッチングサービス等で新規の顧客の獲得を目指す等、複数のサービスを利用しながら経験を積むのが現実の行動方法なのかと想像します。経験の数が物を言う撮影業ですが、数をこなせない状態からのスタートなので、自分なりに色々と業務以外でも経験を積むための努力も必要になります。

SNSやマッチングサービスで活躍するカメラマンとは戦わない(自分Ver)

SNSでキラキラした言葉とともに表現される1枚の写真や、結婚式や七五三、家族やイベントの記念撮影をしてくれる多くのカメラマンが登録しているマッチングサービスと戦うことは最初から諦めました。キラキラ言葉を並べるのは性に合わず、どういうカメラマンかを吟味してもらいたかったし、マッチングサービスにお布施をするのも断固として拒否したいし、そもそもそれらと戦っても、自分の本来の想い、理念とは違う言葉を並べなければいけなかったり、マッチングサイトには資金力で勝てるわけもありません。そうなるとtoCの婚礼撮影からの脱却という結論になりました。同じ土俵で戦っても資金力があるサービスが勝つのが当然です。目立ったものが勝ちます。そのためには広告宣伝費を大量に使わないといけませんが、そんな余裕もありませんでした。

結婚式の撮影は一期一会です。当日の撮影をして納品をすれば業務としては一旦終了します。気に入っていただいた新郎新婦様からお友達をご紹介していただく事も多々ありましたが、やはり何度撮影しても一期一会です。私は過去3,000組ほどの婚礼をご一緒して現場の経験値は自分で言うのもかなり幅広く対応ができるほうだと思いますが、仕事をどれだけこなしても新郎新婦様は一生に一度の行事で、言い方は悪いですが、毎回新規のお客様に毎回同じ質問、同じ希望要望を頂いて毎回同じお返事をします。若い間は年齢も近く寄り添って打ち合わせや撮影も楽しく行えましたが、40歳も過ぎてくるとさすがにだんたん同じ事を言い続けなければならない状況に疲れてきたので、お客様と一緒に経験値が上がっていける撮影をしたいと強く思うようになりました。そこでtoBへの変革、企業様を顧客とした撮影に目を向けました。

その時に始めたことですが、そんな難しいことはしていません。婚礼のウェブサイトとは別に企業様向け専門のサイトを立ち上げただけです。これも嘘みたいですが企業向けの撮影専門というサービスも当時は検索でほぼ引っかから無かったのです。少ないながらもすでにお取引をさせて頂いていた企業様で撮影をした成果物をサンプルにして、撮影サービスの紹介をしていく形を取りました。

実のところ、上のサイトは現在でも月に60PVくらいしかありません。我ながらびっくりするほど見ている人は少ないです。個人撮影、婚礼のサイトは今でも月に300PVくらいあります。その差は歴然です。でも年間で仮に10件の撮影ご依頼を新規で頂いて、婚礼の場合だと10年で100組の撮影で100回の撮影で終わりますが、企業様はきちんとご納得頂ける撮影を続ければ10年で取引先が100社に増えます。この100社は会社や団体様によって年に1回だったり年に20回だったりと撮影回数や内容は様々ですが、1回で撮影が終わることはありません。5年ぶりに依頼が来る、なんていうこともざらにあります。

そして何度も撮影をすることによって、お互いの経験値も技術も、人としての付き合いも積み上がっていき、回数を重ねるごとに信頼感は上がっていきます。もちろん大前提で人としての技術はあって当然です。カメラマンである前に人としての技術は以下の記事でまとめています。

そうしてお取引先の企業や団体様を増やしていけば、集客をする必要が無くなっていきます。自分を表に出してキラキラする必要も無く、眼の前のお客様と向き合っていれば、仕事は後から入ってきます。100社もあればそこから新規のご紹介も頂けるので、あとは毎日カメラマンとして撮影を続けるだけの日々を送ることができるようになります。ここが現在の私の立ち位置です。ちなみに現在は制作会社や代理店様からの依頼を除いて300社を少しこえる企業団体、官公庁様との直接的なお付き合いをさせて頂いています。

SNSやマッチングサービスと戦わない(現代Ver)

今の時代にカメラマンとしてSNSやマッチングサービスと戦わない方法とし
て考えられるのはいくつかありそうですが実感として多いと感じるのは「ついでカメラマン」です。ついでというと聞こえが悪いかもしれませんが、写真も取れるけどデザインも出来る、ブランディングやディレクションもできると言ったマルチな人になることが他のカメラマンと戦わない方法のひとつになるのかなと感じています。カメラマンという一本道を突っ走るのではなく、たくさんのレールを引いておいて色々な商売を試みながら、一番自分がベストだと思うものをメインの商売にしていけば、自分のやりたいことにもっとも早く近づける方法なのかもしれません。今こういったスタイルのフォトグラファーと呼ばれる人は多くなっているように感じます。ただし、この場合はやはりカメラマンだけで食べているとは言い難く、やはり現代ではカメラマン一本だけで食べていく事で成功するのはかなり至難のワザかもしれないなと感じるのが本音です。

また、私はカメラマン一本で商売をしていいますので、それこそ専業でブランディングやディレクターさん、デザイナーさんとのお付き合いをしていますが、やはり餅は餅屋で、それ専業にしている人のプロ意識と実際の成果物は素晴らしいものがあります。マルチに色々することも方法ではありますが、あまり長きにわたってしまうと、全部中途半端になりかねませんので、早めに一本に絞るほうが良いような気もしています。ただしこれは出来る人はできるのかもしれないし、答えはわかりません。

時代感にマッチしたサービスを(あとがき)

人様に教えたりできるほどの知識も自信もありませんが、上記のようにたまたま24年前からほとんど誰もやっていなかった出張撮影という事を始めて、そこに人やサービスが集まってきてくれたから、なんとかフリーランスの出張カメラマンとして25年ほど走ってきた自分の経験から商売として継続させるために必要で間違いの無いことは

「誰もやっていないことをやる」もしくは「ほとんどやっている人が居ないことをやる」

私の経験上ではこれに尽きます。

今はフリーランスの出張カメラマンは炭酸水の泡のようにあふれるほどに日本中に居ます。そんな中で独自性やオリジナリティを出して、一歩頭を飛び出して成功するというのはなかなかの試練にわざわざ自ら足を突っ込むようなものです。

カメラマン、フォトグラファー、写真家、色々な呼び名があり、すでに現代では様々なジャンルの撮影があります。

たとえば学校写真なら、それは安定して撮影に向かうことができる事業規模の地域の写真館、写真スタジオが入札や相見積で獲得する場所ですので、イチから始めるカメラマンがそこへ入り込むのは難しいです。

たとえば婚礼カメラマンなら、現状は会場と提携をしている専属の撮影業者さんが居ますので、そこと仕事を取り合う戦いをしなければなりません。

もしくはフリーランスで始める時点である程度の顧客を確保する独立の仕方もあるかもしれません。地元の写真館やスタジオ、結婚式専門の撮影会社さんなどに就職をして、お客さんと個人的に仲良くなって、最低200人くらいのお客さんとつながった状態で独立すれば、家族の行事の撮影を独立後に依頼してもらえる可能性は高いです。

ただし、上に書いた内容は全て独立する時点で敵を作ることになります。学校写真なら近隣の写真館、会場提携なら元々提携している業者さん、社員カメラマンから顧客を引き抜いて独立。全て元々あったものを奪うという行為です。少なからず最初から敵を作るという行為は個人的には好みではありませんので、私個人としてはやりたくない方法です。関わった誰か何かから恨みをかうような事業はあまり好ましいものではないと個人的には感じます。

また、出張カメラマンなら、現在は相当数のマッチングサービスがありサービス提供サイトが中間マージンを取ってサービスを提供していますので、それに甘んじてサービスを利用して集客をしてもらうのか、それとも独自でサービスを開始するのかですが、これも高い壁が立ちはだかっています。

が、その中で独自性を見いだせる業態を見つけてそれを追求できれば、カメラマンとして食べていける環境が手に入るのかもしれません。しかしながらそもそも現状のようなサービスが過剰に溢れている状況で独自性を出せる撮影スタイルを見つけるというのは、これまた大変な知識とひらめきが必要なのかなと感じるのが正直なところです。

もしくは収入の核となる本業ありきで撮影は週末の趣味の延長で出張カメランをする、というのもひとつの手だと思います。数年続けて事業として成り立ちそうなくらいまで顧客が付けば独立の道が見えてくるかもしれません。

入口はものすごく大きいけれどその道は険しく細く大渋滞しているのが今の時代のフリーランスカメラマンのスタートラインで、自分で入口を掘って誰も居ない道を制限速度無しで突っ走れたのが私の時代でした。

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