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不愉快になったり、暗い気持ちになったり…w:読書録「DD(どっちもどっち)論」

・DD(どっちもどっち)論 「解決できない問題」には理由がある
著者:橘玲
出版:集英社

橘玲さんの新作。
相変わらず橘さんの主張は、「一般常識」とは少しズレてるところがあって(もちろん意図的に、なんだけど)、読んでてハッとしたり、イライラしたり、不愉快になったり、暗い気持ちになったり…
なんだけど、「慣れてきた」ってのもあるかなw。
「まあ、そう言われりゃそうだよね」
ってな感じになるところが一番多かったかも。


基本的には「世界はなぜ地獄になるのか」と主張は同じかな?
あの作品は、
「天国はすでにここにある」
として、リベラルが求めてきた理想の多くは実現するか、実現の方向にあることを指摘し、その中から「キャンセルカルチャー」のような<地獄>が生まれている現状を喝破していました。
そしてその「現状」を踏まえるなら、その現状を直視して、<できるのはただ、この世界の仕組みを正しく理解し、うまく適用することだけだろう。>と指摘しています。


本書でも作者は「現状を直視」しつつ、その仕組みを解説し、方向性を模索しています。
「DD(どっちもどっち)」っていうのは、安易な「相対論」に陥ることを勧めるわけではなく、ダブルスタンダードにならないような考え方や行動を取るためのスタンスの取り方…みたいなもんじゃないですかね。
物事を決めていくには相対的なだけではダメで、どっかで選択して決めなきゃいけない。
その決める時に安易な「善悪二元論」に依拠するんじゃなくて、
「どちらにも一理はあるんだけど、ここではこういう理由でこちらを選ぶ」
という留保付きの決定をする。
…とまで言うと、ちょっと丸山眞男っぽくなっちゃうかなw。


Part 0 DDと善悪二元論 ウクライナ、ガザ、ヒロシマ
Part 1  「正しさ」って何? リベラル化する社会の混乱
Part 2  善悪を決められない事件
Part 3  よりよい社会/よりよい未来を目指して
Part 4  「正義」の名を騙る者たち



読み応えがあるのは、「Part 0」。
ロシアとウクライナの戦争、ハマスとイスラエルのガザ戦争を取り上げて、「どっちもどっち」の視点を解説しつつ、「ヒロシマ」をめぐる日本の「犠牲者意識ナショナリズム」を突きます。
どちらが正しい
じゃない。
そこにある構図と、そこに気づいた以上、ダブルスタンダードを取ることは欺瞞なのではないかと。
基本的には「リベラル批判」なんですが、安易な保守論調に立たないところが橘さんの真骨頂かな。
それでも「リベラル」に立つべき(厳密には保守よりリベラルだけど)…というのが僕の考えなんですが、その前提として「ダブルスタンダード」であるべきではないというのは賛成です。


Part 0以降はその時々の事件や事案を取り上げつつ、解説や意見を加えていく時事的な記事。
いくつかはネットとかで見かけたことのある記事でもありました。
まあそれぞれは「ふむふむ」って感じなんですけどw、読み応えのあるのは「Part 4」。
ここでは「マイナ保険証」と「ジャニーズ事件」が取り上げられています。

マイナ騒動は「老人ファシズム」である。/「紙の保険証残せ」はエセ正義
自ら道徳的責任を引き受けた藤島ジュリー景子こそまっとうだ



僕は割とこの件については橘さんに近い意見を持っています。
特に「マイナカード」の件はねぇ。
いや、色々言いたいことがあるのはわかるけど、ちゃんと背景や見通しまで踏まえた上で議論してんのかどうかってのが、どうも分かんなくて。
ここら辺をキチンと解説できない(していない)マスメディアに対して、不信感が募る…ってのが僕の現状かなぁ。(「正義の名を騙る者たち」ってのは基本的にはマスメディアのことです)



まあ、読んで不快にある人は少なからず…でしょう。
でも陰謀論とは一線を画したところで、こういう考え方・見方があるってのは知っておいてもいいんじゃないかとは。
とは言え、「善悪二元論者」は読みゃしないんでしょうけどね、こういうのw。


#読書感想文
#DD論
#橘玲

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