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ミスリーディングのてんこ盛り:読書録「六人の嘘つきな大学生」

・六人の嘘つきな大学生
著者:朝倉秋成 ナレーター:木村良平
出版:角川書店(audible版)

2011年。
成長著しいIT企業「スピラリンクス」の新卒採用最終選考に集まった六人の学生。
当初は6人全員の合格もあり得るグループでの企画提案を求められていたのに、東日本大震災の影響で採用枠は「1名」となり、その選考をグループディスカッションで行うことに。
その会場で6通の封筒が見つかり、その中には各メンバーの「裏の顔」を暴く証拠が…。
果たして誰がこんなことを…。
その犯人は?
その目的は?


…という新卒採用をめぐるミステリー。
前半はこの緊張感あふれる「グループディスカッション」で<犯人>が炙り出されるまでの展開。
後半はその<犯人>の病死をきっかけに、「本当に指摘した<犯人>は『犯人』だったのか」…と8年後に<事件>を振り返る展開になります。


まあ、「新卒採用試験」ですからね。
<事件>ったって、別に誰かが殺されたりするような話ではない。
試験に採用されなかった5人は、<犯人>も含めて社会人になり、皆が望んだような成功を収めているとは言えないまでも、社会の落伍者になるような展開になってるわけでもありません。
そうなんだけど、その<事件>がそれなりには個々の心には傷を残しており、その「決着」にはそれなりの意味はある…って感じでしょうか。
少なくとも選考を通って、スピラリンクスに入社した人にとっては大きな意味があった。

最も問われるべきは「新卒採用」という仕組みであり、<真犯人>の意図も動機もそこにあります。
「新卒一括採用」と「終身雇用」かな。
まあ、「終身雇用」の方は実質的にどうなのよって部分はあるんですが、少なくとも大手企業を目指すような学生の意識の中にはあるでしょう。
「この採用が自分の一生を決める」「自分という人間の評価になる」
そういう意識が、前半のグループディスカッションの緊張感につながっているように感じます。
(そういう意味では「スピラリンクス」という新興IT企業の採用試験という設定はちょっとマイナスかも。
そういう会社だと「転職によるキャリアアップ」も視野に入っててもおかしくないですから。
もちろん作品としてはそこをカバーもしてるんで、「瑕疵」って話でもないんですけど)


読んでいると、とにかく「どんでん返し」というか、ミスリーディングがあっちゃこっちゃに仕掛けられてて、登場人物たちの<印象>がコロコロ変わるのに疲れもしますw。
個人的にはチョットしんどい展開になるとこもあったので、ドンドン話を進めてくれるaudibleは有り難かったです。(本だったら下手したら途中ギブだったかもw)
ま、ナレーターは男女分けるか、女性の方が良かったようにも思いますけどね。
これは人によって受け取り方が違いますかw。

面白かったですよ。



#読書感想文
#六人の嘘つきな大学生
#朝倉秋成
#audible

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