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自分が結構センチでアナログな人間なことを再認識させられました:読書録「証言 羽生世代」

・証言 羽生世代
著者:大川慎太郎
出版:講談社現代新書(Kindle版)

羽生善治が全てのタイトルを失い、藤井聡太が次々と記録を塗り替えている将棋界。
「世代交代」が実感される中で、30年以上も将棋界を牽引してきた「羽生世代」を振り返る作品。

「羽生世代」、その先輩・後輩、16人へのインタビューが収められています。

先輩 谷川浩司、島朗、森下卓、室岡克彦
同世代 藤井猛、先崎学、豊川孝弘、飯塚祐紀
後輩 渡辺明、深浦康市、久保利明、佐藤天彦
羽生世代 佐藤康光、郷田真隆、森内俊之、羽生善治

こういう作品が書かれるってのは、書く側だけじゃなくて、インタビューを受ける側も「世代交代」と言われて納得してるってことでしょうからねぇ。
ちょっと寂しい。
寂しいんだけど、実は「羽生世代」(同世代含め)は全然「投了」してなくって、まだまだやる気満々だし、羽生のタイトル100期を、誰も疑っていないってのも、なかなか強かで、しぶとい。
そういう面でも興味深い本でした。
(みんな、ほんと「紳士/真摯」な印象があります。これは「羽生世代」がもたらしたものでしょうね)

しかし改めて読むと、「羽生善治」は突出してるんですな。
象徴的なのは「タイトル獲得数」。

羽生さん以外の羽生世代が口を揃えていう、
「羽生さんは別格」
いや、まじでそうですわ。

僕は将棋のルールはわかるけど、対局はしない。
でも「将棋」を巡る物語やノンフィクションは大好き…ってポジション。
改めて考えてみると、その要因の大きな一つが「羽生善治」の登場…だったのかも。
「お笑い」における明石家さんまやダウンタウンみたいなもんなのかもね、僕の中じゃ。

「羽生善治」「羽生世代」が将棋界にもたらしたものは、
「盤上で強いものが強い。その強さは<人間力>ではなく、徹底的な<勉強><読み>から生まれる」
言ってみれば身も蓋もないこと。
でも同時に「盤上の強さ」からも「ドラマ」は生まれ得るってことも教えてくれたんですよね。
本書もまたその一端だし、「藤井聡太」ブームもその延長線上にある。

…とか言いながら、本書を読んで、こんなところで胸をつかれる僕。

<谷川 (中略)そしてもう一つ、絶対に忘れてはいけないことがあります。
──何でしょうか。
谷川  羽生さんたちと同世代の村山聖さんの存在です。村山さんは重い病気を抱えながら命懸けで将棋を指し、 1998年に 29歳の若さで亡くなりました。羽生さんたちは村山さんと対戦し、身近でその姿を見てきました。健康で将棋が指せることの幸せをいちばん実感しているのがこの世代です。それが将棋に対する真摯な姿勢や、持ち時間を余さずに目一杯使うことなどにつながっているのではないでしょうか。>

そして村山に「冴えないねえ」と言われて可愛がられていた「久保利明」が、5回の挑戦の末に羽生善治からタイトル(王将)を奪う流れに、思わず拳に力が…。

「人間力」を否定した羽生世代にシンパシーを感じてるくせに、なんともアナログでおセンチなお話w。

「まあ、そんなもんやて」

と笑えるようになったのが、僕の成長(老いw)かな。


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