2023年4月1日より道路交通法が改正され、自転車に乗る時にヘルメットを着用することが義務付けられました。ヘルメット着用が義務化された背景と義務化することでどうなるのか、また企業はどのように対処すべきなのかまとめます。
ヘルメット着用義務化の内容は?
まず最初に、「ヘルメット着用の義務化」で何がどう変わったのか見ていきましょう。今回変更になったのは道路交通法で、「自転車の運転者等の遵守事項」が追加されました。以下に引用しますので、目を通してください。
ニュースなどでもたびたび「努力義務」ということが挙げられていますが、条文でも「努めなければならない」として、罰則規定も特に設けられていません。
ヘルメット着用義務化の背景
ヘルメット着用義務化の背景として、①交通事故全体に占める自転車事故の割合があがったこと②ヘルメット着用と非着用でその死亡率に有意な差が認められたことの2点が挙げられます。以下にその内容を引用します。
自動車(4輪車)の自動ブレーキシステムが新車で義務化されたり、事業者におけるアルコールチェックが義務化されるなど自動車事故の件数は大きく減りました。それに対し件数の減少がみられない自転車事故の比率があがってしまうことは、いわば自然の流れといえます。そこにメスが入った形となっています。
ヘルメットの役割と効果
ヘルメットをかぶった場合、事故を起こしても死亡事故を防げるかというとそういうわけでもありません。日本ヘルメット工業会が、工業用ヘルメットでどのくらいの衝撃が緩和できるか記載していましたので、以下に引用します。
5kgの物体を1m落下させた場合、重力加速度を加味しておおよそ時速16kmに相当します。一方でママチャリの平均的な速度が15kmと言われています。速度だけで一概に比較できるわけではありませんが、頭部から突っ込んでしまった場合、転倒しなくても命を落とすリスクがあります。
その衝撃を1/10に和らげることができると言われれば、ヘルメットの重要性が理解できると思います。
また、法改正がこの記事を書くきっかけとなったように、多くの人の意識を自転車の事故の危険性に向けることができました。最近では少なくなりましたが法施行前はテレビでも大々的に取り上げており多くの人の交通安全意識の向上に役に立ちました。
努力義務にとどまった理由
さて、自転車事故の際に高確率で死亡事故が防げるのであれば、なぜ努力義務ではなく強制適用にしなかったのでしょうか?
これはイギリスでの世論になりますが、ヘルメットの強制を行うことで自転車利用者が減ることを懸念した声も多いようです。また、車との衝突事故を考えた際に、命を守る保証が得られないこともヘルメット着用に対して強硬的な姿勢を打ち出せない原因として挙げられるのではないでしょうか?
確かにバイクのヘルメットと比べて、自転車のヘルメットは軽さもさることながら硬度の面でも疑問を感じてしまうことがあります。勢いよくぶつかればヘルメットが割れるんだろうな・・・また路上を滑ればバイク用ヘルメットは無事でも自転車用ヘルメットは削れて壊れるではないかと感じることもあります。
ヘルメットの着用がどうというよりも、自転車専用レーンの拡充による事故の起きない街づくりが優先されるように感じます。
法改正に見る交通安全の難しさ
個人的な見解ですが、今回のヘルメット着用義務化により議論を起こすことが目的だったのではと考えてしまいます。
今回の法改正を機に、多くの警察がPR活動を活性化させています。
また、遺族会や交通事故被害者の会なども多く声をあげており、悲惨な事故を繰り返さないように望まれています。
法令が立て続けに改正され、自転車の賠償責任保険加入や、ヘルメット着用などが義務化されました。
誰でも手軽に乗れる自転車ですが、実は多くの危険をはらんでいます。そのことを認識させることも難しく(たいていの人は情報発信しても耳を傾けない)、本当に免許制度が必要なのではないかと考えてしまいます。
免許制度とするには事故の被害規模が小さい(法律による自転車に乗る権利を侵害するには得られる公益が少なすぎる)こともあり、道路交通法のみを盾に強硬的な姿勢を通すのは難しい事でしょう。
自転車に対する赤切符の発行を増やしている記事を目にする機会が増えていますので、行政側も本格的にテコ入れを考えているように見受けられます。
ただただ、「自分と周りの人に配慮した運転をしましょう」というはなしだけで済むのですが、徹底させることは難しいでしょう。
今後も自転車関連法案はどんどん厳しく、そして複雑化していくものと思われます。
続報があればまたノートを書く予定です。