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確率という名の夢物語

エンドロールが流れ終わり、シアター10の扉を抜けたウサギとカメは、未知の惑星から帰還した宇宙飛行士の気分だった。「デューン 砂の惑星」に描かれていた壮大な宇宙の物語は、地球とは異なる星の生命体を二人の脳裏に思い描かせていた。

ウサギはゆっくりと歩きながら、春の星空を見上げた。「地球以外にも生命体がいるかもしれない。そう考えると、星がいつもと違って見えるわ」と彼女は呟いた。隣を歩いていたカメも、彼女の視線の先を見つめた。「他の星に地球外生命体が存在する確率は計算できるらしい。ドレイクの方程式というのが有名だね。でも、生命体がいる可能性はかなり少ないみたいだよ」とカメは応えた。

二人はしばらく黙って歩いていたが、ふとカメは思い出したようにウサギに向き直り、笑みを浮かべた。「実はドレイクの方程式には興味深い話があるんだ。あるロンドンの男性が自分が運命の人に出会う確率をこの方程式で計算したんだ。どんな結果になったと思う?」

ウサギは分からないと、小さく首を振った。カメは話を続けた。「なんと、運命の人に出会う確率は10億分の34だ。ロンドンにいる400万人の女性の中から、たった26人だけが該当するという計算結果になったんだ。その確率は、天の川に存在すると計算された地球外生命体の数よりも少ないんだよ」

「それは、なんとも笑えない話ね」ウサギは小さく笑った。「でも、その話にはさらに続きがある。その男性は26人のうちの1人と結婚したんだ。そう考えてみると、地球外生命体は存在するかもしれないね」カメも静かに笑いながら、おどけた顔を作ってみせた。

「こんなに星があるのだから、きっとどこかの星から地球外生命体がこちらを見ているに違いないわ」とウサギが口にすると、二人は再び夜空を見上げた。


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