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中学生のほしい未来は、中学生がつくろうぜ!という政策提案を中学生がした話。

滋賀県湖南市に「こなん政策アカデミー」という市の事業があります。
若者の意見を政策に反映しようという試みで、昨年は「政策コンテスト」という名前でした。

コンテストとアカデミーで大きく変わったのは、コンテストの場合は「来場者による投票で一番よかったものを翌年の政策にする」というのが、アカデミーでは「提案内容に順位はつけず、良いものはすべて政策に取り入れよう」という方向性になりました。つまり、「1つも反映されないこともある」のです。

8月5日からはじまった政策アカデミー。同志社大学の先生や院生に伴走してもらいながら11月4日の発表会まで3ヶ月間、お盆休みやテスト期間を除いてほぼ毎週集まってワイワイしながら進めてきました。

「テスト期間」はもちろん僕のことではありません。一緒にチームを組んだ中学生のテスト期間です。なんと、中学生がいるんですよ!

今回の政策アカデミーでは全部で7チームがエントリーしました。3つが大学生・院生(同志社)チームで、市役所チーム、滋賀銀行チーム、お母さんチーム、そして我々「若者チーム」。

純粋な市民チームは2つだけ(お母さんチームと若者チーム)。市民の若者がほとんど参加していないにも関わらず、学校に言われたワケでもなく、親に無理やり行かされたワケでもなく、「湖南市のことをもっと知りたいから」という気持ちで参加してくれた中学生。最近の若者は立派。

若者チームというのは名ばかりで、中学3年生がメンバーにいるにも関わらず、平均年齢は25歳と大学生チームよりも高齢。そんな僕たちですが、せっかく中学生が参加してくれたから中学生の生活が楽しくなるような、中学生の困っていることが解決されるような政策を・・・と思っていたのですが、いろいろ話し合ったところ、「中学生に100万円の予算(もちろん湖南市)を渡して、好き勝手にやってもらうのがいいんじゃない?」という着地をしました。

そこからもう少し具体的に中学生が100万円を使うまでの流れを考えて、発表したのが以下のスライドです! 補足を入れながら紹介します。長いです。



●高校入試でこんな自己PRを書く中学生がいたら・・・

上記の2つはいずれも中学生の困りごとからイメージしています。

夏休みは平日だと親がいなくて市民プールまで行く手段がない、運動場の施設が古いせいで使用できない、という中学生ならではの視点。

でも、フツーの中学生は「仕方ない」で済ませてしまっているのではないでしょうか。

政策アカデミーの参加者を見てもわかるように、中学生だけでなく、ほとんどの若者はまちに関心ないのではないでしょうか。選挙に行く若者が少ないのもそれを象徴しています。

なぜまちに関心がないのか。生活に満足しているから? 湖南市も地方のよくある課題を抱えているいち自治体ですが、高齢化率は21.5%(2015)と日本の平均よりも低く、過疎地と比較してそこまで課題が深刻ではないのも事実。

実際に中学生の声を聞いてみよう!ということで、中学生メンバーが中学校2,3年生にアンケートを取ってくれました。


多かったのは、「遊ぶ場所がない」で、公園があるけどボール使えないや、買い物できるところがない(どんな買い物かはわからない)でした。あとは、この中学校が駅から遠いこともあり、「交通の手段がない」という意見も多かったです。

意外とあったのが、「犬のフン」問題。滋賀県は車社会なので大人ではなかなか気づかない、毎日徒歩か自転車で通学している中学生ならではの視点でした。

困ったことを聞いたうえで、では中学生の自分たちでどんなことができる?(予算100万円で)という質問をしたところ・・・


4つだけしか並べていませんが、かなりたくさんの意見をもらうことができました。

地域のひとたちと一緒にカフェをやりたい。
映画館をつくりたい(その地域にはかつて小さな映画館があった)。
外国にルーツがある生徒は、「外国人向けのイベント」を開催したいと。

中学生、めっちゃやりたいことある!!



まちに関心がないのではなく、何かしら思うことはある。でも、それを誰に言ったら変えることができるのか。自分は何ができるのか。そういうのを教えてもらってない。

みなさんも同じじゃないでしょうか? まちへの関わり方を知らないまま育って、大人になったら高い税金払ってるんだからと行政任せになり、選挙に行っても「どうせ何も変わらない」と行かなくなる。

これから先、人口は減って行政は小さくなっていく。もう行政に丸投げの時代じゃなくなる。一人ひとりのアイデアとまちづくりへの積極的な参加が必要だ。

それができる未来の大人を育てることが大切。そこで私たちが提案するのがこちら。


中学生に何かしてあげる、のではなく、中学生がやりたいことを100万円でやってしまおう!という政策の提案です。

実は、湖南市では昨年度、とある中学校でまちづくりのアイデアを考える授業を実施したそうです。しかし、その授業が年度末だったとかでアイデアのままになっています。行政が実現させようとすると、アイデアを提案した翌年度に予算をとって、さらに翌年度(アイデアを提案した翌々年度)に実行となります。

そこで

アイデアキャンプでは、実行するところまでを1年でやりきる、というのを大切にしています。

中学生がせっかく考えたのに実現するのが2年後というのは・・・ねえ。

アイデアキャンプの詳細は後ほど紹介しますが、イベントのプロトタイプをつくり、中学2、3年生に参加してみたいかというアンケートをとってみたところ・・・


「はい」が25名! けっこう多い!

正直、3年生の2、3人が興味をもってくれてたらいいなぁぐらいしか考えてなかったので、驚いております。

このアンケートでは、「もっとこうだったら参加したい」「こうしたら楽しくなる」という記述欄もあり、そちらにもたくさんのコメントをもらいました。それを反映して、来年度はこんなアイデア・キャンプを実現したいです。



湖南市は4つの中学校があるので、各中学校から5名ずつ参加してもらいます。5月から月1で集まり、8月は合宿。9月から実施するというながれ。

さっきのアンケートで「内申点が上がるなら参加する」という意見がいくつかあり、(内申点のためにやるのが良いのか悪いのかの議論は無視して)僕らでは内申点を上げることはできないので、外申点というのを勝手につくって渡しましょうよ、と。市長、副市長、教育長からの外申点。


チームは1つの中学校から来た5人を別々に振り分けて、4人x5チームをつくります。中学生のときって、別の中学校の生徒にあったら何かドキドキしませんでした? 僕は隣の学区ってもはや違う世界くらいの感覚がありました。あと、中学生の意見で「男女の交流」をしたいというのがありました。

学校だと「男女」が真面目に話し合うことができないから、こういう場があるとちゃんと話せそうとのことです。


アイデアをつくって、企画にして。

合宿ではBBQをして、花火をして。日程が合えば夏祭りに参加して。

「政策をつくる」となると堅苦しくなるので今回は「アイデア・キャンプ」という名前にしています。中学生も楽しくないと参加してくれない。

なので、合宿は遊びも頑張る。


9月以降はアイデアを実現させます。ここからは中学生だけでなく、大人の腕の見せどころ。

できない理由を考えるのが得意な我々ですが、そんなことで中学生の邪魔をしないようにしないと。



運営ですが、市役所の職員さんが忙しいのはよくわかっているので、湖南市の学習室が担います。市民サポーターや大学生・高校生サポーターも巻き込みます。

もちろん行政のみなさんや、学校にも協力をお願いします。一緒にやりましょう。


予算は運営は初年度はクラウドファンディングで集めてみましょう。地域の大人がどれだけこの活動を応援し、期待してくれるかの指標にもなります。

運営の2年目からはふるさと納税の「返礼品」ではなく納税していただいた税金を使います。

中学生のアイデアはクラウドファンディングで集めます。これもふるさと納税でいいじゃないかという話もありますが、前述したように、行政の予算になると前年度に予算を組まないといけないので「何に使うか不明」な状態では予算が取りにくいのです。

「この100万円は中学生が自由に使っていい。何に使うかは問わない」という予算がもらえるのなら大歓迎。


行政へのお願いとしては、職員さんに手伝っていただきたいのですが、有志の職員を募りたい。横断型のプロジェクトになると、けっこう「くじ引き」で職員さんが選出されることがあるそうです。そういうのはいらない。
有志でやりたいと言ってくれる職員さんを行政としてもサポートしていただきたい。

また、先ほどの資金面で触れた「ふるさと納税」で、用途項目に「主権者教育」を追加し、寄付者が返礼品と一緒に選択できるようにしてほしい。

3年目以降は、総合的な学習の時間や部活動として、この動きを継続していきたい。

湖南市は全国的に見れば高齢化率も低いですが、子どもが減り、部活動が維持できなくなってもいます。3年生が引退して野球部が3人しかいないというところもある。
中学生は1人1部活が多いと思いますが、もっとミニ部活的なものを増やしてもいいのでは。

また、総合的学習の時間の一部を外部にゆだねることを国も推奨し始めました。先生の負担を減らし、地域で子どもたちの活動を支える仕組みも同時につくっていかないとですね。


いずれは、中学校に政策部をつくり、それが全国に波及して、湖南市で全国大会を開きたい。


市民が主体的にまちづくりに関わるようになり、それを当たり前に感じる大人が増えたら・・・。市役所の仕事も減り、小さな行政が実現されるかもしれませんね。

とはいえ、個人的には全然想像もつきません。中学生のアイデアをバンバン取り入れてる自治体を知らないので、その未来がどうなるか見てみたい。

そんなこんなでプレゼンが終わり、来年度の実現に向けて動きはじめたところです。実行されないアイデアワークショップはもういらない。やるぞー!

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