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Saint Valentine's Day

今日はバレンタインデー。ウサギとカメは表参道の鉄板焼き店でランチを楽しんでいた。店内は暖かく、料理人は目の前の鉄板で黒毛和牛のサーロインを巧みに焼いていた。炎は料理人の頭よりも高く上がり、肉はじっくりと色を深めていった。

「ウサギさん、いつも一緒にいてくれてありがとう」カメはゆっくりとプレゼントを差し出した。彼の贈り物は「アディゼロ アディオス プロ エヴォ 1」。これは昨年のベルリンマラソンで、女子の世界新記録を樹立したシューズと同じもの。 「カメくん、ありがとう!」とウサギは満面の笑みでプレゼントを受け取った。

「これからもよろしくね」ウサギもカメにプレゼントを手渡した。彼が受け取ったのは、靴紐の無い、初心者向けのランニングシューズだった。 シューズを選ぶために訪れた店で二人はふと気づいた。一緒に走るためには、互いのペースに合わせたシューズが必要であることに。走ることは、ウサギだけに特別なものではなく、今はカメにとっても大切なものだった。

デザートと紅茶が運ばれると、二人は本のプレゼント交換に移った。カメが大切にしている読書も、今はウサギにとっても大切なものになっていた。「プレゼントが2つなんて、ちょっと贅沢ね」とウサギは言いながら、もらったばかりの本の包みを開いた。ウサギは手に取った「フランス語で読む星の王子さま」の表紙を指でなぞりながら、「原作のフランス語で読んでみたかったの」と微笑んだ。

二人にはもう一つプレゼントがあった。それは目には見えない「お互いを思いやる心」。二人は微笑みを交わすと、プレゼントたちを大切に抱えながら店をあとにした。そして手と手を取り合って、賑やかな街角に溶け込んでいった。

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