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[掌編小説]カラをかぶったひよこの話

なんだなんだ
ヒヨヒヨと にわかにさわがしくなったぞ
あたたかくて どくんどくんと しずかだったせかいが おわる
ああ もっとここにいたかった
コツコツと せかされる
ぱりっとそとにでると ぼくは とりのひなだった

まぶしい
ぼくは なんだかたよりないきもちがして
あしもとにおちていた おおきなカラをかぶった
きょうだいたちが はずせはずせと つついてきたけれど
ぼくはしっくりきているきがして カラをはずさなかったんだ

かあさんどりがいうには ぼくたちはじべたのとりだから
さっそく えさをさがしに しゅっぱつするらしい
かあさんどりをせんとうに きょうだいたちのこえが
あつまったり ひろがったりして ついていくようだ
ぼくは カラをかぶっているので あしもとしかみえない
おとも カラのなかで くぐもって ゆがむ
かあさんどりに くちばしでおされたり 
きょうだいに ごっつんごっつんと ぶつかっていたうちはよかったけれど
そのうちだれにも ぶつからなくなった
ぼくは ひとりになったのかもしれない

まずいぞ
あしもとが ずっとくらい
あたりに なにかがいるけはいがする
ぼくをたべようとしているのかも
ねずみにへびにおおきなたか
こちらをうかがっているのはなんだろう
ぼくは カラをしっかりかぶる
どさっ という おおきなおとに おどろいて ばっとかけだした
すると うしろから どどどっと なにかがおいかけてくる
あっちにぶつかり こっちにぶつかり
ざざざっというおとから ほうほうのていで にげまわる
でも もうはしれない 
カラをぎゅっとつかんで からだを かたくする
すると パリパリと おとをたてて カラがわれた

めのまえにいたのは きょうだいたちとかあさんだった
きゅうにはしりだしたぼくを ずっとおいかけてきてくれたらしい
ふわふわしたきょうだいたちに かこまれて
ぼくは だんだんとこきゅうが ゆっくりになっていった
かおをあげると きぎのあいだに あおいそら
しろいくもが きらきらしている

ぼくたちはまた えさをさがしに あるきだした
こかげにはいると どさっとおとをたてて
あかいおおきなきのみが おちてきた
きょうだいたちは きそってきのみにむらがって
きのみから ふとったむしを さがしだすと おもいきりひっぱりあった
それをみて ぼくもまけじと くちばしをつきだしてぴっぱったんだ

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