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回り道だけど正しい道…かもしれないけど:読書録「沖縄から貧困がなくならない本当の理由」

・沖縄から貧困がなくならない本当の理由
著者:樋口耕太郎
出版:光文社新書(Kindle版)


Kindleのキャンペーンで安くなっていたので購入。
相変わらずAmazonに踊らされておりますw。


本書は金融畑から企業再生で沖縄に乗り込み、そこで人生を一変する経験をした作者による「沖縄の貧困」の原因分析とその解決策を提示した作品。

<沖縄の貧困に関連する問題は、数々のデータが示しているとおりだ。
  約 3割に達する子どもの貧困率( 1位、全国平均の約 2倍)、給食費未納率( 1位)、一人当たり県民所得(最下位)、非正規雇用率( 1位)、失業率( 2018年まで 1位)、離職率( 1位)、若年離職率・失業率・高校・大学卒業後の無業率( 1位)。その背景として、高校・大学進学率(ワースト 1位)、高校中退率( 1位)、 10代婚姻率( 1位)、 10代の出産割合( 1位、全国平均の約 2倍)、離婚率( 1位)、デキ婚率( 1位)、シングルマザー世帯出現率( 1位、全国平均の約 2倍)、一人親世帯の子どもの貧困率( 1位、約 58・ 9%)……。  
沖縄における貧困の直接の原因は、労働者の所得が圧倒的に低いことにある。労働者の平均収入は全国最低水準で、就労者のおよそ 18%が 100万円未満、 47%(ほぼ 2人に 1人)は 200万円未満の年収しかない。>

ため息が出るようなデータ。


一般的には「沖縄の貧困」は「基地問題」と結びついた「補助金問題」として解析されることが多いように思います。
本書はその点に賛同しつつ、さらにその根幹にある「人間関係の経済」、そこから派生する「自尊心の低さ」を指摘します。
「人間関係の経済」「自尊心の低さ」については、「データ」というより、作者自身の経験や「聞き取り」「アンケート」によるところが多いんですが、その「生々しさ」がその主張に説得力を持たせています。
ぶっちゃけ、
「沖縄には住めんな〜」
と思っちゃうくらいw。
この前半パートは圧倒的ですね。



それに比べると、「解決策」となる後半パートは「切れ味」には落ちます。
一言で言えば「人間本意の経営・政治」「他の人の関心に関心を持つ<愛>の経営」ってな感じになるんですが、「わかるけど、ちょっと遠回りすぎない?」って印象が拭えません。
作者自身は、ホテル再建の経験からシッカリ実績を出しているんですけどね。
ただまあ、前半の分析の切り味の論理性から、ちょっと遠くなってるって印象はどうしても…。
そういう意味じゃ、分けた方が良かったかも、です。前半と後半はw。



本書で指摘している「沖縄の貧困の根幹原因」については、SNSが広がり、観光を中心として本土の経済資本が大量に入り込んできたことで変わりつつもある状況のようです。
ただまあ、「人間関係の経済」とか「自尊心の低さ」とかっていうのは、「沖縄」だけでなく「日本」そのものも孕んだ問題でもあります。
「沖縄の本土化」は、確かに原因を希薄化するかもしれないけど、根本解決にはならない…というのが作者の指摘であり、このタイミングで本書を出版した意図にもつながるようです。




直前に読んだ「未来のリスク」もコロナが炙り出した<日本の課題>を炙り出した作品でした。
本書が指摘する「人間関係の経済」や「自尊心の低さ」、その結果としての生産性の低さやイノベーションの欠如は、コロナ対策で露呈した<「アナログ」で「昭和」な社会>の原因であり結果でもあるのかなぁとか考えたりしています。


日本も沖縄も、コロナが炙り出したこの課題を乗り越えていけるのかが、これからの大きな課題となるんでしょう。
その時、「人間本意の社会や経済」ってのは、確かに目標としてはあり得るかも、です。
間違っちゃいけないのは「人間本意」がアナログな人間関係を意味するんじゃないってこと。
本書の分析はそのことを明確にしています。

DX等を徹底して、社会の仕組みを効率化しつつ、「個々人」の関心を重視し、大切にする社会を作り上げていく。
必要なのはコレではないか…と。

…とくると、本書の後半部分に重なってきますね。
「切れ味」はやっぱり漠然としちゃうんですけどw。



#読書感想文
#沖縄から貧困がなくならない本当の理由
#樋口耕太郎

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