見出し画像

【詩】思いの丈

いつのまにか

こんなふうに椅子に凭れて

束の間を

好むひとになった

 

きょう携えた本は

冊子のような薄いもの

 

昔あった

古本屋の店主についての

思い出集

 

関係はないのに

関心があるだけで

こんなにも思っていられる

 

ひととなりが

じんわりとつたわり

いいなあと声が出る

 

どんな巡り合わせで

こんなふうに椅子に凭れて

気がつけばこうしているんだろう

 

てばなしで

いきてみるには…

ふう

 

来年

束の間もないかもしれない

ぼくの思いの丈は

妻と

まあたらしい家族に

夢中だから

 

きっと

昔日から遠く離れているんだろうな


※現代詩手帖 2024年2月号  (第55回横浜詩人会賞受賞第一作)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?