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海外ヨガニュースで読み解くヨガインストラクターという仕事の現在 Part.1

「仕事」って何でしょう?
報酬を得て生きるためのもの? それとも生きがいを求めるもの?

理想は両方が満たされることですよね。どんな人にとっても自分の生活を守ることは大切ですし、誰かのために役立つことが動機付けになるという点は「仕事」の意義の本質に関わっています。

ヨガインストラクターという職業の場合は「ヨガの良さを伝える」という想いを源に目指す方も少なくないはず。

では、報酬を得て生活を守る仕事としてヨガインストラクターはどんな位置づけなのか。今回の記事では、各国のヨガインストラクターを取り巻くニュースから現状を考えていきます! 

インストラクターだけではなく、ヨガの練習をしている人の多くにぜひ読んでいただければと思います。

ヨガ業界はビッグマーケット

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ヨガ資格を発給する世界最大の団体である米国ヨガアラインスとヨガ専門誌ヨガジャーナルが2016年に行なった調査[1]では、米国内のヨガ人口が3600万以上であると報告しています。これは2012年の調査よりも50%増の数字です。

また、レッスン代金やウェア、プロップスその他含めて、ヨガに費やされた金額は100億ドルから160億ドルに増加とのこと。金額もさることながら、その増加率はなんと60%増。つまり2012年から2016年の間に米国についてはヨガを行う人が1.5倍になり、その人達はますますヨガにお金をかけているということになります。

さらに今後1年以内にヨガを行う可能性があるという人は全米の人口の3割超。人数に換算すれば8,000万人相当です。やるやる言うだけでやらない人がほとんどだとしても、それでもなかなかの数値ではないでしょうか。

その後、調査は4年おきに行われているようですが2020年分は現状は未公表みたいですね。新型コロナウィルスCOVID-19の影響がどのように現れているのか気になるところです。もしこのパンデミックがなければヨガの勢いはまだまだ止まらなかったのではないかと思える快進撃です。

都市部にヨガ関連の施設が集中していることも指摘されています。NYなんか2010年代中盤あたりは本当に100mごとにスタジオがあって、教えてない人もみんなヨガ講師の認定資格を持っているような状態でした。

 NYはやや異常とはいえ、そこまでスタジオがたくさんあれば必然的にヨガの先生もたくさんいるはずなのです。ヨガ講師の認定資格資格を発給している米国ヨガアライアンスに登録している講師数は、米国内だけで 52720人、世界で88,480人、日本では2068人(2021年3月現在 こちらで検索可能)います。2017年のデータでは米国46800人以上、世界で60,000人超、日本では900人[2]だったので、全体的に未だ増加中、特に日本では倍以上に増えています。

ヨガアライアンスは資格を発給しているとはいえ民間団体なので、登録するかどうかは個人の自由で、同団体に登録していないヨガ講師の数は25万〜65万とも目されています [2]。それにしても幅が大きい。つまり実情が把握し切れていないと言えそうです。いずれにせよ、ヨガ講師の数は非常に多い、ということは確かなのです。


なぜインストラクターはそんなにたくさんいるのか

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ヨガ講師がここまで増えた理由は講師養成コースの頻発に要因があるという推測は決して珍しいものではありません。

都市部に集中しているヨガスタジオは家賃が高く、競争も激しいため、維持が難しい局面に陥りやすいのです。そこでまとまった金額(RYT200対応コースなら50万円前後)を獲得できる養成コースを行うことで経営の安定化を目指すという図式が生まれます。

講師になることは考えていなくともヨガについてもう少し包括的に学びたいと踏み入れる先が、結局講師養成コースになるということはよくあります。実はこの記事を書いたSvaha Yoga ファウンダーの2人も同じです。わたし達の場合はコースを出たのが2000年代で、スタジオがまだ講師を求めている時代だったため、指導の機会に恵まれました。しかし今はもっと厳しい状況です。

一方、養成コースが多数開かれ、それでスタジオが安定するというのはニーズがあるからでもあります。


ヘルシーで文化的なライフスタイルという光が
ヨガ業界に落とした影とは

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米国では2010年代前半に中心に大量生産・大量消費に疑問を持ち、ライフスタイルを変えていくムーブメントがありました。クラフトビールやサードウェーブ・コーヒーの流行を覚えている方も多いと思います。この時に理想とされたヘルシーで文化的なライフスタイルにヨガはある程度フィットするものでした。こういった流れの中でヨガ講師という道を選んだ人もいるのではないかと想像します。

こうして、ヨガを行える場所もヨガ講師も数は増えました。養成コースの乱発は質の問題を生み、余波として一般のドロップインレッスンでも同じことが起きています。また質だけでなく量的な問題、つまり価格競争やそれに伴う賃金問題です。

日本の場合は「資格」そのものに興味がある人が多い点もあると考えます。先行きの不安定さは資格への興味をさらに促進しました。趣味から副業を考える人、セカンドキャリアとして資格くらいは…という場合もあるでしょう。

ヘルシーで文化的なライフスタイルは今も魅力的です。しかし金融危機やウィルスのパンデミックはわたし達を取り巻く世界を大きく変えました。実際はそれほど変わってない部分もあるのかもしれませんが、そこにあった問題点をはっきりと浮き彫りにしました。

特に価格競争がもたらした問題は深刻です。予期せぬCOVID-19の影響、そこでさらに明るみになったヨガインストラクターの賃金問題もあります。ここからはコロナ時代にヨガ業界にどんなことが起きたかをニュースから読み解いていきます。

ニュース①2020年10月 大手アメリカヨガYoga worksの全店舗閉店〜複数年に及ぶ経済的困難でNYのヨガワークス永続的な閉店へ

1987年に設立されたヨガワークスは2016年までに300万もの生徒が訪れており[3]、米国のヨガの発展に大きく貢献しました。COVID-19の影響でレッスンはすべてオンラインに切り替わりましたが、55店舗あったスタジオがすべて休業ではなく閉店になることは衝撃的なニュースだったはずです。

スタジオがなくなればそこで働く人がどうなるのか。この記事の後半は2019年に結成された世界初のヨガインストラターの労働組合であるUnionize Yogaについて触れています。

Unionize Yogaはヨガワークスで働いている、または過去に働いていたインストラクターとスタッフによって設立され、専門性に対する補償や労働者の権利についてヨガワークスと交渉を行っています。

とは言え、会社が赤字であれば交渉する甲斐がないのも確かです。そのような理由で会社がダメージを負うことが自分のダメージにも繋がるという意見なども記載されています。労組化への反対という少数意見にもご興味ある方は読まれてみることをお勧めします。

日本でも1回目の休業要請の際にフィットネスインストラクター達が経済的にダメージを受けたことや、時を前後してUberEatsの配達員達が労働組合を立ち上げたこと等も報道で知っている方もいらっしゃるかもしれません。フリーランサーの不安定さは自己責任ではなく構造の問題ではないかという考えが広がっているのです。


ここまでのまとめとお知らせ


日本のヨガブームは基本的には米国の流行を受けて始まったもので、常にその影響を受け続けてきました。スタジオ経営や雇用、講師養成の方法論も米国のビジネスモデルを輸入した形のスタジオも少なくありません。つまり、このモデルの崩壊はわたし達にも他人事ではないということ。

次回はUnionize Yogaの結成当初の記事や、英国のフリーランス・ヨガインストラクター事情について触れていきます。なんと連日更新予定です!

そして日本ではどうなっているのか…は今後記事にしていく予定ですが、clubhouseで話しながら実情を探っていきたいと思います。

【ヨガの先生も、そうじゃない人も】日本初のインストラクターの労働組合・ヨギーユニオンのお2人を迎えて考える「これから」
2・27・Sat 13:00 on clubhouse

@chietsunoまたは@naho417をフォローしてね



しかもなんとゲストを迎えます! 日本初のヨガインストラクター労働組合の幹部・りつこ先生とまゆ美先生をお迎えします。素敵なヨガ&ピラティス講師でありつつ闘う姿勢は本当にかっこいいお2人から、どんなお話が飛び出すかご期待ください。もちろん「私も実情を話したい!」という方はスピーカーとしてお話いただければと思います。

Guest:

りつこ(YIU委員長・ヨガ&ピラティス講師)
フィットネスインストラクターから歴20年Over…には見えないフレッシュなりつこ先生。ご自身の出産を経て産前産後のママクラスも主宰されています。ヨガ哲学はヴェーダンタを学ぶ日々。


まゆ美(YIU副委員長・ピラティス講師)
教えるのはピラティスだけどヨガの練習経験も豊富なまゆみ先生。新しい働きかたについて模索する学びつづける副委員長は、最近は講演活動なども。美しいものが大好きで猫とバレエ原理主義。

【引用文献[1]https://www.yogaalliance.org/Get_Involved/Media_Inquiries/2016_Yoga_in_America_Study_Conducted_by_Yoga_Journal_and_Yoga_Alliance_Reveals_Growth_and_Benefits_of_the_Practice[2] https://beeumana.com/too-many-yoga-teachers/
[3] https://www.nasdaq.com/market-activity/ipos

この記事を書いたのは…
Svaha Yoga(津野千枝・青木菜穂)ふたりで記事を読み、要約し、怒り、自らを顧み、立ち直り、チェックし合って構成しました。お読みいただきありがとうございます。一緒に考えていきましょう。誤訳があったらお知らせください。

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