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ブリキのおもちゃの物語

山手西洋館を巡っていると、カメの視界に一つの案内板が飛び込んできた。道の片隅にひっそりと置かれたその案内板には、手描きの優しい文字が綴られていた。

「ブリキのおもちゃ博物館?」

その看板を見た彼の心の中に、一瞬で好奇心が芽生えた。気がつくと、彼は隣にいたウサギの手をそっと握りしめていた。

「行ってみようか」

カメの言葉にウサギが微笑むと、二人は自然に足を進めた。示された道を歩いていくと、やがて古い洋館の前にたどり着いた。一瞬息を止め、意を決して扉を開けると、そこは一面ブリキのおもちゃの世界だった。

ブリキのおもちゃ博物館

館内に足を踏み入れたカメは、その一つ一つに目を奪われた。まるで全てのおもちゃが彼に話しかけてくるかのようだった。

1890年代から1960年代にかけて
主に日本で製造された玩具が約3,000点ある

「この辺りの西洋館がまだ使われていた頃、子どもたちが遊んでいたおもちゃだね」とカメは静かに言葉をつくった。

ブリキのおもちゃは、19世紀半ばに
ドイツでつくられたのが始まりといわれている

「そうね。あの頃の子どもたちは、きっと夢中になって遊んでいたのね」とウサギは彼の横顔を見つめ、優しく微笑んだ。

明治初期には輸入されていたが
次第に日本独自の精巧なものが作られた

「ブリキのおもちゃたちも、西洋館とはまた違った風に、時の流れを問いかけてくるね」カメは静かに呟いた。

大正・昭和と日本製のブリキのおもちゃは改良され
世界のブリキ玩具王国となっていった

ブリキのおもちゃたちに囲まれ、そのひととき、二人は過ぎ去った時代の中に身を委ねていた。古びたブリキのおもちゃが静かに語りかける物語は、二人の心にそっと温かな響きを届けていた。

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