キリン

学名:Giraffa
和名:キリン(長頸鹿)
分類:キリン科キリン属キリン

キリンを見たことない人に説明してみるつもりで書いてみる

地上にいる四足歩行動物で、とにかく背が高い。生まれたての子供キリンでも1.5 mくらい、大人キリンともなると4~5 mもある。信号機の高さがだいたい5 mらしい。そんくらい大きい。足と首が長く、それぞれ1.8 m, 2 mくらいあり、足が長くてシュッとしたブラキオサウルス、もしくは足と首の長いウシといった感じ。顔つきは少しラクダに似ている感じでまつげが長く、体は茶色ベースに黄色または白の線で格子模様に彩られている。

分類学的にはウシの仲間で、草を食べ、胃袋を4つ持ち、反芻をする。ウシ同様に蹄を2つ持つウシ目(偶蹄目)で、オシコーンと呼ばれる角もある。ちなみにオシコーンは皮膚で覆われてるのでウシみたいな光沢はなく、ブニブニしている。群れの中で順位が決まっていないオス同士で、自分の首や頭を相手の首にぶつけるネッキングと呼ばれる行動が観察されることから、オシコーンがネッキングの際に有利に働く、という説もあるが淘汰圧にどれだけ寄与するかは定かではない。ウシ同様に舌が長く、30 cm程度ある。キリンはキリン科キリン属に属し、同じキリン科にはオカピがいる。オカピも20世紀になってから見つかった摩訶不思議な動物だが、ここでオカピについて話し始めると収集がつかなくなってしまうので省略する。

キリンの主食はアカシアである。キリンのみならず、キリンに食べられるアカシアも独自の進化を遂げていると考えられている。アフリカに存在する100種類以上のアカシアは、オーストラリアにあるアカシアとは異なり、鋭い針や棘を持っている。これは、アカシアを食べる大型の草食動物から自身を守るための進化だと考えられている。ちなみに、オーストラリアではアカシア(ゴールデンワトル:Acacia pycnanca)が国花にもなっており、国章にもあしらわれている。ヨーロッパではミモザと呼ばれたりしている花です。脱線の脱線だが、ワトルの種は山火事での刺激によって発芽するおもしろい植物である。

歩き方は側対歩、いわゆるだく足で歩く。キリンとは全く関係ないが、犬でもたまにだく足の子がいる。大型犬、とくにゴールデンレトリーバーで多い気がする。だく足の子が歩く姿を上から見ると、腰をくねらせて歩いているように見えるのでちょっとおもしろい。無駄にセクシー。話が逸れたが、側対歩の動物は意外と少なく、ラクダやゾウなど、普段走らない草食動物に多い印象だ。キリンの足は意外と速く、時速50~60 km程度のスピードが出ると言われている。ウサイン・ボルトが時速45 kmらしいので、圧倒的な足の速さである。アフリカでは、"You don't teach a giraffe to run. "ということわざがあるそうだ。直訳すると、キリンに走り方を教えるな、となるが、正確な意味は調べられなかった。「できないことはするな」「諦めが肝心」「長所を活かせ」という意味だろうか。

自然界においてキリンはアフリカ大陸にしか生息していないが、日本国内のほとんどの動物園で見ることができる。国内動物園にいるキリンのほとんどはアミメキリンだが、いくつかの動物園ではマサイキリンが飼育されている。国内飼育されているマサイキリンは7頭しかおらず、鹿児島、宮崎、熊本、徳島の4館でのみ飼育されている。見た目的には、マサイキリンは茶色い柄の境界がうねうねしており、アミメキリンはパキッとしている。ぱっと見たときにマサイキリンのほうが白っぽく見える。実はこのキリンの分類、最近までよくわかっていなかった。元々キリンは、1属1種9亜種と考えられていたが、2016年に行われたミトコンドリアDNAによる系統解析により、1属4種(G. camelopardalis, G. giraffa, G. reticulata, G. tippelskirchi)に再分類されることになった。アミメキリンはG. reticulata、マサイキリンはG. tippelskirchi。基本的には種が違うと交配できない、できたとしても生まれてきた交雑種に生殖能力がないことが多い(ラマとロバの交雑種のラバなど)。キリンに関しての異種間交配の報告は僕が知っている限りない。

キリンは周年発情で15日ごとに排卵しているので、妊娠・出産が年中可能。野生環境では、降雨量や餌の量によって発情周期に若干の季節性があるとの報告もある。6, 7歳から24歳くらいまで妊娠可能らしい。基本的に単産で、妊娠期間は446~457日。ヒトの妊娠期間が約280日なのでかなり長い。ちなみにワンピースに登場するエースは20ヶ月(約600日)胎内にいたらしいので、キリンはヒト以上エース未満の妊娠期間だといえる。ウシの一突きと呼ばれるように、一回の交尾の時間は短いが、何度も交尾を行うとの観察報告がある。

僕とキリン

小学生の時の写生大会で、クレヨンで描いたキリンの絵が受賞したことがある。小学校のホームルーム、担任の先生から受賞したことと、受賞した絵は期間限定で市内バスの中に掲示されることが告げられ、とてもふわふわした気持ちになったのを覚えている。絵が掲示されたバスは、僕が普段利用していた路線のバスではなかったため一度も観ることはなかったが、市内でバスを見かけるたびにソワソワしていた。

これが僕が画家を志した原体験である。と言えればとても素敵なのだが現実はそうではない。奇跡的な受賞以来、僕の絵心は見る影を失い、かといってモンスターを生み出せるほどの突出した絵心喪失でもなく、芸術への関心は全くと言っていいほど継続しなかった。失われた絵画への興味とは裏腹に、絵の題材となったキリンや動物への興味が心のどこかに残っていたようで、いつのまにか獣医学科に進学し、動物園獣医師を目指していた。結局動物園獣医師にはならなかったが、今でもキリンを見るたびにふわふわした不思議な気持ちになる。

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