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氷上の冬物語

冬のバカンス中、ウサギとカメは魔法のような北の地に到着した。駅に隣接する図書館に入ると、北向きの大きな窓から浅間山の雪化粧が一望できた。

暖かい図書館を後にし、二人はレンタカーを北へ向けた。雪景色を通り過ぎながら、助手席でぼんやりと外を眺めていたウサギの目に、小さなスケートリンクが飛び込んできた。彼女は優しく誘った。「ねえ、スケートしてみない?」

ハンドルを握るカメは小さな声で「でも、僕はあまり上手じゃないんだ」と答えた。するとウサギは胸を張り、「大丈夫、私がそばにいるから」と優しく微笑んだ。

スケートリンクに立つと、ウサギは優雅に滑り始め、カメは慎重に彼女の後を追った。彼女がリンクの中央で軽やかにジャンプする姿を見て、カメは思わず息をのんだ。

それでもしばらくすると、カメは彼女の手ほどきで、滑る姿が様になってきた。「ウサギさんと一緒なら、何でもできる気がするよ」と彼は言った。彼女はカメと一瞬目を合わせ、再びカメ手を取り、ふたりは氷の上を滑り続けた。

リンクの手すりで一息つくと、「この町が気に入ったわ」とウサギは周りに視線をぐるりと回した。少し間を置いて視線をカメに戻し、「特にこの場所が好きかな」とリンクを指し、「でも、カメくんのそばならどこでもいいかな」といたずらっぽく笑った。

つづく

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