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この「コロナ禍」でこそ問われるべきことかも:読書録「そろそろ左派は<経済>を語ろう」

・そろそろ左派は<経済>を語ろう レフト3.0の政治経済学
著者:ブレイディみかこ、松尾匡、北田暁大

衣食足りて礼節を知る

マジでそうだと思うんですよね。
加えて「尊厳」。
「衣食が足りない」ことを認めるのは辛いことでもありますから。
ここへの意識が重要。
そう言う観点から言えば、
「<お金>のこともキッチリ手当てできない奴らに政権なんか任せられるかい」
って話なわけです。


ブレイディさんと鴻上さんの対談を読んで、「経済」に関するブレイディさんの意見を知りたくなって本書を購入。
出版は「2018年」。
欧米で主張されるようになっていた「反緊縮政策」について、日本との比較も含めて論じられてます。
「ヨーロッパじゃ左派(リベラル)が<反緊縮>やのに、何で日本じゃリベラルが<緊縮>派やねん!」
みたいな感じですw。


ここら辺、「リベラルからのリベラル批判」がされる中で、ちょっと雰囲気は変わってきてますかね。
「経済が大事」
は結構言われるようになっています。


レフト1.0:マルクス主義的な経済的弱者への支援
レフト2.0:景気が良くなったことを背景に、リベラル的理念が広がる(人種、LGBTQ、女性、環境等)
レフト3.0:「2.0」が主張される一方で、新たに登場しながらも、リベラルからは「忘れ去られた」経済的弱者への支援と、新自由主義政策で痛めつけられた福祉制度の再建


…みたいな流れでしょうか?
トランプ旋風やBrexit、見方によっては安倍政権なんかは、この「レフト2.0」へのカウンターとして位置づけることができます。
だからこそ「3.0」なんですね。


なかなか興味深い議論がされてて、視野も広くて、それらを語るには、
「読んでください」
としか言いようがないんですがw、読み終えての感想は次のような感じです。


①コロナ禍でこそ、これは語られるべきことかもしれない。
「完全雇用が実現する前の需要喚起政策」ってことがポイントなんですが、「完全雇用」が実現されつつあった流れを、この「コロナ禍」は遮断してしまっています。
それは不幸なことなんですが、一方で「やり直し」ができると言うことでもある。
「外国人観光客」や「公共投資(オリンピック、万博、IR等含む)」で事業創出・雇用拡大という流れとは別の取り組みが必要になってますからね(「そんなの待ってられない」って話)。
まずは需要の受け皿としてのサービス業への支援、需要の担い手(消費者)への手当等を再構築していくところかな、と。


②「清貧思想」とか、個人の主張としては尊重できても、経済政策としては下策。
60歳以上のジイサン・バアサンの生活哲学としてはあり得ても、それを10代〜30代に押し付けることはできないでしょう。
それが「現状維持」にすらならないのは、本書でも指摘されてる通りだし。
ここら辺、日本のリーダー層の「高齢化」「老害化」にもつながる話で、ちょっと重いんですけどね。
ただこれも「コロナ禍」で切り替えのキッカケは出てくるかもしれない。
緊縮政策が取れるような状況ではなくなってきてますから。


③コービンの失速はどういう背景があったんだろう?
本書ではイギリスのジェレミー・コービンが持ち上げられてますが、2019年の選挙では大敗を喫したはず。
Wikiあたりではフォローしましたがw、ここらへんの背景、もうちょっと詳しく知りたいです。
ブレイディさんの他の本を読むのが良いかな?


対談の最後では、
「安倍政権の政策で<完全雇用>が達成できてしまうと、金融緩和の余地がなくなってしまう。
そうなるとオリンピック後あたりに<惨事>になるのが心配」
ってな流れがあるんですが、「消費税増税」でそこに竿が刺され、コロナでゼロクリアになるかならないか…ってのが現状。
「緊縮財政」とか、言ってられませんわな。


それを踏まえて、与党・野党で「ガチに経済政策論議」(反緊縮なので「お金の使い方」になります)をやって欲しいです。


「事業・生活支援」に加えて、
「デジタル化推進」「働き方改革」「教育」「医療」「介護」
…ここへ是非!

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