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「全体主義」的な風潮のリスクは感じられるところがある:読書録「ハンナ・アレント」

・今を生きる思想 ハンナ・アレント 全体主義という悪夢
著者:牧野雅彦
出版:講談社現代新書(Kindle版)

<100ページで教養をイッキ読み!
現代新書の新シリーズ「現代新書100(ハンドレッド)」刊行開始!!
 1:それは、どんな思想なのか(概論)
 2:なぜ、その思想が生まれたのか(時代背景)
 3:なぜ、その思想が今こそ読まれるべきなのか(現在への応用)
テーマを上記の3点に絞り、本文100ページ+αでコンパクトにまとめた、「一気に読める教養新書」です!

忙しくてなかなか読書時間が持てない方。新書ってなんだか小難しそう、と感じている方。短時間でおもしろく読めて、しかもためになる!「現代新書100」をぜひお試しください。>(HPより)


…というコンセプトで出版された「現代新書100」シリーズ。
チョット面白そうと思ったので、リアル本で買おうかなとも思ってたんですが、Kindleでキャンペーン価格だったので、Kindleで購入w。
同時発売の「ショーペン・ハウアー」の方は100円でしたし。



狙ってるところはナカナカ面白いと思うんですよね。
特に「3;なぜ、その思想が今こそ読まれるべきなのか(現代への応用)」という視点は、教室でまな「哲学」を今の時代に活かす…という意味で意欲的だし、意義もあると思います。


…なんだけど、少なくとも本書について言えば「硬い」かなぁ。
ハンナ・アレントの「全体主義」の定義や分析を、
<アレントをまだ一度も読んだことのない人に、そのエッセンスをわかりやすく説明する>
という意図から、専門用語・業界用語も使わずに書かれてるんですが、だからと言って「簡単」「わかりやすい」ってわけでもない。
丁寧にアレントの著作をフォローしつつ論じることで、逆に全体としてはわかりにくくなっちゃってる気もしないでもないです。
コンパクトな分、それだけ噛み砕く余地がなくなっちゃったのかも。
もちろんコレは読む側の知識・理解の問題ではあるんですけどね。


「現代への応用」については、もっと現実の政治の流れに言及した方が良かったように思います。
僕自身も「全体主義」的な流れが現在の日本政治には垣間見えるところがあると感じているんですが、たぶん作者も同じ危惧を持っています。
だったら具体的に「安倍政権が〜」「維新が〜」って挙げちゃった方がいいと思うんですよ。
「行為」への傾斜とか、「論理一貫性」への偏重とか、結構うなづけるところあるし。
まあ、これも尺の問題があるのかもしれませんがね。


<全体主義の再来の可能性を取り除くためには、全体主義が破壊した人々の間のつながりを回復して、自由な「運動の空間」をつくり出していかなければならない。人間の自由な「行為」それ自体が予測不能な性質を帯びている以上、そこにはまた思いもよらない危険が待っているだろう。人間のもっている自由の可能性は、そうした危険と隣り合わせだからである。  
自由な「行為」に基づく「運動の空間」を安定的に維持して、人々の間の共同を束の間の出来事に終わらせないためには、まったく新しい政治の仕組みが必要である。全体主義によって破壊されたそれまでの伝統やイデオロギーに頼らずに、従来とはまったく異なるやり方で人々のさまざまな活動を結び合わせていくこと。人間にはそうした「新しいこと」をはじめる能力が備わっているはずである。>



意図してるところは読んでると分からなくもないんですが、「具体的にはどういうことよ」ってのがやっぱり聞きたいですし。
(メディアに対する注文のところは比較的具体的ではあります)



まあシリーズの一冊を読んだだけなんで、シリーズ全体の感想にはなりませんがね。
「ショーペン・ハウアー」も読んでみます。
…チョット間は開けさせて思うけどw。


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