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紹介本エッセイ…じゃなくて、かなりガチ本でしたw。:読書録「新しい声を聞くぼくたち」

・新しい声を聞くぼくたち
著者:河野真太郎
出版:講談社

ジェーン・スーさんと堀井美香さんのPodcast「Over The Sun」は毎週夫婦で楽しみに聴かせてもらっています。
「オバサン」を模した題名にあるように、40代・50代の女性向けの番組で、「オバさん」という蔑称を自称することで意味の書き換えを行うことを意図しています。
…って、大半は相当なバカ話で、大笑いさせてもらってるんですけどねw。

二人の話を聴いていると、特に相談への回答なんかに、昭和・平成を生き抜いてきた「働く女性」の生きづらさの経験と「今立っている」ことの自負、そしてそのことへの惑いのようなものを僕は感じたりします。
基本は「フェミニズム」なんですけどね。
制度的な不平等を是正しつつ、社会的な慣習の中に組み込まれた「男女役割論」に直面しながら、争い、いなし、打破してきた世代。
その「強さ」のようなものを自負として持ちながら、「強さでいいんだけ?」っていう若干の迷いのようなものでしょうか。
(現時点では実現もしてないんだけど)全てのジェンダー的な不平等が制度的にも社会的にも意識的にも解消されたとして、その先にあるのは「個々人の強さ」「能力の差」その結果としての「格差」と「分断」
…それでいいんだろうか?、と。



本書はそういった戦後の「フェミニズム」の流れを踏まえつつ、そこから投射される「男性性」の変遷について、それがエンタメ系のコンテンツにどういう風に反映しているのか…を論じている作品です。
ちょっと似た感じだと少し前に「新しい教養としてのポップカルチャー」を読みましたが、あっちよりも学術的な知識を要する「ガチ本」でしたw。
知ってる作品の「読み直し」や、読んでない作品の紹介を期待して読んだんですけど、そういう軽〜い感じで読むにはチョットしんどいかも。
とはいえ、いちいちバックグラウンドとなる知識を調べながら読むなんてことをする時間も気力もないんで、結果的には流し読み…みたいな感じにはなっちゃったかな。
ところどころ引っかかりは覚えたし、考えさせられもしたんですけどね。



制度的・社会的なジェンダー格差を乗り越えていく。
…多分、ここについては日本の社会においても共通認識はできてると思うんですよ。
ただその向こう側にどういう社会が姿を現すのか。
「性差」ではなく、「能力差」による、<格差>(金銭的にも、社会評価的にも)が激しくなる社会であり、その結果としての<分断>が待ち受けるだけではないのか?
作者は「新自由主義」という定義でそういう社会を想定していますが、
「そうかもな〜」
と思うんですよね。
そこで「能力がない」人は、男女関わりなく、社会の劣後者として扱われるようになる。
「フェミニズム」の進展、それを反映した新しい「男性性」は、その「新自由主義」社会の中にとらわれているのではないか/しまうのではないか…というのが作者の危惧なんじゃないか、と(流し読みだから、誤読は十分にあり得ます)。
その構図は、僕にも共感できるものがあります。
(もちろん現時点において制度的・社会的「男女格差」は解消されていないし、「能力主義」にはその背景となる個々人の「社会的資本」の差があることも十分に承知していますよ)



じゃあ、どういう社会を目指すべきなのか。
「新自由主義」社会は、どうやれば克服できるのか。

「福祉国家に戻れば」…という意見もあり得ますが、そもそも「福祉国家」の制度設計には「男女役割論」が組み込まれている面もあることから、作者は「普遍的ケア」に支えられた社会の成立のために「ベーシック・インカム」に注目します。
性別や所得等、属性によらず、「家族」ではなく「個人」に支給されるセイフティネットとしての「ベーシック・インカム」には「普遍的ケア」を支える可能性がある、と。(多分)
もちろん「BIでなんでも解決!」ってわけじゃなくて、いろいろな留保をつけた上で…ではあるんですけどんね。



「学びを階級から解放する」という最後の提言あたりには「う〜ん…」ってものを感じるトコもあるんですけど(こういう言い回しそのものが階級的というか、リベラル臭いというかw)、そうやっていくしかないよな〜とも思います。
ここを「上から目線」じゃなくて、どうやって定着させていくかってのは、「リベラル」にとって非常に重要な命題になってますし。



ま、「流し読み」ながら、紹介された「怪獣8号」はかなり面白く読ませてもらいましたし、「カモンカモン」以外のマイク・ミルズ監督作品も見てみたいなと思いました。
それだけで個人的には「収穫あり」、かな。
「Beaststars」はチョット手を出しかねますが…w。




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