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そういう方向性が出て来たら、日本社会の停滞感も変わってくるかも:読書録「クリティカル・ビジネス・パラダイム:社会運動とビジネスの交わるところ」

・クリティカル・ビジネス・パラダイム:社会運動とビジネスの交わるところ
著者:山口周 ナレーター:小桧山崇
出版:プレジデント社(audible 版)

山口周さんの新作。
Kindleで買おうかな〜と思ってたら、audibleでオーディオブックになってたので、こちらで聴いてみました。
まあ、犬の散歩のついでに聴くのに向いてる本じゃなかったですけどねw。


サマリー(audibleより)
私は、本書を通じて、ある希望にみちた仮説をみなさんと共有したいと思っています。

その仮説とは、

社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネス=クリティカル・ビジネスという新しいパラダイムの勃興によって、経済・社会・環境のトリレンマを解決するというものです。

私は2020年に著した 『ビジネスの未来』 にお
いて、安全・快適便利な社会をつくるという目的に関して、すでにビジネスは歴史的役割を終えているのではないか?という問いを立てました。
原始の時代以来、 人類の宿願であった 「明日を生きるための基本的な物質的条件の充足」 という願いが十全に叶えられた現在、私たちはビジネスという営みに対して社会的意義を見出せなくなりつつあります。

この問いに対する前著での私の回答は「条件付きのイエス」というものでしたが、 その後も、営利企業あるいはビジネスの社会的存在意義に関する議論が沈静化する兆しはなく、 世界経済フォーラムをはじめとした会議の場においても、この論点は主要なアジェンダであり続けています。
ここ数年、 世界中で盛り上がりを見せている「パーパス」に関する議論も、この「このビジネスに社会的意義はあるのか?」 という、素朴だけれども本質的な質問に対して応えることのできなかった人々が引き起こした一種のパニック反応だと考えることもできるでしょう。

私は、本書を通じて、 このウンザリさせられる問いに対して、ある仮説としての回答を提唱したいと思います。それが前述した命題、 すなわち 「社会運動・社会批判としての側面を強く持つビジネス=クリティカル・ビジネスという新たなパラダイムの勃興によってそれは可能だ」 という回答です。


第1章 クリティカル・ビジネス・パラダイムとは?
第2章 クリティカル・ビジネスを取り巻くステークホルダー
第3章 反抗という社会資源
第4章 クリティカル・ビジネス・パラダイムの背景
第5章 社会を変革したクリティカル・ビジネスのh実践例と多様性
第6章 アクティヴィストのための10の弾丸
第7章 今後のチャレンジ




本書のポイントは「サマリー」の通り。
本書自身が作者のクリティカル・ビジネスへの取り組みの一環とも言えるもので、内容としては分析な側面だけじゃなくて、啓蒙的な側面も強くあると思います。
そこに乗れるかどうかってのはあるかもしれませんね。


損得的な感覚で言うと、先進国を中心として、物質的な充足感が高まっている社会においては潜在的に満たされてない欲望のエリアが少なくなっているので、その欲望を満たすような産業と言うのは大きな成長を導く出すほどのボリュームにはなりがたいものになっているという指摘があります。
そこで、極めて先進的な社会的課題を解決しようと言う社会運動をビジネスと結合させることによって、その社会運動を成功させたいと言う欲望を生み出して、その欲望を満たすこと自体がビジネスを成長させると言う考え方になるとも言えるんじゃないでしょうか。
社会的課題を解決すると言う点が根本にあるので、単なる金儲け主義にはならないと言う面があるわけですが。
(課題を解決すると言う点では「ソーシャルビジネス」が既にありますが、社会において既に認知されており、マジョリティーも解決の必要性を認識している社会的課題を取り扱うのがソーシャルビジネスであり、「欲望の創生」と言う点において、ソーシャルビジネスとクリニカルビジネスは違うと言うことにつきます)


「クリティカルビジネス」が夢物語でないことは、既に進行した成功事例が多くあることが証拠となります

第5章より
1 支配的価値観への批判  フォルクスワーゲン社による 「Think Small」 キャンペーン
2 貧困と経済的不平等の解決  グラミン銀行
3 気候変動・資源枯渇への対応 Patagonia(パタゴニア) クリティカル・ビジネスの筆頭となる実践例
Fairphone (フェアフォン)・TESLA (テスラ) 市場の存在しなかった事業を
4 企業倫理と透明性の向上  TheBody Shop (ザ・ボディショップ)
5 労働者の権利と福祉の改善  モンドラゴン協同組合 協同組合にして企業連合体
6 ダイバーシティとインクルージョンの推進  IKEA イスラエルによる「This Ables プロジェクト」 発信力のないマイノリティの声を代弁する
7 地域社会とコミュニティの生成 Brunello Cucinelli (ブルネロクチネリ)



先鋭的な社会的課題は、どうしてもニッチなものになりがちなので、ビジネスとして市場を広げていくには、どうしてもグローバルにならざるを得ないと言う点がこの事例にも現れています。
そうなると、クリティカルビジネスが日本において広がったとしても、日本社会で全体が変わっていくことにつながるかどうかっていうのは、ニッチな社会的課題を取り扱うだけに、もしかしたら疑念が残るかもしれません。
ただまぁそうした企業が数多く出てきて、チャレンジングな取り組みをすることが肯定されるようになると、その姿勢によって、日本社会の停滞した雰囲気が変わってくるっていうのはあるかもしれません
今の日本に1番必要なのはそこかもしれませんしね。
(「先鋭的な社会的課題」と言うのは一致である分、生成AIが取り扱いづらいテーマになるでしょう。
現時点で、生成AIは、社会にあるデータを踏まえて、確率的にしか判断をすることができませんから。
AI時代における人間の存在意義と言う点においても「クリティカルビジネス」と言うのは面白い視点かもしれません)



さて、さて、これからの日本、どうなっていくんでしょうかね。
こういうチャレンジングで前向きな取り組みがどんどん増えてくるとすると、それはそれで楽しいんですけど、期待していいんだかどうだか…
まぁそのためには世代交代とか、いろいろ前提となる動きが必要なような気もします
おりしも自民党総裁選があるようです
そこら辺でどういう風になっていくかっていうのも、もしかしたら影響してくるかもしれませんね。
…あんまり期待できないかな?w

#読書感想文
#クリティカルビジネスパラダイム
#山口周
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