なんか、読ませるのは確か:読書録「ブルーハワイ」
・ブルーハワイ
著者:燃え殻
出版:新潮社(Kindle版)
TV業界で裏方のようなことをしてたのが、ひょんなことから文章を書くようになって(多分最初はTwitter)、アレよアレよと言う間にベストセラー作家の仲間入りした「燃え殻」さんのエッセイ。
週刊新潮に連載されてたのをまとめたものです。
燃え殻さんの作品。
個人的には微妙な距離感。
デビュー作の「ボクたちはみんな大人になれなかった」は、早い段階(17年)で読んでいます。
面白く読んだ記憶がありますし、その後もネットに上がってる文章なんかは読んだりしてたんですけどね。
ただ何となく書籍で読むところまでいかなくて…。
阿部寛主演の「すべて忘れてしまうから」も途中で放り出しちゃってるしなぁ。
今回読む気になったのはbar bossaの林さんが褒めてたってのと、エッセイで読みやすかったってのが理由。
夏休み期間中の隙間時間にボチボチ読んでいきました。
「うまい」ですよ。
読みやすいし、読んでると、何やらむず痒いところをついてくるところがあります。
あるんだけど…う〜ん、やっぱり個人的には微妙かなぁ。
なんか、「昔の話」を聞きたくない気分があるんですよね。ここのところ。
そこが読みどころなのが分かっているので、何となく敬遠しちゃう。
喫茶店で見かけた老夫婦の姿から、若い頃付き合ってた彼女のことを思い出す。
<二十代の頃、住宅展示場で働いている女性と付き合っていたことがある。彼女はとにかく真面目で、高望みをまったくしなかった。蕎麦屋ではきつねそば、焼肉屋では上カルビではなくロースを注文するような人だった。
若さに任せて、途方もない将来の夢を僕が語ったとき、「わたしはこのまま一緒にいられたら、それだけでいいな」と言われた。季節は秋くらいで、場所は池尻大橋の彼女の部屋だった気がする。
(中略)
誇大妄想患者のようだった僕には、彼女のその言葉がとてつもなく夢がなく聞こえて、「なんでそんなにつまらないことを言うの?」と不満げに返してしまった。彼女はそのとき、「つまらなくて、ごめんね」と謝ってくれたけれど、本当に謝らないといけなかったのは、僕のほうだった。
(中略)
僕には彼女があのとき人生を諦めているように映った。寸胴鍋に入ったスープをすべて平らげないと、人生はわからないと言わんばかりの僕に、彼女は辟易してしまったのかもしれない。人生という名の寸胴鍋に入ったスープを一口飲んで、「美味しい」と言ってくれた彼女を、僕は突き放していたのだ。>
こう言うの、本当に「いいな」と思うんですが、同時に「いやまあ、でもそんなにたくさん読まなくてもいいかな」とも思っちゃう。
それはまだ寸銅鍋のスープを飲み干したいと思っているからか、そんな過去の自分に自分で辟易としちゃってるからか。
あれこれ過去のこと思い出すよりは、「今」を楽しまなきゃね…と必死で思おうとしてるような気がしなくもない…かw。
隙間時間にポロポロと読むのには楽しめる作品だと思います。
「すべて忘れてしまうから」の続きも見なくちゃなぁ…。
#読書感想文
#ブルーハワイ
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