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ロンドン発 パンクな「ゴミゼロ」ボップアップバー

その時にその場所でしか味わえない「オンリーワン」の体験をもたらしてくれるクラフト系飲料。お洒落でおいしいイメージもあり、世界中で人気です。最近では、ビールや日本酒などだけでなく、生搾りジュースや果実を使った「クラフトカクテル」を提供するお店も増えました。


見た目にも美しく、お酒を飲む楽しみを何倍にもしてくれるこのクラフトカクテル。
でも実は、サステナビリティの観点から見ると、ある課題があります。材料にたくさんのフルーツなどを使うため、フードウェイスト(食べ物のゴミ)が増える傾向にあるのです。日持ちがするリキュールや加工食品と比べて、生の食べ物は日持ちしないため、使いきれず捨てられてしまうことが多いのです。


バーによっては、何箱ものレモンが一箱で破棄されるようなことも珍しくないとのこと。
それを聞くと、せっかくのお酒を心の底から楽しめなくなってしまいそうですね。
そこで今回は、そんなフードウェイストの問題にポップに(そしてパンクに!)、でも真正面から向き合う取り組みをご紹介します。


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Trash Tikiはロンドン出身の二人のバーテンダー、Kelsey RampageとIain Griffithが立ち上げたポップアップバーのユニット。スローガンには挑戦的な放送禁止用語が掲げられ、ロゴマークには緑色の炎を吐く片目のない男。柄物のシャツから特大のタトゥーが彫られた腕や胸元を覗かせる二人の風貌はいかにもパンクで、「サステナブル」などの言葉に通じるエコなイメージからはかけ離れています。しかし、この2人こそ、ゼロウェイストの伝道師として、バーテンダーの間にムーブメントを引き起こしているインフルエンサーなのです。

彼らが提供するドリンクに使われているのは、驚いたことに、フルーツの皮や果肉だけでなく、コーヒーの出し殻、パンのかけらなど、調理後の「ゴミ」や余り物として、ともすれば捨てられるはずだった材料。。ウェブサイトやインスタグラムに掲載されているカクテルの写真は、色とりどりで楽しげで、あまりものが使われているなど到底信じられないほどなのですが、よく見るとグラスが空き容器だったりします。

Trash Tiki is an online resource aimed at injecting a bit of personality back into the boring topic of sustainability. We write recipes, educate folk & have been know to throw the odd party

(公式HPより。「Trash Tikiはサステナビリティというつまらないお題に「人間らしさ」を取り戻すことを目的にしたオンラインリソースです。私たちはレシピを書き、フードウェイストについて人々に伝え、不定期のパーティを開いています」)


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KelseyとIainが今の活動を始めたのは2016年。当時はサステナブルをコンセプトにしたドリンクレシピのオンラインプラットフォームでした。同時に始めたバーテンダーへのセミナーが瞬く間に評判を呼び、ローンチの6週間後には海を越えてロサンゼルスのバーで初のポップアップを開催することに。翌年の2017年には約10ヶ月をかけて世界40都市を回るツアーを決行し、世界中のバーテンダーへ彼らの思想と技術を伝授して回っています。

「フードロスへの取り組みがトレンドだとは全く考えていない。どちらかというと現代におけるバーテンダー業界の進化です」と、二人は公式ホームページで語っています。


「例えば、様々なところで始まっているストローについての取り組みや議論は、いろいろな意味で課題がありますが、環境問題に関心を持つ人の幅が広がったという意味では良いことです。その先に行くには、成し遂げなければならないことが本当にたくさんあります。お客様にとって魅力的な形でフードロスに立ち向かうのは、正直な話、とても難しいことなんです」

パンクな風貌の彼ららしく、ナイトライフを楽しみたい人々が堅苦しさを感じずにフードロスの問題に向き合える方法を模索しているようです。そもそも二人は、「サステナビリティ」という言葉が好きではないそう。

「サステナビリティというと、象徴的なグリーンの三角形のマークだったり、青空だったりを思い浮かべると思いますが、それによって感情を突き動かされることは稀です。言葉の意味が広すぎるんですね。ゴミ、水の使い方、ペットボトルの厚みに至るまで網羅しています。だから僕たちは、この言葉を使うよりも、バーやカクテルのコミュニティが僕たちのような取り組みについて語る時に使える、肩肘のはらない新しい言語を持ち込みたいんです」

ツアーで日本を訪れたことはなさそうですが、楽しく環境問題と向き合う姿勢はSWAQ TOKYOの活動と通ずるものがありそう。今後の活躍も要チェックです。

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