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【超短編小説】華の都

 トーキョーは巨大なイナカだと言う。
 イナカモンが寄り集まったマチがトーキョーだと言うことらしい。その癖、空が四角いだの星が見えないだのと好き勝手なことを言う。
 だが実際にトーキョーは巨大なイナカだ。
 イナカモンがトーキョーにきて、オラが村を勝手に積み上げていく。
 天高く聳えるイナカモンの陽茎。
 赤い光は脈打つ血管そのもの。
 そうしてその怒張に惹かれたイナカモンの雌たちが繁殖して広がった街、トーキョー。
 広がり過ぎたウチューが収縮するようにトーキョーは収縮する。
 密集し過ぎた細胞はそれ以上の分裂を許さない。代謝することなく死んでいく。
 孤独が詰め込まれた街!
 どこにも行く先が無い。
 帰るイナカすら失ってしまった。トーキョーと言う外来種がイナカで繁殖してしまったから。
「お前はトーキョーモンのくせにな」
「イナカを腐して何が悪いか」
「お前はイナカを知らない」
「お前もトーキョーを知らない」
 そうだ、俺たちは季節の無い街に産まれて風のない丘に育ち、のっぺりとした空を眺めてドブ臭え川に唾を吐き捨てたんだ。
 俺が生まれる前からトーキョーは巨大なイナカだった。
 トーキョーには別に何もない。
 イナカモンがお互いのイナカを見せ合って自慢しあっているだけだ。
 トーキョーモンはその中で育つ。中途半端なイナカだ。トーキョーには何も無い。
 救いを期待して並ぶ人間たちは、同じ様に少し残念な顔をして戻っていく。

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