切手はどこへゆく【第二十話】
蒼太さんはこの前と変わらず、切れ長の穏やかそうな目をしていた。
小さく会釈するわたしを見て、優しく微笑んだあとに、古谷の方をちらっと見て、少し不思議そうな顔をしていた。
古谷を見ると、愕然とした表情をしていた。人の顔を見て、いきなり「え?」は失礼だろう。愕然としたいのはこっちの方だ。
蒼太さんの前で失礼なことをするなんて。一言言ってやりたい気持ちもあったが、蒼太さんの前で文句を言うところを見せたくない。わたしは一人、心の中でせめぎ合っていた。
「稲村、俺先行くわ」
古