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「アフターコロナ」のことをジックリ考える気分には…:読書録「仮想空間シフト」

・仮想空間シフト
著者:尾原和啓、山口周
出版:MdN新書(Kindle版)

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「新しい働き方」について考察し、実践もしている2人が、コロナ禍を契機として実現が早まった「リモートワーク」を中心に、「アフターコロナ」について対談した作品。
2人とももちろんアナログへの「反動」があり得ることは認識しながら、「望ましい未来をポジティブに語る」という視点から前向きに語り合っています。


基本的に「異論」はないんです。
「仮想空間」を中心とした「働き方」を考えるときにベースとなる「4象限」の整理もなかなか良いですね。

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個人的には、
「そういう未来って面白いかも」
とも。
アバターでミーティングとか、やってみたい気もするしw。



ただ個人的には「まだそこまで頭が回らない」って感じかなぁ。
「頭」というよりは「気分」かもしれない。


本書の対談は5月か6月ごろに行われてると思うんですが、そのタイミングだと、「なんとなく一山乗り切ったかな」って頃じゃないかね。
でも現状は(分析や評価は色々あるにせよ)「次の山」に翻弄されてる感じがしているし、何よりも諸外国(特に米国)での感染状況に先が見えていない。
重症者・死者をなんとか抑えている日本に比べて、依然として死者の多い諸外国の状況は、このパンデミックが簡単には終息しないことを示唆しています。
そして当然それにつれて、各国のローカル経済からグローバル経済にダメージは広がりつつあります。


その視点から見ると、例えば本書が「ポジティブな事例」としてあげているUber・Airbnbやオンラインサロンなんかも、厳しい環境にあるように見えます。
もちろんその機能的な部分は「アフターコロナ」で有効だと思いますし、例え今の企業や組織がウィズコロナを乗り切れなくても、アフターコロナの時代にはその機能を受け継いだ新しい企業や組織が登場している可能性は高いでしょう。


しかしそれに至るまで、「ウィズコロナ」が長引いたとき、果たして何が起こるのか?
そもそも「仮想空間」を中心に動くビジネスが、本当に成立しうるのかどうか?


…そのことが気になって、本書をポジティブに受け止めることが十分にできなかった、というのが正直なところです。


作者たちは「仮想空間シフトが起こる中で、その中で生産性を高めることができる人と、そのシフトに耐えられない人の格差が発生する」と指摘します。
もしかしたらそれが「人」だけじゃなくて、「ビジネス」もそうなんじゃないか?
「仮想空間シフト」が起こることで、「ビジネス」そのもののあり方が変わってしまって、特に金融や情報産業なんかは、全く姿が変わってしまうのじゃないか?
…そんなことも考えたりします。


もちろん「産業」には「仮想空間」には移行しきれない分野が沢山あります。
ビジネス全体が「仮想空間」で完結できるなんてのは、一部でしょう。
しかしながら「完結はできないけど、ビジネスプロセスの一部を仮想空間へ移行することで生産性を上げる」ことは可能なの確か。
その重要性や意義が、「ウィズコロナ」で明らかになってきているのかもしれません。


そう言った産業の生産性の向上のために、社会全体のあり方を変革する。
そのキーが「仮想空間シフト」である。


「リモートワーク」や「地方移住」と言ったことを論じるよりも、そういう視点から「仮想空間シフト」を論じ、社会の仕組みの中に実装していくことの方が重要なんじゃないかなぁ。
集計をFAXでやったり、政策の立案や変更がアナログなためにタイムリーな対応ができなくなったり、補助金の給付に1ヶ月も2ヶ月もかかったり…
こっちこそが「仮想空間シフト」で改善されるべきことなのではないか…と。


「今」のタイミングで読みたかったのは、そういう「社会制度変革」の具体的な方向性だったんですよね。
そういう意味じゃ、ちょっと「思ってたのと違う」感じ。
(もちろん対談は「概念的」「抽象的」な話になっているのでそんな印象になっただけで、作者たちも具体的には「全部の仕事を仮想空間で」って言ってるわけじゃなくて、「ビジネスプロセスの<仮想空間>に移行することで生産性が上がる部分がある」ってことを言ってるんだろうとは思いますけどね)


まあ、僕の頭が、まだまだ「ウィズコロナ」に侵されてるだけのことなのかもしれませんがw。


このタイミングを契機として、より社会を「いい方向」にシフトしたい。
その思いは共通ですよ。


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