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ネガと、ネガオ。

ある日、写真屋さんのカウンターにて、写ルンですを手にした高校生男女2人連れの客と若い女性店員との間で交わされる会話を立ち聞きした。


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男子高校生: これ(写ルンですの現像)ってどれくらい時間かかるんですか?

店員: データダウンロードの場合ですと1、2日、それから”ネガを”お渡しするのには通常2、3日いただいてます。

高: “ネガオ”って何ですか?

店: はい?

高: ネガオ・・って何ですか・・?

店:「ネガ」です。フィルムを現像した後にお渡しするものです。

高: はあ。(同伴の彼女に向かって)それって要る?


店: ネガは必ずお引き取りいただいております!


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字面では伝わりにくいので甚だ無粋ながら解説すると、店員さんが「ネガ」のアクセントを"ネ"に置かず平坦に発音しているため、「ネガを」と話したつもりが、ネガを知らない高校生は「ネガオ(寝顔)」と受け取ったのだ。


「ネガオ・・・」

2人のやりとりに聞き耳を立てながら思わず「ネガオ・・・」と心の中で繰り返していたわたしにとっては「ネガ」を店員さんのように発音することがまず斬新だったし、また、目の前にいる高校生のようにネガを知らない人と間近に接することも初めてで、とても刺激的なやりとりだった。

ネガを知らずに写ルンですを手にした高校生には、フィルムカメラの仕組みなど知る由もないだろう。通りすがりの他人事ながら、あまりの初々しさにこちらがモジモジしてしまった。

写ルンですを手に店を後にする2人の後姿をネガを平坦に発音する派の店員さんと共に見送りながら、これから始まる彼らのファースト・写ルンですの幸せを願った。いや、願わなくても幸せに決まってる。

頑張れ、ネガオ。


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